まゆ、それから

満たされた毒牙


 まゆは指の動きを止めた。

 ぎゅっと、ペニスの根元をしぼるようにする。

「うっ、うっ、まゆチャン、いかせてくれ、もうひとしごきで……」

 弁護士が苦しそうに言う。おとなの男の快楽をコントロールしていることに、まゆは満足をおぼえた。これがおとなの女というものだ。

「おじさま、いきたい?」

「あ……ああ……」

 もうひとこすりしたら出てしまうようだ。睾丸もせりあがっている。

「だめだよ、練習なのに」

 まゆは睾丸をにぎって、ぐっとひきもどす。根元をにぎった指に力を入れる。

「はあ……うう……」

 弁護士は息を整えている。

 まゆの手のなかで、睾丸がやわらかくなった。

 こころなしか、ペニスの硬直も弱まったようだ。

「もうだいじょうぶだよ、まゆチャン。よく止めてくれた」

 弁護士が言い、姿勢をもどした。

「あぶなくいっちゃうところだったよ。練習の途中だったのにね」

 そうか、出していたら練習も終りだったんだ、一回しかできないんだ、とまゆは思った。

 良明は一度出しても、少したったらすぐに元気になる。おとなにもいろいろあるんだ、と思う。

「でも、いまのはうまかったよ、あれなら良明くんも喜ぶだろうね。ただ……」

「ただ?」

「男は、単に気持ちいいだけじゃ満足しないんだ。相手が自分以上に気持ちよくなっていると思えなければ満足できないんだ」

「ふうん」

「たとえばね」

 弁護士はテレビモニターにまゆの注意を向けさせた。

 ビデオの映像で、少女がクンニリングスを受けて甘い声をだしている。

『ああん、気持ちいいッ、いっちゃうッ』

「ほうら、色っぽい声だろ? ほんとうはそんなに気持ちよくなくても、ああいう声をだすんだ。あの声に男は満足するんだよ」

「へえ」

「まゆチャンもやってごらん」

「声をだすの?」

「思いっきりいやらしくね。だいじょうぶ。ここは完全防音だから、どこにも聞こえないよ」

「ああん、いいっ……こんな感じ?」

 まゆは棒読み状態で声をだす。弁護士は笑いだした。

「ぜんぜんだめだよ。気持ちよさそうには聞こえない」

「……むずかしいよ」

「じゃあ、そこに横になってごらん。おじさんがさわってあげるから。そうしたら感じが出るだろ」

「うん」

 まゆはおとなしくソファに横になる。弁護士がその上におおいかぶさる。

「じゃあ、おっぱいからいくからね」

「ん」

 弁護士は、わずかに隆起がはじまったまゆの乳房に口をつけた。

 胸のふくらみそのものが、口にすっぽりおさまってしまう感じだ。

「あん、あん」

「声がかたいよ。気持ちいい、って思わなきゃ」

 弁護士は舌で乳首をつつく合間に演技指導する。

「ううん……んん」

 まゆは鼻を鳴らした。乳首を吸われて、少し気持ちよかったのだ。

「もっと、声をだす」

「はい……ああんっ、あっ」

 左右の乳首を交互に吸い、なめる。左の乳首をかるく噛まれたとき、まゆの身体に電気が走った。

「あっ、ひうっ!」

「そう、そんな感じ。もっと、いろいろ思うことを言ってごらん」

「おもうこと……って?」

「おっぱいが気持ちいい、とか、もっと吸って、とか」

 ちゅぱちゅぱ音をたてながら、まゆの未成熟な胸を唇と舌で愛撫しながら、弁護士は細かく指定する。

「んんん……おっぱいが……先っちょが気持ちいいの、もっと吸って……あうっ」

「右と左、どっちがいいのかな」

「ひ……ひだり……そっ、そこっ」

「ここかあ」

 標的をさだめると、弁護士は舌をまゆの左の乳首に集中する。ややくぼんでいた乳首が首をもたげ、ふくらんできている。そのつけ根から先端に向けて、舌先で繰り返し弾くようにする。

「かはっ、あうっ、きもちいいよぉ!」

「そう、その調子だよ。いい声だ。じゃ、次は……」

 舌をまゆの胸から腹に移動させていく。おへそを舌でほじくる。

「ひゃん、くすぐった……」

「だめだ。気持ちいいと思わなきゃ。男のひとが醒めちゃうぞ」

「……でもお」

「わかった。おへそじゃなくて、もっと気持ちいい場所を舐めてあげるから、ちゃんと声をだすんだよ。練習なんだからね」

「はい」

 すなおな答えに満足そうにうなずいて、弁護士はまゆのおへその下に顔を移動させた。

 なだらかなスロープをえがく下腹部は、終端でぷっくりとした丘をかたちづくっており、その先は深い亀裂だった。やや発育が遅れているのか、その部分はわずかに肌色よりも濃くなっているものの、ヘアと呼べる発毛はなかった。

 弁護士の顔が喜悦にゆがみ、わずかに声がうわずった。

「さあ、まゆチャン、練習のかんじんなところだよ。脚をひらきなさい」

「……うん」

 まゆが自分で脚をひらいていく。亀裂の部分が、線から幼い貝のかたちにかわっていく。

 まだ成熟には程遠い女の器官は、それでも充血し、分泌物に濡れている。

「さあ、舐めるよ。声をだすんだよ」

 弁護士は顔をまゆの股間にうめながら、震え声をだした。

 むしゃぶりつくようにしてもまゆの股間に吸いつく。

 音をたてて秘められた部分を舌でかきわける。

「あっ、ああんっ、はあっ」

 最初は演技っぽい声だった。だが、弁護士の舌がむきだしのクリトリスに届くと、まゆの声質がかわった。

「んあっ、あっ、はあっ、はうう」

「ほうら、まゆチャン、忘れたらだめだよ。ちゃんと気持ちいい場所を言うんだ。ほら、いま、どこをペロペロされてる?」

 敏感な芽の部分をくわえたり、舌でつついたり、指で包皮を前後させたりしながら、弁護士がまゆに卑猥な言葉を強いる。それも練習の名のもとにだ。

「くっ、クリちゃん……クリちゃんが気持ちいい……あひぃっ」

「気持ちいいのはクリちゃんだけかい? ここはどうかな?」

 舌を、クリトリスから膣口にうつし、水っぽい音をたてながらなめあげる。ひだをかきわけ、内部へと侵攻する。

「んあっ、あっ、おまんこも気持ちいいのぉ」

「そうそう、自分からいやらしい言葉を言うと、より気持ちよくなんだろ? もっといっぱい舐めてあげるからね」

 弁護士はまゆの太ももを持って、ぐいっと上に引きあげる。

 おしりが上になる。弁護士はそのヒップを強引に割って、まゆの身体の底を精査しはじめる。

「んんん……ううっ」

 無理な姿勢に、まゆが苦鳴をあげる。

「苦しい? でも、だいじょうぶ。まゆチャンが大好きなところを舐めてあげるから、きっといい声がでるよ」

 弁護士は、まゆの後ろの穴のすぼまりに指でふれる。

「ひいっ」

 まゆはたちまち反応した。弁護士は舌なめずりする。これまでの会話などから、まゆのこの部分が性感帯として開発済みであることは見ぬいていた。

 まゆのその部分を指でひらく。肌色とかわらないほどにきれいな入り口がめくれ、ピンク色の粘膜が姿をあらわす。

 すばらしいご馳走を、弁護士はゆっくりと味わいはじめた。

 

「うああああ、あううっ!」

 演技のたぐいではない、本気のよがり声だった。それもまだ子供っぽさが残った声質だ。

 アヌスを責められたまゆは、それまでとはちがった悶えかたをした。

 より苦しげで、切迫している。

 それだけ、のっぴきならない快感を得ているのだ、ということがわかる。

 弁護士はたんねんにまゆの肛門の粘膜を舌で愛撫した。そのたびごとに、引きつるような声を混ぜつつ、まゆは身体をよじらせた。

「まゆチャンはよっぽどおしりが感じるんだね。エッチなんだなあ」

「うあっ……だって、だって……きひいっ」

「まゆチャンのここ、すごい匂いだよ。くんくん、ああ、すごいなあ」

「ニオイかいじゃだめぇ……うう〜」

「クリちゃんをいじりながら、おしりを舐めてあげるよ」

 弁護士は指先でまゆの快楽の芽をかわいがりながら、舌でアヌスをえぐりはじめる。

 直腸をえぐり、その粘膜を唾液まみれの舌でこすり、突き、マッサージする。

 まゆの脚が痙攣するようにひきつり、びくっ、びくっと動く。

「くはっ、あっ、あっ、あはっ、うあっ、はあ、あっ」

 声が小刻みに、呼吸にのまれがちになっていく。いきそうなのだ、ということが弁護士にはわかった。

 その顔にその日一番の笑みがうかぶ。

 弁護士は愛撫をストップした。

「ひうっ……うっ……う」

 しゃっくりのような声をあげて、まゆが身体をひくひくさせる。

 唇がひらき、わずかによだれがこぼれている。眼はうるみ、頬は上気して真っ赤だ。これ以上ないほど発情した少女の顔だ。ちょっと比べものがないほど可愛らしく、いやらしい。

 弁護士の目の前に大きくひろげられた秘部は、性器も肛門も充血し、分泌物や唾液でとろとろに濡れている。

「まゆチャン、練習はこれでおわりだよ」

「……え」

「練習はここまで。さあ、服を着て、もう帰りなさい」

 わざと顔を引き締め、弁護士は言った。

 不安げな、そして、逼迫したような表情をまゆはうかべる。

「おわり?」

「そう。練習だとここまでだよ」

「……もっと、練習……したい」

 まゆがつぶやくように言う。おさない身体には、もう火がついているのだ。

「ね……おじさま、練習、させて」

 恥ずかしそうに、しかし、欲望を率直に吐露する。

「でもなあ……」

 と、弁護士はわざとらしくしぶって見せる。

「この先は、まゆチャンのなかに入れないといけないんだよ」

 指でまゆの秘部をひらいた。んう、とうめいてまゆが首をちぢこませる。少女のその部分が口をひらき、膣口をあらわにする。

「入れてもいいの?」

「……」

 まゆは無言でうなずいていた。

 弁護士はしかつめらしく首をひねる。

「まゆチャンがそんなにしたいなら、いいよ。入れてあげる。じゃ、うんと脚をひろげて」

 指示しながら、腕をのばし、三脚に固定されていたビデオカメラを引き寄せる。三脚から外して、自分の手でカメラをホールドする。

「これも練習だから、ちゃんと入れるところを撮っておかないとね。まゆチャンの顔もちゃんと写したいしね」

 言い訳にもならない弁護士のセリフにも、まゆは頓着しなかった。そんな余裕はなかったのだ。

「はやく、はやく……う」

 自ら脚をひろげ、弁護士の腰にこすりつけるようにする。

「じゃあ、入れるよ」

 弁護士はファインダーをのぞきながら、少女の性の花びらに、おのれの肉棒をちかづけていった。

「ふっ……うっ……」

 まゆの眉間にしわがよる。

「は……いって……く……る」

 弁護士の男根が、まゆのおさない入り口を広げながら中に進んでいく。

 しかし、まゆのその部分は未成熟とはいえ、ある程度の経験はこなしている。

 さほどの抵抗もなく、奥へ奥へと弁護士の男根を呑みこんでしまう。

「あ……あ……ああ」

 まゆは目を閉じて声をはなっていた。苦痛ではなく、嫌悪でもない。あきらかに快楽の声だ。

「まゆチャンのなかに、ついに……おおっ、うおっ」

 弁護士が感極まったように哭き、ゆっくりと腰をつかいはじめる。

「せまくて、ぬるぬるで、しかも……締めてくる。これは……すごい」

「うあっ、ひいッ! おじさまのが……あ……なかで動いてるよおっ」

 ぷちゅずちゃ、湿った音をたてながら、弁護士のペニスがまゆの身体のなかに押し込まれ、そして半ば引きぬかれる。

 深く挿入されるたびに、まゆはあえぎ、ちいさな身体に受け取っている快感の大きさを吐露する。

「どうだい、まゆチャン、ひさしぶりだから、気持ちいいだろ? ああ?」

「うっ、あっ、ひいっ、ううーっ!」

 まゆにはもう弁護士の言葉は届いていない。自分の身体のなかで起こる快楽の小爆発を受けとめるので精一杯だ。

「沢くんがしてくれなくなって、飢えてたんだろ? 腰の動かしかたでわかるよ」

 いっそう激しく腰を動かしながら、弁護士がわらう。

「あうん、んあっ! すごいいぃ!」

 引きしぼられ、伸ばされる、その連続――性器同士の接触と摩擦によってもたらされる、神経のオーバーロード。白熱した神経シナプスは、大量のドーパミンを吐きだし、快の信号を狂ったように打電しつづける。

「沢くんはきみを抱きはしない。そうするのがきみのためだ、とだれかがアドバイスしたんだからね。そして、彼女を祥英学園に入れるために仕事にうちこめ、と助言して、カネになる仕事を――ホストクラブもふくめて――いろいろ世話してやったんだからね」

 弁護士の顔が征服のよろこびにゆがむ。射精がちかいのか、腰の動きが性急に、はげしくなっていく。

「聞こえているかい――? むだかな? 気持ちよすぎて、なにもわからなくなっているんだね。でもね、きみはもうわたしのモノだよ。きみに快楽をあたえてあげられるのは、わたしだけだ――ほうら、こうやって」

 ビデオカメラでまゆの顔と性器を交互に写しながら、弁護士は強くまゆのなかをえぐる。

「あっ、ああっ、いくっ、いっちゃ……あああああっ!」

 細い肩が震え、ひざが動く。腹筋と背筋が交互に収縮し、身体にうつくしい痙攣が走りぬけていく。

「うああああっ、おにいちゃ……ああっ!」

 最後の一瞬に、愛する青年へよびかけた。だが、その体内において、欲望のシャワーを噴出させたのは、その青年ではない。

「うおっ……おう、おうっ!」

 しわでたるんだ顔がさらにゆるみ、ぜい肉だらけの尻がわななく。出している。さきほど、あやうくまゆの手のなかで出しそうになっていた初老の男のなけなしの子種が、いま、まゆの膣の奥に注ぎこまれている。

「お……ふう」

 荒い息をしながら、余韻のピストンをゆっくりとおこなう。まゆのちいさな性の器で受けきれなかった白濁液が、おしだされてあふれだす。

「うっ、うっ、はあ、あっ」

 まゆはアクメの頂のあとの、ゆるやかな下降線にたゆたい、ちいさく嗚咽している。

「まゆチャン?」

 弁護士はまゆのなかにおさめたまま、その頬をなでた。

「……う?」

 まゆの眼がうごく。わずかずつ、理性がもどっているのか、まばたきの回数がふえる。

「しちゃったね」

 にぃたあ、と弁護士は笑い、ビデオカメラをかたわらに置く。

「え?」

「エッチ、しちゃったね。最後までやっちゃったね」

 うれしそうだ。たのしそうだ。もしかしたら、セックスの最中よりもずっと。

「中出しもしちゃったよ。おじさんのセイエキがまゆチャンのカラダのなかに入っちゃったよ」

「練習……でしょ」

「ホンバンだよ。ホンバン。沢くんが知ったらたいへんだよ」

「……でも、みんな、してるんでしょ?」

 すがるような目をむける。弁護士の笑顔がさらに深くなる。

「――そうだよ? でも、彼氏には言えないな。バレたら、捨てられるよ」

 弁護士の視線がビデオカメラにむかい、それから、すぐにまゆの顔にもどる。その意味は、まゆにも伝わったようだ。

「い……いわないよね? おにいちゃんには、ビデオ、見せないよね?」

「それは、まゆチャンしだいだなあ……」

 もったいをつけて、弁護士は言う。

「――そうだ、これからもここへ遊びにきてくれたら、ないしょにしてあげるよ」

「……ほんと?」

 まゆは泣き出しそうになるのを懸命にこらえているようだ。弁護士の性器に、あらたな血がながれこむ。

「ほんとうだとも……また、こおんな、いやらしくて、気持ちのいいことをしてくれれば、ね」

「うっ……いやっ、やめ……」

 大きくなっている。弁護士のペニスは、ふたたび力をとりもどしている。

「やっぱりまゆチャンの泣き顔は最高にかわいいね。おじさん、また元気になっちゃったよ。自分でもオドロキだね……ひひ」

「うっ、やだ、いやだよぉ……う、ああん!」

 まゆが逃げようとする。それを弁護士はおさえつける。ふたたび、ピストン運動を開始する。

「うう……うあっ、あっ、はっ!」

「ほうら、気持ちいいくせに。わかってるんだよ、まゆチャン、きみは淫乱なんだ。小学生のくせに、男のチンポがないとノイローゼになるくらいに、ドスケベなんだよ」

「そんな……こと……ないよお……ふああっ!」

 突き上げられて、まゆの声が裏返る。

「これから、それを証明してあげるよ。くひひ」

 弁護士はたまらぬように舌なめずりした。

 

「じゃあね、ばいばい」

「うん、じゃあね」

 塾へとむかう級友たちに別れをつげ、七瀬まゆは歩きだした。

 冬の空はどんよりとした鉛色だ。もしかしたら雪になるかもしれない、と天気予報は告げていた。

 あたたかいダウンジャケットに身体をつつみながら、まゆは浮かない顔のまま、側溝のにごった流れを目で追っていた。 

 ランドセルだけはもとのままだが、身につけるものはずいぶんかわっていた。派手なものではないが、いずれも高級なブランド品だ。古着をもらったのだ、と良明にはごまかしているが、それにしては新しいし、まゆの身体にぴったりしすぎている。

「どうして、気づかないのかな……もう、興味もないのかな……」

 つぶやきをもらす吐息さえ、白く凍る。

 服装だけではない。値の張るアクセサリーや、香水などの化粧品なども増えている。いや、それよりも、なによりも、まゆ自身が――

「今夜もおにいちゃん、遅いんだろうな……」

 と、ポケットのなかで、携帯電話がふるえる。まゆの顔におびえがはしり、でも、それが少しずつあきらめにかわっていく。

 携帯電話を出し、スイッチをおす。

「もしもし……まゆです……はい……はい……言われたとおり、入れたままにしてます」

 電話のむこうから、なにか指示があったらしい。まゆは周囲をみわたした。人通りがない道だ。それでもまゆは顔をあからめる。

「ローターを、おしりと……あそこに入れたままにしてます。じゅ、授業中にオナニーもしました……すごく、感じました。いまも……ぬれてます……はやく……おじさまのがほしい。いまから……いきます」

 会話のあいては満足したようだ。まゆは電話を切った。

 ふ、と頬に冷たいものがあたる。

 まゆは視線をあげた。白い粒が空からおりはじめていた。

 涙じゃない――涙じゃないよ――

 まゆはつぶやいた。頬にあたる雪を溶かしていく、みずからの涙をぬぐおうともせず――

 

 

これもひとつの終わり方