〜うたかたの天使たち〜
気恵編+α

真夏の五芒星

−一子−

「あっ、苑子ね。どーしたんだろーなあ? あいつもそろそろ単独行動をしたい年頃なのかなあ?」

 おれは視線をあちこちに動かしながら言った。口笛とかも吹きたいところだ。ごまかす時には口笛、というのは昔からの決まりごとだしな。

「まあ……苑子が?」

 一子ちゃんが両手を胸の前で組んだ。

「あの子も自立心が出てきたのかしら……」

 なんか喜んでいるようだな。妹の成長を実感しているんだろうか。ふつうは心配するところだと思うが。

「なんだったら、おれ、探してこようか」

 言いつつ、その場を離れかける。もっとも、苑子とおっさんの行方はすでに完全に見失っているから、探すふりをするだけだが。

「それでしたら、わたしも一緒に行きます」

 一子ちゃんが申し出る。負けじと美耶子が手をあげる。

「あ、あたしもー!」

「美耶子と珠子はここにいてね」

「ええーっ! やだよお。あたしも遊一といっしょがいー」

「あなたには珠子を見ていてもらわないと……」

 一子ちゃんの視線の先で、またふらふらと珠子が歩き始めている。心なしか、背中のあたりに青い光がただよっているような気がする。顔の形をしているよぉ、怖いよぉ、ママン。

「しょうがないなあ」

 美耶子が不承不承うなずく。

「そのかわり、お小遣いちょうだいね。珠ちゃんと二人ぶんのアイス代」

 一子ちゃんに手を突き出す。まあ、美耶子がそうそうおとなしく珠子のお守を引き受けるはずもないか。しょうがないと思ったのか、一子ちゃんは手にした小さなバッグからおサイフを取りだして、美耶子に五百円硬貨を二枚ほど渡したようだ。

「じゃあ、遊一さん、どこを探しましょう」

 スクール水着に麦わら帽子という、ノスタルジックだかなんだかよくわからない格好で、一子ちゃんが訊いてくる。

「そうだな……あっちに行ったような気がするなあ」

 もちろん、あてずっぽうに指をさす。

 おれたちは人ごみのなかをなんとなく歩きだした。

 苑子の姿はもちろん見つからない。

 せっかく一子ちゃんと二人っきりになったのだ。苑子がすぐに見つかったら、かえって困る。

 おっ、プールに併設されている浴場があるぞ。ジャングル風呂だとか、滝のある風呂だとか、サウナだとか、ソープランドとか――はないけど、いろいろあるようだ。だが、さすがにこの時間帯ではみんなプールのほうに行っているようで、ほとんど人の姿がない。

 ここ、おもしろそーだな。ちょっと寄ってみたひ……

「おっ、いまの苑子かなー?」

 おれは入口のほうを見て言った。

「いましたか?」

「いや……ちらっとだったから、よくわからないけど、いま、そこに入っていったような」

「それでしたら、わたしたちも入りましょう」

「見間違いかもしれないけど……いい?」

「ええ」

 一子ちゃんがうなずく。おれの言葉をこれっぽっちも疑っていない様子だ。

 入館料を一子ちゃんに払ってもらって(情けない)、おれたちは建物に入った。

 最初に入館料さえ払えば、内部にある浴場のすべてが利用できるようだ。

 足ツボ健康風呂とか、薬草風呂とか、打たせ湯とか、いろいろあって、そのほとんどは水着のままで入れるようになっている。

 さて、苑子を探すという口実で、風呂めぐりとしゃれこもうかな。

「ふわあ、これ、ぜんぶお風呂なんですか、遊一さん」

 一子ちゃんも何とはなしに楽しそうだ。

「あいっ、いたた、いっ、いたたた」

 足ツボ風呂はけっこう効いたようだ。もしかして内臓悪いのか、一子ちゃん?

「あわわわわわ〜」

 打たせ湯では、なぜかお湯に打たれながら声を出しつづけていたりした。よくわからないが、お湯を通して声が変になるのがおもしろいらしい。

 その他、電気風呂で痺れてみたり、薬草風呂でラリってみたりしたりなんかした。

「苑子、いませんねえ……」

 ひととおり変わり風呂を回ってみて、一子ちゃんが言った。

「ごめん……苑子がここに入ったってのは、やっぱり見間違いだったみたいだ」

 まさか、暑気払いのビールをおいしく飲むために風呂に入りたかった、とは言えないので、いちおう謝っておく。

「いいんですよ。それに、遊一さんといろいろなお風呂に入れて楽しかったですし」

 にこにこ笑いながら言う。どうやら、リフレッシュにはなったみたいだ。ふだんは妹たちの世話に忙殺されているから、たまには遊んでも罰は当たらないだろう。一子ちゃんは、今年ようやく16歳になる女の子なのだ。

「じゃあ……もうひとつ入っていく?」

 おれはジャングル大浴場の入口を指さした。

 なぜ、このジャングル風呂を最後まで取っておいたか――それは、このジャングル大浴場だけは裸にならなくてはいけないからだ。ここは、ほかの変わり風呂とちがって洗い場があるのだ。やっぱり、いっしょにお風呂に入るのであれば、裸のつきあいがしたいじゃないか。

 おれと一子ちゃんは男風呂の脱衣所に入った。幸い、ほかに客はいない。まあ、プールで泳いだ帰り、夕方くらいには混みはじめるかもしれないのだが。

 一子ちゃんは混浴に抵抗がない。びっくりするくらい、ない。宇多方のじいさんが生きていたころは、いつも一緒に入っていたらしいから、そのせいかもしれない。その後、「一定度の年齢に達した女の子は、男風呂に入ったりはしない」という常識を学ぶ機会を与えられなかったのだ。おれも教えてないし。

 今回も、一子ちゃんはなんの疑いもなく、おれの隣で水着を脱ぐ。

 けっこう見る機会には恵まれているが、いつ見ても一子ちゃんの身体はきれいだ。おっぱいは、つりがね型で、柔らかそうな乳首はピンク色だ。巨乳ではないが美乳タイプかもしれない。腰もキュッとくびれている。家事労働でいつも動いているからかもしれない。この体つきを見ていると、いつもの「とろ〜」とした行動が信じられない。ヘアは薄目だが、でもしっかり生えている。大人の身体なのだ、一子ちゃんは。

 いやあ、見ているだけで勃っちまいますよ。

 おれはタオルで前を隠しながら、ジャングル風呂に入る。一子ちゃんは前も隠さない。堂々としたものだ。

 ジャングル風呂は広々としており、熱帯の植物があちこちに植えられていた。装飾品らしいトーテム・ポールやモアイ像もある。洞窟風呂なんかもあるようだ。よっほど区民税があまっているんだな、ここは。あるいは、ないしょで賭場でも開いてんのか?

 中に入ってみると、さすがに無人というわけにはいかず、昼風呂好きのおっさんや子供の姿がちらほら見える。おっさんたちは、一子ちゃんの姿を見て、一様に目を丸くする。そりゃあ、そうだろうな。ようじょならともかく、一子ちゃんサイズの女の子が男風呂に入ってくるなんて、そうそうあるもんじゃない。

「遊一さん、どうしたんでしょう? みなさん、わたしのことを見てますけど、なにかついてます?」

 一子ちゃんは自分の顔を触っている。

 いやいや、ツイてるのはあのおっさんたちの方だよ、と思いつつ、おれは一子ちゃんの手を引いて、洞窟風呂のほうに向かった。こっちのほうはひとけがない。やっぱり、他人に見せるのはもったいないしな。

「すごいですねえ、声が反響します」

 洞窟を見上げながら、一子ちゃんがよろこんだ。お湯の深さは腿くらいまで、おれは先に肩まで浸かって、一子ちゃんを下から覗くようにする。ううん、こっちも密林――というほどは密生してないが、おいしそうなフルーツがたわわに実ってる。

「一子ちゃん、洗いっこしようか」

「あ、はい」

 洞窟の側にあるジャングルゾーンの洗い場で、おれは一子ちゃんの背中を流してあげた。

 白くてすべすべの背中に、泡をつけた掌をこすりつける。やっぱり、基本はハンドウォッシュだ。洗うほうも洗われるほうも気持ちがいいしな。

 肩甲骨のくぼみのあたりに指を這わせる。張りのあるお肌。若いっていいなあ……って、どうもおっさん化してしまうな。

「くすぐったいです、遊一さん」

 一子ちゃんが肩をすぼめる。おれはむろん作業を継続。脇腹を撫でさする。

「ひゃ……ひゃひゅっ」

 笑いをこらえているらしい一子ちゃんの奇矯な声が、ジャングルゾーンいっぱいに響く。

「がまん、がまん」

「は、はい」

 身をよじっている一子ちゃんのヒップが、プラ製椅子の上で左右に動く。ああ、いいなあ、これ。

「そんなに動いたら、手がすべっちゃうよ……あっ!」

 とか言いつつ、おれは一子ちゃんの両腋の下から手を突っ込んだりして。

 ぎゅむっ。

「あっ」

 一子ちゃんが身体を強張らせる。でも、なぜかおれの掌に当たるものは、すごく柔らかいのである。

「あ、ごめん、胸さわっちゃった」

「いいんです」

 顔を赤くした一子ちゃんがおれを振りかえる。

「ついでだから、ここも洗ってあげるね」

「えっ、いいです……あっ」

 おれはセッケンの泡を一子ちゃんのおっぱいに塗りたくってあげる。

 いわゆる、揉み洗いやね。

「あ? おっ? おふ」

 一子ちゃんは背筋に力をこめて頑張っている。なにを頑張っているかはよくわからないのだが、そういう雰囲気が伝わってくる。

 それにしても、また大きくなったみたいだな。もしかしたら、おれのせい?

 春先には両手におさまる感じだったのが、いまでは下から支えて、たぷたぷって、できてしまう。

「遊一さん……そこは……もう……」

 顔を赤くした一子ちゃんが訴えかけてくるが、こんな楽しいこと、かんたんにやめられるかぁっ!

「だめー、まだ、先っちょ洗ってないから、だめー」

 言いつつ、人差し指と親指でもって、桜色の尖りをつまむ。むろん、左右同時にだ。

「――っ!」

 声なき声を一子ちゃんがもらす。やっぱり、ここは一段と敏感なんだろうなあ。

 くりくりと指の間で転がすうちに、つぶつぶが大きくなってくる。充血して体積を増した部分を、たんねんにこすり洗いだ。

「遊一さん……だめです」

 一子ちゃんがおれの手に触れてくる。胸から引きはがそうとするが、ふふ、弱々しい抵抗だ。

「なにがだめなの? 胸を洗ってるだけじゃん」

「だって……そこは、へんな感じが」

 性的な知識ゼロな一子ちゃんは、「エッチな気持ちよさ」という概念がないのだろう。

「ふうん……じゃあ、こうしたら?」

 おれは一子ちゃんの、ピン、と立った乳首をつまんで、引っ張った。

「あっ!」

 一子ちゃんがぴくんと身体を動かす。

 指先がセッケンのぬめりですべって、乳首が指の間から逃げる。それをまたつまんで引っ張る。またすべる。

「あっ……んっ、んくっ」

 一子ちゃんが身をよじる。はっはっはっ、乳首いじりはおもしろいなあ。

「もう堪忍してください、遊一さん」

「え? どうしたの?」

 おれはとぼけて一子ちゃんの横顔を覗きこむ。おれの指の間で、乳首がびっくりするほど長く勃起している。

「わたし……病気かもしれません……」

 心配そうに眉を寄せて一子ちゃんはつぶやいた。

「こんなに胸の先が大きくなるなんて……」

「あ、それ、おれと一緒だ」

 おれの股間も、当然のことながら、大きくなってしまっている。

「まあ……」

 一子ちゃんがおれの股間を見て目を丸くする。

「また、腫れてしまったんですね……かわいそうに……痛くありません?」

「ち、ちょっと痛いかも」

 おれは正直に答える。もう、固くなって、お腹にくっつきそうなほど反りかえっているのだ。

「ねえ、一子ちゃん、前みたいに、撫でてくれる?」

「あ、はい。わかりました」

 一子ちゃんがおれの股間に指をからませてきた。

 くおう、気持ちいいっ!

 懸命な表情でペニスをこすってくれている。しなやかな指が、亀頭のくびれの部分を刺激する。

「痛みはやわらぎましたか?」

 おれは、顔をしかめながら――気持ちいいからどうしてもそうなってしまうのだが――くぐもった声をもらした。

「うあっ……いてえっ」

 おれは洗い場にあおむけに倒れた。一子ちゃんが狼狽する。

「だ、だいじょうぶですか?」

「痛くて……だめかも……」

「あ、あ、わたしは、どうすれば」

 おれの演技に、一子ちゃんが狼狽する。

「前みたいに舐めてくれると治るかも……」

「そうですね! そうします! 膿が出れば治るんですものね!」

 希望を見出したかのように、一子ちゃんの表情が明るくなる。そそり立ったおれのペニスにためらいなく顔を寄せる。かわいい唇がひらいて、赤い舌がのぞく。

 ぬちゅ。

 十五歳の女の子の口腔粘膜の柔らかさと温かさがおれを包みこむ。

 ちゅぬちゅぬ、ちゅい。

 たどたどしく一子ちゃんが舌を動かしている。むろん、それがフェラチオという性技であることなど、一子ちゃんは知らない。腫れた患部を口で癒しているのだと思っているのだ。

 懸命な横顔が愛らしくてたまらない。いつもなら、この顔を見ながらイッてしまうのだが、せっかく今日は遠出してきたのだ。これで終わってはもったいない。

 おれはあえて一子ちゃんに注文をつけることにした。

「だめだよ、一子ちゃん……そんなんじゃ膿は出ないよ。もっと、舌をからめたり、吸ったりしてよ」

「ほふひははひひへふは、ひゅふひひはふ?」

 おれを見ながら、一子ちゃんが何か言っているが、よくわからん。たぶん、やり方を教えてくれと言っているのだろう。

「おれが一子ちゃんのを吸うから、同じようにやってみてよ」

 おれは言いつつ、一子ちゃんの腿に手をかけた。

つづく


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