うたかたの天使たち 第四話(10a)


10.根元までズブッ!

 苑子の口の中に、尿道に残った精液を絞り出す。一滴もあまさず、苑子の口の中に出してやったことになる。

 顔にかけるのも乙なもんだが、それだと、布団とかにもついてしまうからな。生活の知恵だ。

(飲めよ)

 おれは意地悪く命じた。

 苑子は涙目で首を小刻みに横に振る。まだ、おれをくわえたままだから、気持ちいい。出したばっかりだというのに、また大きくなっちまうな。

 どうしても、苑子は精液を飲み下せないようだ。といって、吐き出して布団を汚すこともできない。ジレンマだ。

 おれはもっと苑子をいじめようと、その顔を手ではさんだまま、腰をちょっとそらして、剛直をさらに喉奥に進めた。こうすれば、押し出された精液を飲むしかなくなるだろう。

 ――その時だ。

 隣の布団で身じろきする気配が起こった。

「苑子ちゃん――どうしたの?」

 一子ちゃんの声だ。さすがにどきっとして、おれは身体を硬直させた。

 苑子もだ。固まっていた。

「なにか、食べてるの? だめだよ、お布団のなかで食べちゃあ」

 苑子が口をもごもごさせた。まだ、おれのものを咥えたままだ。

「苑子ちゃんてば」

 はぷ、と口をひらいて、キャンデーを外す。

「ら、らんれも、らいよ」

 苑子は口を押さえながら、なんとか言った。口の中におれの精液を溜めたままなので、発音がおかしい。

 一子ちゃんの声に疑念の影がさした。

「なんでもないって……どうして布団にもぐってるの? ねえ」

 かけ布団が外から押された。一子ちゃんがふとん越しに触れているのだ。

「顔を見せなさい」

 ふとんのなかでの飲食は宇多方家の家訓に抵触するのだろうか、いつになく一子ちゃんの口調は厳しめだ。

 苑子の顔が動揺する。どうしようか、と目で訊いてくる。

 行け、とおれも目で伝える。

 苑子がもぞもぞと動きはじめる。おれは、懐中電灯の光が漏れないように気をつけながら、その動きを目で追った。苑子のおしりが動いている。さっきまで、おれが舌と指でたっぷり可愛がったあそこもばっちり見える。

 苑子が布団から顔を出したようだ。おれの視界には、苑子のおしりが、おれの股間のほぼ真上にとどまっているのがわかるだけだ。

「苑子ちゃん、だいじょうぶ? なんだか様子がへん……」

 一子ちゃんが身を寄せてくる気配。

「熱は――ちょっとあるみたい。すごく汗かいて……具合がよくないの?」

「ん……らいじょうぶ」

「苑子ちゃん、口からなにか垂れてるけど」

「……んっ、んぐっ、ぐっ……はあ――なんでもない」

 苑子のやつ、飲んだな。おれの精液。

 苑子がごまかそうとしているようだ。おしりがもぞもぞと動く。ちょうどおれの腹の上だ。

 おれは手を延ばして、おしりを下から抱えるようにした。

「あ……」

「なに、苑子ちゃん?」

「なんでも……」

 おれは、苑子のヒップをおれの股間の上にセットした。

 もう、ペニスの先端を、苑子の潤った部分に合わせる。

「あっ、あっ……や」

 苑子がおしりを揺すって逃げようとする。が、逃がさない。

 ぐいっ、と引きつける。

 先端が苑子の中に侵入する。

 もっとだ。もっと。

 ぬ、ぬううう。

「はあっ、あっ、お、にい……ちゃ……」

「ど、どうしたの、苑子ちゃん?」

 苦しげな苑子の様子に、一子ちゃんの声が慌てている。

 その声さえ、いまのおれにとっては快感のスパイスだ。

 おれは苑子の中への挿入を続ける。

 苑子の膣はものすごく熱い。溶けそうだ。

 もちろん、初めての挿入のはずだ。苑子は激痛にさいなまれているだろう。それでも、おれは苑子とつながることをやめられない。もっと深く、もっと奥まで達したい。

 ぐぐうっ。

 ついに、根元まで。

「うあああ……い……た……」

「苑子ちゃん、どうしたの? どこか痛いの?」

 妹を気づかう気忙しげな一子ちゃんの声を聞くと、たまらなくなった。

 おれは布団のなかで、苑子のヒップをつかんで上下にゆさぶった。腰もグラインドさせる。

「あっ、あっ、はんっ、んう……うう」

「どうしたの? どうして、そんなに動いてるの、苑子ちゃん……」

 どうしたらいいのかわからない、そんな一子ちゃんの声を聞きながら、おれは苑子を突きあげる。小学生のつるつるの土手を押し広げて、奥の奥まで侵入している。熱くて、小さい、苑子の聖域――きゅんきゅん締めつけてくる。

「だめっ、だめだよ――ああっ、んくぅっ!」

 苑子が布団の中でおれの足首をつかんだ。爪が食い込んでくる。苑子も必死だ。

 おしりが、前後に律動している。括約筋を収縮させるたびに、おしりの穴がひくひく動く。苑子のやつ、自分から腰をつかっているぞ。

「いたい……いたいのに……ああっ、へんだよ、へん……ああああっ!」

 苑子の声質が変わっている。少し鼻にかかった甘い声だ。感じていやがる。すごいな、初めてのくせに。

 だいたい、苑子のその部分はものすごく柔らかくて柔軟性に富んでいるようだ。おれのものもすんなりと入って、それでいて締めつけがすごい。名器と言ってしまえばそれまでかもしれないが――苑子と将来つきあう男は幸せ者まちがいなしだ。

 でも、今はおれのものだ。おれが、苑子を女にしてやった。そして、いまも、開発しつづけている。

「あはあっ、ああっ、お兄ちゃん、ヘンだよ、お腹が、お腹が……ぁっ!」

 苑子がヒップを前後に揺すっている。自分でも何をしているかわかっていないらしい。快感に衝き動かされて、さらに密着感を求めて身体を動かしてしまっていることに気づいていないのだ。

 そして、苑子の中に埋もれたおれの分身が、内部で角度をかえる。

 あ、お、そ、そんなに締めたら、おれも――もたない……

 苑子のいちばん奥まで達している。先端に苑子の肉体そのものを感じる。粘膜の果て、小学五年生の女の子の――子宮――

 だっ、だめだっ、もうっ……!

「あぁあ!? だっ……めぇっ!」

 苑子の尻が激しく上下動した。おれはそのヒップをつかんで、思いきり引いた。

 おれの先端が苑子の中心に突き刺さる。

「や、ああああああっ!」

 苑子が叫んだ。おれは放っていた。

 脳の芯が真っ白に灼ける。

 大量の精液が尿道を引っかきながら飛び出していく。いったい、どれだけ出るんだ? 自分でも恐ろしくなるほど長時間、おれは射精していた。

 苑子の子宮を満たすほどに。

「あ……つい……よぉ……」

 苑子がしゃくりあげている。

 どたどたどたと足音がした。

 おれは苑子から自分自身を引き抜いた。白い粘液の塊が、血の色を含ませて、苑子の膣口からこぼれおちる。それを拭き取る時間さえない。おれは膝で畳を滑って、押し入れに飛びこむ。

「苑子ちゃん! 大丈夫!?」

 薬箱を手に、一子ちゃんが飛び込んできたのは、おれが押し入れに逃げ込んだのとほとんど同時だった。

 だが――この押し入れの中の隠し扉は、どうやら反対側からしか動かせないらしい。

 おれはパニクった。ふすまを隔てて、一子ちゃんが苑子を介抱しているらしい様子が伝わってくる。あの、性的知識ゼロの一子ちゃんだからして、苑子になにが起こったかを理解することはまずあるまいが、それにしても、このままここにいつづけるわけにはいかない。

 だいいち、ふすまは数センチ、開いたままだ。今更それを閉めるわけにもいかない。

 いっそ、ここから出て、すべてを白状すべきだろうか?

 しかし、それでは――この話は終わってしまう――じゃなくて、財宝を見つけることができなくなる。

 おれが苦悩のあまり頭を抱えた時だ。

 隠し扉が内側から――すなわち、隠し通路側から――開いた。

 おれは悲鳴をあげかけて、なんとかこらえた。

 顔をひょっこり出したのは、珠子だった。寝巻き姿で、なぜかナイトキャップをしている。珠子はおれを見ても驚く様子はなく、手で「こっちにこい」と合図を送ってきた。

 なんだかよくわからないが、おれは開いた扉のなかにすべりこんだ。

それからそれから!

 隠し通路を珠子は先に立って歩いていた。いちおう、おれは懐中電灯をONにしていたが、珠子にはその光は必要ないようで、よどみなく歩いていく。

 おれは、おそるおそる、声を出した。

「もしかして――珠姫か?」

 そうとしか考えられない。おれにこの通路の存在を教えたのは、珠子が依りしろとなっている、宇多方家の祖先の女性・珠姫の霊なのだから。

 だが、先を歩く珠子は答えない。それどころか、懐中電灯の光の輪から外れたかと思うと、次の瞬間には姿を消していた。

「えっ――おい、珠姫――珠子?」

 おれはあたりに懐中電灯の光を投げかけたが、どこにもその姿は見えない。

 もしかしたら、おれが最初に登った階段―― 一子ちゃんと苑子の部屋につながっていたやつ――と同じような階段や出口がほかにもあるのかもしれない。闇にまぎれて、珠子はそっちに行ったのかも――

 いずれにせよ、おれは、土蔵の出口に向かうしかなかった。


**
***

 翌朝――いつも通りの宇多方家の朝食の風景――

 ちょっとだけ違っていたのは、一子ちゃんが苑子の体調を心配して、「学校を休めば?」と聞いていたことだ。

 だが、苑子はふだん通りに学校に行くと言った。

 意外に元気そうだ。

「ゆーいちっ、途中までいっしょにいこーぜっ!」

 美耶子が朝っぱらやかましくまとわりついてくる。おれも今朝は一時限めから講義が入っているから、そろそろ出掛けなくてはならないのだ。

 まあ、おれが駅まで行くルートの大半が、小学校への登校ルートに重なっているから、ついでといえばそうなのだが。

 いつもはこのパターンで、美耶子に引きずられて行くところだが、今朝はちがった。

 苑子が美耶子を押しのけて、おれの手をつかんできたのだ。

「おにいちゃん、いこう」

 眼鏡の奥の瞳をきらきら輝かせて、頬を半ば染めて、それでも主張してくる。

「あ、ああ……」

 おれの方が、かえって圧倒されていた。

「なんか、ヘン! 苑子ちゃん、今朝はいつもとちがうよ? ゆーいちとなんかあった?」

 美耶子がジト目でおれと苑子を交互に見る。やな感じに鋭いやつだな。

 その会話を後ろで聞いていた一子ちゃんが割って入ってきた。妹のことになると、意外にしっかりしているのだ。

「遊一さん、苑子の具合について、何か心当たりでも?」

「いや、その、あのですね、ほら、なんというか、思春期ならではの気まぐれというか、ですね……」

「ごっそーさん――いってきます――今に逮捕されっぜ」

 セーラー服姿の気恵くんが、ちゃぶ台の側から立ちあがり、かばんを手にして、おれの横をすり抜けていった。なに? 最後のコメントは、なに?

 一子ちゃんは首を傾げたままだ。へんねえ、白いものがあんなところから出るなんて、家庭の医学には載ってないし……とか呟いている。

「いいから! いこうよ、おにいちゃん。遅刻しちゃうよ」

 苑子が積極的におれの手を引っ張る。美耶子も背中を押してくる。おれはよろよろと玄関に向かう。

 そして――

 玄関には珠子がひっそりと立って、おれの靴を揃えて待っているのだった。

 どうやら、今日もひと騒動ありそうだ。

 おれは眠い目をこすりながら、黄色い声につつまれる一日のスタートを切った。

おしまい


総アクセス数