うたかたの天使たち 第四話(10b)
「あっ――うあっ!」
さすがに苑子は声を放った。それ以上叫ばせないために、おれは苑子の口を手でふさぐ。湿った呼気がおれの掌のフィルター越しに出ていく。
おれは苑子の耳に唇をつけて、舌でねぶった。
いろんなところに意識を分散させてやらないと――初めての挿入に、パニックに陥りかねない。
だが、鎮痛剤のおかげか、苑子がそれ以上絶叫することはなかった。荒い息をしながらも、耐えている。
おれは侵入を続けた。一気にズボッと入るものではない。だが、括約筋のある入り口以外は、意外にスムーズに挿入できるものだ。
じりじりと、おれのペニスが苑子の直腸にのみこまれていく。
(はあ……はあ……はあ……)
苑子の吐息が熱い。そして、苑子の体内も溶鉱炉のように熱かった。おれのペニスは、その灼熱の肉壺にしめつけられ、翻弄されていた。
(すごく、いいぞ……苑子のおしり)
本音だった。ふつうの女のあそこなんかとは比べものにならない。直腸は膣とちがって複雑な襞などはない単純な構造のはずなのに――。それなのに、こんなにいいなんて、どういうことなんだ。
だが、事実、苑子のおしりに挿入して、何度も動かさないうちに、おれは高まってしまっていた。
(苑子、動くから――ちょっと、がまんしてて)
苑子が懸命にうなずくのを確かめさえせず、おれは動きはじめていた。
(はっ、あっ、あう……くひぃぃ)
苑子が歯を食いしばっている。身体を丸めて、痛みに耐えているのか――あるいはちがう感覚に――
おれはその少女の身体を背後から抱きしめ、アヌスへの挿入したペニスにさらなる刺激を与えようと、腰を律動させている。
あさましい姿だ。
背徳のイメージにおれは戦慄した。いま、この瞬間のおれは人類で最も唾棄すべき存在かもしれない。だが、その感覚が、胸を震わせるほど蠱惑的だ。
(ひっ、ひっ、ひっ、ふっ、うっ、う、う……)
苑子の呼吸がせわしく、浅くなっていく。全身、汗みずくで、芳香を放っている。
この少女も、この行為から、なにかしらを受け取っているのだ。快感か、あるいは、それ以上のもの――そうであってほしい。
だが、それ以上はもう考えられなかった。おれはひたすらに動いて、跳ねてクライマックスに向かって駆け上がっていった。
「だっ、出すぞ、出す……」
「おっ、おにいちゃん、わっ、わたし……もっ」
排便の感覚に苛まれているのか、あるいは粘膜が受け取る快美感に酔っているのか、おそらくはそのふたつがないまぜになった混乱の極みで、苑子もまた声を放った。
「おっ、あっ、あ――」
「ひゃうっ――う――」
おれが放つと同時に、苑子は激しく痙攣し、わなないた。
「おにいちゃ……ごめ……きっと……また……出ちゃ……」
半失神状態で、苑子がつぶやく。
おれは苑子のおしりからペニスを抜いた。ぽっかりと開いた肛門から、おれが放った精液がとろとろと流れ出る。正炉丸の残滓か、あるいはほんとうに苑子の排泄物が混ざっているのか、黒っぽいものも混ざっている。
「ああ……でちゃう……でちゃうよお……」
まずいな、布団を汚してしまう。おれはあわてて、栓をする――
「ひうっ! ま……また……」
苑子がうめく。タオルケットを握りしめている。
栓がゆるいと、隙間から漏れてしまう。大きく、しなければ。
おれは苑子のおっぱいをつかみ、もみしだきながら、海綿体に意識を注入する。
「あっ、あんっ、おにいちゃん……だ……めぇっ」
苑子の声を聞きながら、おれは再勃起する。
ぎゅんぎゅん、苑子が締めつけてきた。よし、これなら、漏れないぞ。
でも、気持ちよすぎて、腰の動きをとめられない。ずちゅずちゅずちゅと、ねちっこい音が結合部から聞こえてくる。
「おにいちゃん……おにい……ちゃ……へん……へんだよぉ……」
苑子の様子が変化していた。刺激が違和感を超えて、快感に近づいているのだろうか。
「おしりが、熱くて、すごいよぉ……ふああっ!」
(おいっ、声が大きいよ)
たしなめつつも、おれも腰を動かさずにはいられない。それに、抜くと、布団がえらいことになってしまうし。
「おにいちゃん、おにいちゃん、おしりが、おしりが……いひぃっ!」
「うあっ!」
ものすごい圧迫に、おれはまた射精してしまっていた。
いかん……さらに苑子のおしりの中にたっぷりと出してしまった。栓を、しなくては……
どきり、とした。
これは、このまま、ハメ続けていないといけないのではないか。
苑子の布団を汚さないように、チンチンを抜くことは不可能だ。
しかし、入れていると、苑子の締めつけが凄くて、おれの方がイッてしまう。
すると、さらに精液が苑子の中に溜まることになる。
悪循環というかなんというか。
どうしよう……
「おにいちゃん……もっと……」
苑子がねだる。あうっ、そ、そんなに締めると……また……。
どぷっ!
おれは、この顛末の落とし所をどうすべきか思い悩みながら、真っ白な世界に落ちていった。