千景さんのなつやすみ
「じゃ、おやすみ」
身体を洗いなおした千景と和紀は、着替えをすませ、おやすみのあいさつをした。
「千景さん、キス」
「だめよ、もう」
ふふ、と笑いながら千景は和紀から身をかわした。
「よく寝てね――目が覚めたら、さっきのことはぜんぶ忘れてね」
「そんなあ」
「だって、あたし、おばさんだしね。和紀くんは若いんだし、まあ、いい経験したな、って思ってくれればいいから」
「おれが好きなのは千景さんです」
「ありがと。あたしも和紀くんのこと好きよ。優也の友達だもん。これからも優也と仲良くしてほしいし、それに、和紀くんはちゃんとしたガールフレンドをつくったほうがいいしね」
「……おれ、あきらめないですから」
「あはっ、こわいなー」
千景はそれでも破顔して、手を軽くふると、自分の寝室にしている居間にもどった。ふすまを閉じて、自分用のふとんの上にぺたんと座る。電気はちいさいランプだけがついている。
「……まずいなー、エッチしちゃった」
それも息子の同級生とだ。酔っていたとはいえ、軽はずみな行為だった。それも自分からかなり積極的にふるまっただけに、和紀はあっさりとはあきらめてくれないかもしれない。
「だって……ひさしぶりだったんだもん……」
ぽふ、とまくらに顔をうずめる。はああ。
十四歳――だったから、いまの優也や和紀と同じ歳だった。人生を文字どおり変えてしまう恋を千景はした。その結果として優也を得たわけだ。むろん、こぶつきであっても、千景を求める男性はあとをたたなかった。さびしさに耐えきれず、そうした男性と床をともにしたこともあった。だが、優也のことを思えば、他の男のことなんかどうでもよくなるのだ。最愛の男に生き写しの優也がそばにいるかぎり……
「やっぱりまずかった……ぜったい口止めしとかなきゃだわ、うん」
和紀を怒らせて、優也にぶちまけられでもしたら困る。和紀の要求はかんたんに蹴ってはならず、じょじょに自分から離れていくようにしむけなければならないな、と思った。
「でもまー、つかれた。ねよねよ」
千景は肌ぶとんをかぶると目をとじた。どこでもいつでも眠れるのは少女時代からの特技である。
すう。
かんたんに寝入ってしまった。
――どれくらい経ったろうか。
ふすまがそっと開いた。
なにものかが、息をひそめ、足音をしのばせて部屋に入ってきた。
肌ぶとんはすでに所定の位置にふっとんでおり、パジャマ姿の千景の姿が薄暗い部屋のなかに浮かびあがっている。
その人物は、千景に添い寝するように横たわった。
頬に手を触れた。だが、眠りが深いせいか反応しない。
かれは、千景におおいかぶさり、唇にキスした。ちゅっ、と音が鳴る。
やはり、動かない。
大胆になったかれは、千景の胸をわしづかみにした。パジャマの下はノーブラだ。
もちをこねるようにして胸をもみつづけた。
千景の呼吸に変化があらわれていた。
鼻での呼吸だが、せわしなくなっている。
がまんできなくなったのか、パジャマのボタンをはずしていった。白い胸が見えた。
千景の胸は寝ていても形がほとんど崩れない。愛らしいピンクの乳首も、部屋が暗いせいでいまはいやらしいドドメ色に見える。
パジャマの下も脱がした。パンティ一枚の姿だ。
かれ自身、下半身は裸になった。
自分で男根をこすりはじめた。すぐに急角度を得て、屹立する。しばらくそうして手淫を続けていた。いきそうになったのか、動きをとめた。
それから、かれは千景の胸をしゃぶりはじめた。
乳首をかるく噛みながら、引っ張った。ちゅうちゅうと吸っている。
手は、パンティの上から股間を擦っていた。
しばらくそうするうちに、あきらかに湿り気がでてきた。
まだ目をさます様子はないが、千景の寝顔もどことなく切なそうになっている。
頃合いはよし、とみたのか、かれはパンティをずりおろしはじめた。
これがなかなかうまくいかない。不器用なやりかただ。
だが、なんとか、足首のところまでパンティをおろした。
こんもりとした丘が、かれを誘っていた。陰毛は薄い。まるで少女のような清らかさだ。
大胆にもかれは無抵抗な千景のふとももをおしひらき、ぐっと前に倒した。
濡れそぼった千景自身が目の前にあらわになる。
かれは、むしゃぶりついた。
クリトリスのあたりをたんねんにしゃぶる。
そうすると、千景の身体がぴくぴくと反応するようだ。
濃密な千景の香りが部屋にただよった。
もうこうなると、挿入したい気持ちをおさえられない。
上からねじりこむように、挿入した。
「ううっ」
千景がうめいた。
目尻に涙が浮かんでいる。
かれは、ゆっくりと腰をゆすっていた。
「和紀くん? ひどい、人が寝てるときにぃ……」
千景は困惑の表情だ。和紀ががまんできずにやって来たのだと思った。
「だめよ、こんな、犯罪よぉ……」
かれは、腰を上から何度も落とすように動いた。
千景は声をこらえて二三度首をのけぞらせた。
「となりに優也がいるのにぃ」
かれは答えない。ひたすらに腰をうちつけ続けている。
「ここ、壁、うすいんだからあ」
かれは、千景のふくらはぎを肩にのせて、腰をゆすった。
「ああん……うそぉ」
千景はうめいた。なぜだがすごい快感が体内からわき起こってくる。こんなに相性がいいなんて、と千景は動揺する。十四歳の少年の肉体に溺れていってしまうのだろうか、というおびえを感じた。
「あっ、あっ、だめ……声がでるぅ」
きわまってきたのか、千景の声のトーンが高まった。
「んうーっ」
そばにあった枕をだきしめ、声をころす。
「うっ、うっ」
強く、かれは千景を突いた。千景の身体が痙攣する。声をださないようにしているぶん、身体の内部において快感が倍増している。
「うう……はあはあ」
裸の胸が呼吸とともに揺れている。
かれが千景の尻をつかんだ。よつんばいになれ、と促しているようだった。千景はしたがった。
かれは千景の部分をお尻から責めはじめた。
舐め、指を差し入れた。
千景は声を殺していたが、がまんできずに嗚咽をもらしはじめていた。
「優也あ……ごめんねえ」
かれはその言葉にびくりとなって、しばらく動きをとめる。だが、しばらくするとまた、責めをはじめ、千景から苦悶と快楽の声を引き出す。
中指をアヌスを差し入れて動かしている。
「そんな……とこ……ばっかり……なぜぇ」
かれは、しかし、執拗にその部分を責める。千景はなにがなんだかわからなくなってきた。
と、その部分にかれが男根をあてがっていることに気がついた。
「入らないわよぉ、おねがい、やめてぇ」
逃げようとしたが、かれの手がおさえつけていた。それに、暴れて優也が起きてしまったら、というおびえもあった。
「あんっ」
それがアヌスにおしあてられるのを感じた。
覚悟するしかなかった。千景は身体から力をぬいて、受け入れ体勢をつくった。
押し入ってくる。
「くはっ……あ」
千景はふとんに顔を押しあてた。苦痛はあるが、それ以上に別種の感覚が襲いかかっていた。どうしようもなく相性がいいらしい。どこに入れられても、気持ちがいいのだ。
――離れられなくなるかも、しれない。
かれが腰を動かしている。余裕のない動きだ。もうすぐ出すのかもしれない。
「ああっ、だめ、動いたら、だめ」
がまんできなくて、千景が大きめの声をだした。
「よすぎるの、だから、だめ」
千景はもだえ狂った。声を押し殺そうとしているが、もうどうにもならないようだ。
「あっ、あうんっ、ああっ、いぃっ」
ふんだんに淫水を性器からもらしている。かれがこわばりを奥におしこむたびに、圧迫される膣から、その蜜が漏れだすのだ。
「あん、あんあんあんあんあっ、あっ、あーっ」
ほとんど叫んでいた。身体をふるわせ、シーツを噛んだ。
「――ぃっ!」
極まっていた。
かれもだ。
はげしく射精していた。千景の肉体のなかに。
千景は失神していた。あまりの快楽のせいらしい。あらい息をしながら、シーツをかんでいる。無意識の行動らしい。
かれは立ちあがり、千景のからだに肌ぶとんをかけた。
部屋をあとにする。
もうひとつの寝室にはふたつふとんが敷きのべられていて、かれは、あいているひとつのほうに身をよこたえた。
隣では、疲れはてた様子の少年が軽いいびきをたてている。
その音をBGMに、かれはゆっくりと眠りへ落ち込んでいった。
だれも彼を傷つけない、夢の世界へと……