ぼくたちは国道を渡り、山道に入った。
細い道をしばらく登った。
少女はしきりと
「まだですか?」
と訊いた。
一度などは、もと来た方へ引きかえす素振りを見せた。
「もうすこしだよ。ほら、聞こえないかい? 不安げなあの声が」
ぼくはそう言い、少女は耳を澄ました。
「ほんとうだわ……今にも泣きだしそうな」
少女は肩を震わせた。
夕刻が迫っていた。
暑すぎた昼間の代償を求めるかのように黒い雲が空を覆いはじめていた。
ふいに雨が降り出し、たちまち、どしゃぶりになった。
ぼくたちはぬかるむ山道を走って、山のなかのコテージに飛び込んだ。
そこは、かつては東京の企業の持ち物で、シーズンごとに避暑施設として使われていたのだが、その企業が数年前に倒産してからは、管理人も置かれずに無人のままうっちゃっておかれていたのだ。
それをぼくが買ったのは半年前のことだ。海が近く空気もいいのだからと、叔母を説得して、ぼくは年の半分をここで過ごすようになった。
コテージは二階建で、一階には浴室もある。
少女は居間に立ち尽くして、震えていた。
雨が髪を濡らして、頬にはりつかせていた。
少女は胸の膨らみを隠して、ずっと黙りこくっていた。
「まだ夏前だから、寒いね」
ぼくは言い、乾いたタオルを手渡した。
「すみません」
少女はタオルを受け取り、濡れた髪を拭きはじめた。
ブラウスが肌に貼りついて、少女のまだ幼い身体の線がはっきりうつった。ブラジャーはまだつけていないらしい。透けて見える胸の隆起の先の尖りがいとおしかった。
「濡れた服はお脱ぎ。いま、風呂にいれてあげる」
少女はうなずいた。
ぼくはいったん外へ出て家の裏手にまわり、ボイラーに火を入れた。
湯が浴槽にたまる音がやかましく響いた。
「寒いだろう、お脱ぎ?」
ぼくが促すと少女は無言で目を伏せ、ブラウスのボタンを外しはじめた。
白い胸がちらちらと見える。まだふくらみはかすかだ。
少女は子供のようにスカートをおろし、裸足の足で踏みつけた。
白いパンティだけが少女を覆っている。
少女は動かなくなった。
無言で、ぼくをみつめている。これからどうすればいいのかを問うているような。
ぼくはゆっくりと少女に近付き、その前にひざまづいた。
目の前に少女のへそがあった。
少女はなおも無言だった。
ぼくは少女の下着に指をかけた。
少女は目をつむった。
ぼくの指が下着をずらしてゆく。
まだ、発毛はしていない。
ゆっくりとおろしていく
ゆっくりと。
視線を少女の脚のつけねに注いだまま。
――どのくらいの時間が過ぎたろう。
少女の腰がぐらぐらと揺れはじめた。
音が、湯が浴槽からあふれだす響きに変わった。
ぼくは少女を抱き上げて浴室に向かった。