偉大なる助平 第三話(2)
7
「いっ……痛い」
真由美が苦痛を小声で訴える。
「がまんしろ」
乱暴に言ったのは長崎だ。
小出は黙々と手を動かしている。
古い縄跳び―――ビニール製ではない、太い天然繊維ものだ―――を結びあわせて作ったロープで、真由美の身体を縛りあげているのだ。
乳房が痛々しく絞りあげられている。
股間にもロープは容赦なく食い入っている。
両手は後ろ手に縛られ、マットの上に転がされている。
「へへ、傑作だぜ」
小出が作業を終えて、満足そうに嗤った。
「うう……」
真由美は痛みにうめき声をあげていた。
本気で縛りあげられている。少しでも身動きをすれば、ささくれだった太い縄跳びが股間の敏感な粘膜に食い入り、激痛となる。
「やっぱ、縛りはいいよな」
長崎が自分の男根をしごいた。はや大きさを回復している。
「女の身体がいやらしく見える」
言いつつ、肉が歪められた乳房を亀頭でなぶりはじめた。
乳首と亀頭を触れあわせる。
プチンと立った乳首が、赤黒い亀頭にこすられて形をかえる。亀頭の先端からにじみでるカウパー氏腺液がピンクの乳首をてからせている。
「あっ……はあ」
真由美は吐息をもらした。
小出もはじめた。
股間のロープをつまんで、前後に動かし、いっそう食いこませるようにする。
「うあっ! あつ……い」
こすれる。こすれて熱を持ちそうだ。
「へへ、いいんだろ? ロープの色が変わってきたぜ」
「う……うそよ」
「うそじゃねえ。おまえのあそこから、やらしいよだれがだらだら出ているぜ」
小出は楽しそうだ。
「縛られて、ロープの感触で濡らすとは、真由美ちゃんはそうとう変態だな」
「いやっ! やあっ!」
真由美は首をふった。
「あひっ!」
悲鳴のような声をあげたのは、ロープがもろにクリトリスを直撃したのだ。衝撃が襲い、腰がはねた。
一瞬、下半身が無感覚になり、透明なしずくが小さな噴水となって、数瞬弾けた。
「おほっ、おもらしまでしやがった。撮ったかよ、今の」
小出は好男に確認した。好男は答えなかった。むろん、ちゃんと接写で捉えている。
「さあ、おれも真由美ちゃんのおまんこをいただくとするかな。縛った女をヤるのはとにかく最高だぜ」
小出は真由美を仰向けに寝かせると、大きく脚を広げさせた。
股間のロープをわずかにずらし、指で小陰唇をひろげる。
「ピロピロがこんなに充血してら。おほっ、破れた処女膜がまだ見えるぜ」
濡れて光っている真由美の膣口の奥にパール色の粘膜が見える。出血はまだ続いているようだが、量はたいしたことがない。破られた真由美の処女の証しだ。
「ほうら、入るよぉ」
「んううっ!」
真由美は眉をしかめ、歯を食いしばった。
小出の方が長崎よりも長身の分、男根も大きい。そのサイズを受け入れるのに、新たな苦痛がもたらされたのだろう。また、縛られているから、小出の体重が乗るだけでかなりの激痛があるはずだ。
小出は腰を沈めていく。その顔の下半分が喜悦に歪む。
「おほっ、熱い。キュウキュウだぜ、こりゃ」
「なっ、名器だろ。さすが天才柔道少女だ。締まりがちがうぜ」
長崎は真由美の乳首を指先でこねながら、夢中の小出に声をかける。
小出は腰をくねらせながら、何度も快楽の叫びをはなった。
真由美も目を閉じて、甘い声を漏らしはじめている。大きなものが身体をかきまわし、確実に快感をもたらしているのだ。しかも、ロープは常にクリトリスの周辺部を刺激し続けている。
「この分だと、後ろもさぞかし……だろうな」
小出が長崎に笑いかけた。長崎もその意味を悟って、ぐひっと笑う。
「さっ、いろんな体位でやろうね。次は上になってね」
小出は真由美から引きぬくと、自分が仰向けに転がった。
長崎が乱暴に真由美を起きあがらせると、小出の上にまたがるような姿勢を取らせる。
「うあっ!」
下から尻を抱えられ、突きあげられた。
騎乗位だが、真由美は縛られている。自分で動きをコントロールするどころではなく、長崎によってめちゃくちゃに振りまわされた。
「うっ、あっ、あっ、ああっ!」
真由美は痛みと快感の双方によって責めたてられ、意識が灼熱していた。
「ひうっ! う……」
何度目かのオルガスムスが脳を溶かし、全身から力がぬける。
まだ硬いままの小出を受け入れたまま、上体から倒れこむ。
長崎はマットのうえに立って、その真由美の尻にまたがった。
唾を指先につけると、真由美の肛門になすりつけた。
中指と薬指をそろえて、一気にえぐる。
「やっ! ああっ!」
まったく新しい刺激に、真由美の意識がもどる。
おしりが熱い。まるで焼けた串を差しこまれたかのようだ。
真由美は縛られて不自由な上体を曲げて、長崎の意図を悟った。
「いやっ! やめてっ! おしりはいや、いやっ」
「黙れ」
小出が下から真由美の乳首をつねった。
さらに、男根を手で支えながら、真由美の性器の奥をえぐる。
「ああっ! だめっ!」
真由美は小出の肩に頭を落とした。おしりを高く掲げさせられた。
肛門から指がぬかれ、大きくひろげられる。
長崎は男根にも唾をまぶし、一気に突きたてた。
真由美の唇から絶叫がもれた。
それはすぐに嗚咽に変わった。受け入れてしまったのだ。真由美の身体は、男根を同時に二本も。
8
「うっ、うんっ、うあっ」
真由美がうめく。
身体が揺れている。二種類のモーメントが混じりあっている。
ひとつは小出が下から突きあげる動き。縦のモーメント。
もうひとつは長崎がうしろから貫く動き。横のモーメント。
そのふたつが、真由美の身体の中心でひとつになっている。
組織としてはほとんど隣接しているふたつの入口に、ちがう角度から突き入れられているのだ。
普通なら激痛が襲うはずだ。
だが、小出と長崎が巧みなのか、それとも真由美の身体が異常なのか。
ものすごい快感が襲っていた。
特に、おしりがすごい。
長崎のものが押しこまれるたびに、真由美の後頭部を電撃が襲う。それが抜かれようとするとき、電撃は背筋を何度も上下し、真由美を泣かせる。そして、男根を失うまいとして無意識に括約筋を締めあげている。
「おっ」
「いっ」
長崎と小出が同時にうめくのは、真由美の前後の筒が同時にすぼめられるからだ。
二人の男根から精液を絞りとろうという真由美の肉のうねり。
「すごいなあ、大河原さん。とても今日処女を破られたとは思えないねえ」
感心したように助平が言った。
好男はファインダーの中の真由美の痴態に酔いしれていたが、助平の言葉に朦朧とした意識を破られた。
大河原真由美がセックスしている。中学二年、十四歳の快活な少女が、二人の男子生徒にあらゆる恥部をさらけだし、その柔肉のすべてを蹂躙させている。
しかも、その様子は逐一ビデオカメラに記録されているのだ。
「あっあっあっあーっ! いっちゃ、いっちゃううっ!」
真由美ははしたない声をあげている。膣と肛門に男根を飲み込んで、さらに締めあげる。全身が汗に濡れ、むせかえるほどの性臭をはなっている。
「いくっ! いっちゃうっ!」
わななきが最高潮に達している。身体をゆすって、男たちの肉棒からもたらされる快感を極限まで高めようとしている。
「出すぞ、真由美ぃ。いいか!?」
切羽つまった声を小出は出した。下から真由美の太股を抱え、腰を激しく上下に振っている。
「おれもだ。尻に注いでやる」
長崎も、真由美の尻をつかみ、腰を叩きつけている。
男根が二本、粘液にまみれながら真由美の股間をえぐっている。
真由美は絶叫した。
「だしてっ! いっぱいだしてぇっ!」
「うおっ」
「ぐぅっ」
二人の男が同時に放った。
「ああああーっ!」
真由美の股間から熱いものがほとばしった。
三種類の噴出。
長崎と小出の射精と、真由美の失禁だ。
長崎は真由美のアヌスから男根を抜いた。白い粘液が先端から糸を引いている男根を。粘液は真由美の尻の谷間に川を作った。
小出も男根を真由美の膣から抜いた。睾丸が収縮し、最後の一滴までも放出したかのようだ。
真由美の股の合わせめから、大量の精液があふれだす。
荒い息をしながら、真由美は脱力してくずおれた。
だが、顔は嬉しげにゆるんでいる。
最高の表情だ。
解放された魂が形づくった微妙な笑みだった。
訓練された女優には作りえない、今の真由美にしか出しえない表情だ。
「――最高だ」
好男はつぶやいていた。
9
長崎がマットに倒れこみ、勢いあまって床に落ちた。あまりの快感に意識がとおくなったのか。
小出も床にしりもちをつき、男根を露出させたまま白目をむいている。
「さあ、色事くん。きみがしあげるんだ」
助平が背後からささやいた。照明板はどうしたのか。だが、光はベストな角度と強さで真由美の身体にあたっている。かびくさい体育用具室が桃源郷のように見える。
「……おれ?」
「そうさ。監督のきみが真由美くんのレジェンドを完成させるのさ。カメラはぼくがやるよ」
「おれが……真由美を……」
好男は真由美を見つめた。やわらかく、しどけなく、身を横たえている真由美の肢体は上気して輝いている。
よろよろと好男は眠る少女にちかづいた。
いましめられた乳房に手をのばす。
白い膚のうえには、男たちに嬲られた跡がきざまれている。ロープがこすれた部分はすりむけ、赤く変色したキスマークが散在する。そして歯形さえも。
胸にふれた。
ぴくん、と真由美が反応する。
涙をふくんだまつげが二三度しばたたかれる。
「ま……真由美ッ!」
衝動がつきあげた。
目の前の、この、壊れやすいやわらかなものを破壊しつくしたい、貫いて、放出して、満たして、そして食らいつくしたい。熱いものが下腹部からせりあげてきて、爆発しそうだ。
乳房をにぎりしめた。
「……っ!」
痛みに顔をしかめる真由美の乳首に好男は吸いついた。
べつの男のつばの匂いがした。その感覚がさらに好男を狂暴にする。
両手で真由美の乳房をもみしだきながら、左右の乳首を交互に吸った。音がするほどだ。真由美の乳首がたちまちはれあがる。
「いっ……! うっ……!」
真由美の声は言葉にならない。
好男は真由美の股を割った。処女を失ったばかりの性器を乱暴に左右にひらく。
充血したラビアが顔をのぞかせている。その奥の肉のあわせめからは、真由美の身体に力が入るごとに、白い粘液が押し出されてくる。
好男の指が真由美のその部分をえぐる。
「あうっ……!」
指を二本にして、奥までさしいれる。精液が、あふれた。
「うっ、うっ……」
真由美が泣いている。快感のためか、恥辱のためか、好男にはわからない。その違いなどどうでもよい気がしている。
怒りと、欲望だけがあった。
指先に、ひだのようなものを感じる――破れた処女膜だろうか――好男は指で内部をかきまわした。
「うあああっ! あっ!」
真由美が背中をそらす。感じてやがる、好男は真由美を軽蔑した。男ふたりに犯されて、さらにそのシーンを幼なじみに撮影されて、あげくのはてにその好男自身におもちゃにされているのだ。
いつも、いつも、いっしょに遊んでいた。
子供のころは、真由美のほうが身体が大きかった。なにかというと泣かされた。ぎゃくに、ガキ大将から守ってもらったこともあった。感謝などしなかった。なぜなら、そのせいで、「色事は大河原の子分だ」というのが定説になってしまったからだ。
「ここがいいんだろ? ああ?」
好男は真由美の内部をえぐった。中指の先端が真由美の中の快楽のボタンにふれる。Gスポットだ。
「くっ……うっ!」
真由美がなにかをこらえるようにしながら激しく首を横にふる。
中学にあがって、身長で好男が追い越しても力関係はかわらなかった。スポーツでも、勉強でもかなわない。家も近所で親同士も仲がいいから、ついつい引き比べられる。好男の母(いまは別居中)が好男のことを口にするときの枕詞はきまって「うちのバカ息子がご迷惑をおかけしまして」だった。(もっとも、それに対して真由美の母親は「いえいえ、うちの熊娘こそ乱暴で」と返すのだが……)
クラス委員で、柔道で新聞社から取材を受けるほどの有力選手で、先生やクラスメートからの信頼も厚い真由美。それでいて明るくて活発で、女子特有の陰湿な<仲良しグループ>とも無縁の真由美。
その真由美が――
「うあっ……やはっ!」
「むりすんなよ。イきたきゃイっていいんだぜ」
指先にバイブレーションをおくりながら好男はせせら笑った。
真由美は好男の指から逃れたいかのように身体をくねらせる。だが、上半身を縛られているので、マットの上をずりあがることしかできない。
「なんだよ、おれの指じゃいやだってのか。長崎や小出ならよくて、おれじゃだめなのか」
おさえつけるようにして、好男は真由美の胎内奥深くへ指をねじこんでいく。
「はあ……はあ……」
熱い息をはく。目尻に涙がうかぶ。
「べちょべちょだぜ、真由美。このインランめ」
親指の腹で、クリトリスをおしつぶす。
「あっ!」
「気持ちいいんだろ? 真由美、なんとか言えよ」
親指を動かした。少女の肉体で最も敏感であろう部分に刺激を加えつづける。
「やっ、あっ、ああっ!」
「男のモノを二本もくわえこんで、たっぷり中出しされたあとに、指マンされて、どんな気持ちかってきいているんだよ」
真由美の中にうずめた指を小刻みに動かしながら、好男は言葉を投げつける。
「あんっ、んんっ、や……やめてぇ」
真由美がまぶたをあげる。頬があかい。前髪が汗で額にはりついている。
目が、合った。カメラのレンズ越しではない。すぐそばに真由美がいる。瞳がうるんで、泣きだしそうだ。
「……色事くんの、ばか」
好男の心臓がはねた。真由美の言葉に記憶が刺激された。
――小学校五年生の夏だ……
その日はプールの授業があった。泳ぎが苦手な好男はプールの授業がきらいだった。むろん真由美は泳ぎも達者だった。
だが、その日のプールに、真由美は現れなかった。午前中の授業ではいつもの通りだったから風邪ではない。そえいえば、給食のあとで担任教師となにか話していて、そのまま保健室に行ったらしいが――
けっきょく、その日のプールでも泳ぎはマスターできなかった。
水着のままで暗澹たる気分で廊下を歩いていると、真由美がむこうから歩いてきた。保健室の帰りだろうか。紙袋を持っている。
――なんで、プールさぼったんだよ。ずるいぞ、病気でもないのに。
好男はさほどの考えもなく、真由美にからんだ。
いつもなら速射砲のような反撃がくるところだ。あるいはもっと手っ取りばやくヘッドロックか。
だが、真由美は黙っていた。困惑したような表情で、水泳パンツ姿の好男を見て、すぐに視線をそらした。
――どうしたんだよ、へんなやつ。
好男はいつものように真由美に近づいた。真由美が後ずさる。
――なにもってんだよ、先生にもらったのか?
子供の発想だ。真由美の手から紙袋をひったくった。
――だめっ!
真由美は悲鳴をあげた。
――やだ、見ないで!
――お菓子でももらったんか?
真由美が飛び掛かってくるのをかわしながら、好男は紙袋の口をひらいた。
なんだか鉄錆くさいような気がした。血の、においに似ている。
紙袋のなかにはさらにビニール袋があった。その中身を確認するより早く、真由美が紙袋を奪いかえした。
――色事くんのバカ!
真由美は泣いていた。好男はうろたえた。真由美が泣くなんて思いもしなかった。
あやまった。理由はわからないが、とにかくゴメンをくりかえした。
――数日後、回復した真由美にたっぷり仕返しされて、あやまるんじゃなかったと深く後悔したものだった。
(あの時から……真由美は女だったんだ)
いまさらながら好男は思った。
(なんてばかな賭けを……おれはしたんだろう)
つきあげてくるものは熱を失っていた。
好男は立ちあがった。
助平をふりかえる。
カメラを手にした助平は、好男の視線をうけとめる。
「どうしたんだい? 真由美ちゃんに、してあげないのかい?」
「――もう、こんなことはおしまいだ」
「おしまい? なぜ? かわいい女の子としたくないのかい?」
「真由美は……真由美はちがうんだよっ!」
好男は叫んでいた。つぎの瞬間、助平に殴りかかっていた。そう思った。
だが――
助平はそこにはいなかった。どこにもいなかった。いや、なくなっていたのは好男の肉体の感覚だったのかもしれない。
ただ、助平の声が聞こえた。不思議がっているような声だった。
「ふぅん……性欲だけじゃないんだ……やっぱり、おもしろいな、人間って……」
エンディングテーマ曲が聞こえてくる。
10
ビデオデッキの停止ボタンを押して、助平が言った。
「―――と、まあこんな感じで撮影できれば、と考えているんですけど」
「……ふぅん」
真由美はかるくうなずいた。表情は平静なままだ。
「そーとー脳天気な展開ねえ」
「そうですか?」
助平は首をかしげた。
「完全3DCGによるシミュレーションによると、こんなふうにうまくいくはずなんですが」
「――」
一拍おいてから、真由美が怒声をはなつ。
「なにが『美少女はアンドロギュヌスの夢をみるか』よ! けっきょくハードコアじゃないの! 真面目につきあって馬鹿みたいだったわ! もう少しまともな脚本を持ってこないことには、いくら約束だからってモデルになんかなりませんからね!」
真由美は「イーダ」を思いっきりすると、靴音も激しく映研の部室をでていった。
残された男たちのうち小出、長崎は茫然としていた。
「なんでおれたちがウラビデオ製作チームなんすか」
惚けたように小出が言った。
「そうすよ、ぼくら、ほんとはアニメ専門なのに」
長崎が相槌をうつ。
「あっはは、ごめん、ごめん。ちょっと悪のりしちゃったかな」
助平は自分で自分の頭をペチペチたたいた。
茫然としている男がもう一人いた。好男だ。
深いため息をついて、肩から力をぬいた。
「ほっとした。なんか夢でもみていたみたいだ。助平のシミュレーションビデオがあんまり真に迫っていたから」
「そう?」
助平はデッキからテープをイジェクトし、手に取った。タイトルは「美少女解体新書・うつつ編」となっている。
「じゃ、これはぼくが保管しておくね。せっかく編集したんだもの」
助平は笑みを浮かべたまま立ちあがった。そして言った。
「色事くん……今日は何曜日だっけ」
好男は記憶をさぐった。
「ええと、金曜だろ」
「月曜ですよ」
小出が言った。
「えっ……!?」
「そう、月曜」
長崎も腕時計を確認しながら言う。
好男はビデオデッキのそばに見なれた黒い機械が設置してあることに気づいた。映像をいかようにもアレンジして見せる機械。それを使えば、観客にまざまな印象を植えつけることができる。たとえば、実写映像をCGのように思わせることも――
好男は、ゆっくりと助平を見あげた。凝視する。
助平はただ静かに微笑んでいる。
――夢はうつつ、うつつは幻。