ジャリン戦記 第四話 ダンジョン・シーカー エピローグ


―独白―

 

 ホムンクルスは一生、ただ一人の相手と契約を結びます。それが白き血の誓いです。

 わたしのマスターは乱暴で非常識で女性にみさかいがなくて迷惑なほど悪運が強いひとです。

 特に考えがありそうにも思えないのですが、世の中の権威や規範にはことごとく反抗します。基本的に子供っぽいのです。だから、わたしがしっかりしなくてはなりません。

 それが、誓いを結んだホムンクルスとしてのわたしの務めです。

 冒険者の有能なる同伴者。高額な価格に見合う道具。

 でも――

 旅をつづけるうちにどんどん仲間の女性が増えていきました。

 めがねっこだったり、ねこみみが生えていたり、ボク女だったりしますが、わたしとちがって、生身の――ふつうの女性たちです。

 最初、エミィさんを仲間に加えたとき、わたしは、マスターの変態行為の矛先がエミィさんに向かうようになったので、むしろありがたいと思ったほどです。

 でも。

 わたしはじきに気づきました。

 ほかの女性たちは、マスターの子供を生むことができる。その意志が本人にあろうとなかろうと。

 わたしにはそれはできません。ホムンクルスには受胎能力がないからです。

 それは、でも当然のことです。人造生物はどんな観点からいっても人間ではありません。生殖機能を持つ必要はないのです。

 それでも。

 わたしは。

 エミィさんがうらやましかった。

 アシャンティさんがうらやましかった。

 キースさんがうらやましかった。

 ふつうの、女性であることが――

 でも、そんな感情は、まちがいです――わたしは――道具だから――有用な道具でなければならないから――

 

 エミィさんが危機に陥ったとき、わたしには余力がありました。呪文の力を温存しないでいれば、エミィさんを救えた可能性はありました。

 あのとき、わたしはほかの敵と戦っていてエミィさんの状態に気づきませんでした。でも、それは自分に対するごまかしです。エミィさんに対して、ベストを尽くさなかったのは、事実なのですから。

 たぶん、わたしはマスターと二人に戻りたかったのです。マスターに対して、すねたり、わがままをいったり、おねだりのできた、生まれたてのころに戻りたかったのです。

 エミィさんを守れませんでした。いえ、守りませんでした。道具のくせに、マスターの一番のお気に入りの女性を、見殺しにしたのです。

 わたしは女でないばかりでなく、道具としても失格です。

 だから――

 もうマスターとは会いたくありません。

 もうマスターと話したくありません。

 マスターにみられるのもいや。

 マスターの体温を、匂いを感じるのもいや。

 抱かれるのは――いちばんいや。

 ただ生きるためだけに――なんにも残せないのに――愛されるふりをするのは――

 

 どうして、ホムンクルスは、呪文で動く自動人形じゃないんでしょう。

 心なんかなかったら、よかったのに。

 マスターに使われる、ただの道具だったら、幸せだったのに。

 

 わたしを作ったひと――ヴェスパー博士――わたしは、あなたを、たぶん、恨みます。

 つづく。