偉大なる助平FF もうひとつのエピローグ 〜好男〜
美琴が凄絶に墜ちた。
そのさまを目のあたりにしながら、好男はなにもできず、なにも感じないままでいた。
まるで現実味がない。悪夢というよりも、理解不能なまぼろしのようだ。身のまわりで起きていることがどういう意味を持っているのか、それさえもわからない。
たぶん、この世界に好男は存在していない。つまり、現実でないのは好男のほうなのだ。
このまま目を閉ざしてしまえば、この世界における好男の実存は消失するだろう。色事好男という少年など初めからいなかった、そういうことになるはずだ。
そうなるべきだ。
好男はまぶたをおろした。一刻もはやく消えてしまいたかった。
「よしお、くん」
すぐ間近で、聞き知った声がした。
だれかの指が頬をくすぐり耳たぶを弄う。
「目をあけて、よしおくん」
不承不承まぶたをひらく。そこにいるのは真由美だ。なにも身につけていない姿で好男にのしかかっている。気がつくと、好男自身もそうだ。全裸だ。
周囲は、一糸まとわぬ男女だらけだった。通学途中の中学生たちは男子も女子も下着まで取ってしまって、それぞれの性器を愛撫しあっている。腹の突きでた中年サラリーマンの姿も混じっている。もっと年上の男女も、年下の男女も、ただひたすらに性行為に没入している。
「これは――いったい」
好男は事態が理解できずに茫然とする。と、すぐそばに顔を寄せてきた真由美が微笑んだ。
「わたしたちの頭のなかにあることが、広がったの。伝播したの。着床したの。わたしたちの世界の広がりは、もう止められないの」
「そうだ、息子よ」
真由美の背後から声が聞こえた。
「おやじ……」
真由美のヒップを抱えるようにして、極太がいた。真由美に、挿入しているらしい。
腰を入れる。あん、と真由美がのけぞる。頬が紅潮して、瞳がうるんでいる。
「な、なに、してるんだよ……」
好男の声がかすれる。
「なにって、セックスだよ、おにいちゃん」
真横からの声に好男は思わず顔をむける。妹の沙世がいる。やはり全裸だ。薄い胸も、無毛の恥部もあらわにしている。そのワレメの部分はすでにベトベトで、精液らしい粘液が糸を引いて、内股へと流れている。
「ね、沙世もおまんこ、うまく使えるようになったんだよ。おにいちゃんも試してみて」
股をひらいて自分で粘膜をいじる。ひくひくと蠢く花弁はまるでそれ自体が別の生き物のようだ。
「そう――みんな、仲間になったのよ」
好男の首に柔らかい腕がまきつく。静香だ。
「そ、んな……」
「好男くんも、しよ」
真由美が、極太にバックから責められつつも、好男のペニスに手をそえた。
「真由美、よせっ!」
抗おうとするが、身体の自由がきかない。真由美の唇が好男を包みこみ、舌を合わせてくる。
「おにーちゃん、沙世のクリ、いじってよぉ」
沙世が好男の右手を取って、自分のワレメへと導く。おさない妹の性器を指先に感じる。突起の部分は子供らしく包皮におおわれたままだが、その下で硬くなっているのがわかる。
「んくぅっ! おにーちゃん、もっと、くにゅくにゅしてぇっ!」
「ほうら、先生のおっぱい、ちゃあんと飲んでね」
好男の顔にまるく張った乳房に押し当てられる。頬に当たる胸の温かさと弾力、肌の匂い――そしてすぐ目の前に乳首の尖りがせまってくる。
「ほら、ココをこうしたら――出るのよ」
静香が自分で乳首を絞ると、ぬくくて真っ白な母乳が噴き出してくる。
唇に静香の乳首をはさむ。
ちゅずう――吸いあげると、あまいママのミルクが口いっぱいに広がった。
「うふうん、気持ちいいわ」
「おにーちゃんの指、エッチに動いてるよぉっ、沙世、感じちゃうっ」
「ふふ……好男くんの、大きくなったぁ」
女たちが好男のまわりで嬌声をはなつ。
「まず、あたしね」
真由美が唇をぬぐいながら言う。脚をひろげて好男の上にまたがる。極太のペニスはアヌスに受け入れていたのだ。いまも、そこには好男の父親の性器がささったままだ。
「やめろ……よせ、真由美……」
どう言えば自分の気持ちがつたわるのかわからないまま、好男は声を振り絞った。
「こんな形ではいやなんだ。おれはおまえのことが――」
「愛してるわ、好男くん――ずっと、あなたとこうしたかった」
真由美が微笑みをうかべたまま、好男とつながる。ヴァギナとペニスが接続される。
電流が走る。
「うあっ」
「ふうううっ、はあ」
真由美が動きはじめる。いや、極太がピストン運動しているせいかもしれない。
「ああ、二本のオチンチンが、あたしの中でこすれてるぅっ!」
喜悦の声を少女がはなつ。好男は真由美の胎内の熱と潤いとともに、薄い壁をへだてて力強く動く父親のペニスの感触すら感じていた。亀頭がその動きに刺激されて、強い快感を受け取ってしまう。
「だ、だめだっ!」
好男は射精をこらえられない。真由美の中に漏出してしまう。
「んうう……好男くんの精液、あったかいよ……でも、まだ足りないの。もっと、もっと、いっぱい出して」
真由美が静香をおしのけるようにして好男の唇を奪った。舌を挿し入れながら、腰をゆさぶる。好男は幼なじみの少女の中で回復してしまう。
「ずるい、つぎは沙世の番だよ」
「ああん、先生もぉ」
沙世と静香が不満そうな声を出す。
「じゃあ、沙世ちゃんと先生はおれたちが」
長崎と小出だ。この期におよんでまだビデオカメラを持っている。もしかしたら、彼らの望む世界とは、彼らの撮影した映像そのものなのかもしれない。
おしりから沙世を小出が貫く。静香の脚をかかえて、長崎が挿入する。
そして、沙世と静香は気持ちよさげに顔を上気させながら、好男へのキスをくりかえす。
「あああっ、あんっ、よしおくんのチンポもおじさんのチンポも気持ちいいよぉっ!」
真由美が腰を前後に動かしながら、むせび泣いている。
好男と真由美、そして極太、沙世、長崎、静香、小出――七人の男女がからみあい、つながりあっている。
見れば、周囲でも同じように複数の男女がひとつになっている。美琴もだ。穴という穴に男たちを受け入れて、忘我の境地にある。
その男女のつながりは、きっとどんどん広がっていくのだろう。この町から、さらに外へ、世界全体へと。
きっと、それは壮観だろうと好男は思う。たぶん、男女の肉体で描き出す、曼荼羅のようになるのではないか。
好男は、それを見てみたい、と思った。
朱里の面影と、それに重なる助平の面影が、哀しげにまつげを伏せたような気がする。だが、これが選ばれた未来の形なのだ。
好男は真由美のあたたかな肉体に包まれる幸福感に浸りながら、そのことを確信した――