夜が来る。
終わってほしくない一日ほど、足早に去っていく。
おれとまゆはさらに東京から離れていた。
隠れ家をさがす逃亡者の面持ちで、名もない温泉町まで流れていた。飛び込みで入った旅館は、日曜の夜であるせいか、ガラガラにすいていた。部屋は二間つづきの和室で、裏手はどうやら斜面になっていて、山につづいているようだった。明るければ、それなりの景観だろう。
天野夫妻がどのような手をうっているか、わからない。警察へ捜索願いを出している可能性もありえる。
今日のところは様子をみるかもしれないが、日曜の夜になってもアパートへ戻らなかったことを知れば、ほぼ確実に動くだろう。彼らはおれとまゆの関係を知っている。知っていて、引き離そうとしている。
浴衣に着替え、露天風呂へ向かう石畳の坂道を、ころころと下駄を鳴らしながら歩いてゆきながら、まゆが言う。
「あした、学校どうしよう」
すこし不安そうな口調だ。
「いいんだよ、休んだって」
「でも、おにいちゃん、会社は?」
「――いいんだ、それも……」
職は失ったも同然だ。男の気楽な一人暮らし、貯金もろくにない。いま財布にあるなにがしかと、銀行にある雀の涙ほどの預金が全財産だ。両親をなくし、実家といえるものもない。
「ごめんな……まゆ」
思わず謝罪の言葉が口をついた。
まゆがぎゅっ、とおれの手をつかむ。
「どうしてあやまるの?」
大きな目でおれを見あげている。
「あやまったらだめだよ。おにいちゃん、なにも悪いことしてないもん」
その言葉が胸を貫いて、つい涙腺がゆるんでしまう。
泣き顔なんか見せられない。おれは胸を張って、まゆの手をふり回した。
「よし、露天風呂まで走っていくぞ!」
「うん!」
露天風呂は混浴だった。
客はやっぱりほかにいなくて、貸しきり状態だ。
アパートの小さな浴槽では味わえない解放感にまゆもはしゃいでいた。もうすっかり水恐怖症は克服したようだ。
まゆの身体を隅々まで磨きたててやる。
こびりついていた潮のなごりをお湯で流す。ピンク色に染まった肌がつるつるしている。
しゃがませて、あそこもきれいに洗いあげた。まゆはくすぐったがったが、指がいやなら舌でやるぞ、と脅しておとなしくさせた。まゆはくつくつ笑いをこらえながら、じっとしていた。
「こんどは、まゆの番だからね」
石鹸を湯で流し終わると、まゆがおれに迫ってきた。
泡をたっぷりつけた手で、ペニスをしごきはじめる。
「おいおい、なんだよ、ほかのところは洗ってくれないのか」
「だって、おにいちゃんのこれ、好きなんだもん」
まゆの手のなかで、おれのものが固さをましてゆく。
「おもしろおい。きゃは」
おもちゃを弄ぶようなまゆの指の動きがおれのペニスを刺激する。
大きく、なる。張り詰めて、いく。
「すごおい。これが、まゆのなかに入ったの?」
眼を丸くしている。頬が赤くなっているのはお湯の熱のせいばかりではないのだろう。
「そうだよ」
「また、吸ってあげる」
言うなり、まゆが先端を口にふくむ。ちゅば、ちゅば、と音をたてて吸いはじめた。
海のなかで戯れたのより、ずっと本格的なフェラチオだった。
「う……うまいよ、まゆ」
教えたわけではないのに、まゆは積極的に舌を動かした。小さな舌先が亀頭の張りだしを刺激する。
まゆは上目使いにおれを見ていた。目が笑っていた。気持ちいい?と訊いてきているようだった。
奥まで突っ込むことはできなかった。まゆの口は小さすぎるのだ。先端を含んで舌でつつむだけで精一杯だった。それでも、まゆの舌の奉仕は鋭い快感をおれにもたらした。
おれは、まゆの口のなかで精液をもらしていた。
「ん……なんか出た」
まゆが、口をあけた。ペニスの先端と、まゆの唇との間に、粘液の糸の橋ができる。
「まゆ、飲んでごらん」
「うん」
まゆは眼を閉じて、おれの精液をのみくだした。白いのどが動き、おれの子種を体内へと取りこんでいく。
白い、毒。
おれはまゆに毒を注ぎつづけている。そして、そのことを罪だと思いながら、やめることができないでいる。
「まゆ、おしりをこっちに向けて」
洗い場に手をつかせ、おしりを掲げさせる。
おれは、まゆのヒップの山を左右にひらき、桜色のアヌスを舌でほぐしはじめた。
「あん、おにいちゃん、そこ、おしりだよう」
「ここも、気持ちいいんだよ、まゆ。おれのを口でしてくれたお礼だよ」
「でも、でも……ああっ」
まゆが洗い場に顔を伏せてもだえた。快感を得ているのだ。
肛門の粘膜を舌でほじくり、その味と香りを満喫する。いつか嗅いだような香り。まゆの匂いだ。
「んんん……ふうん」
鼻を鳴らしている。舌が奥をほじると、さらにそれが強くなる。
あそこがすごく濡れている。
アニリングスは、少女の身体には強烈すぎる快感を与えたのかもしれない。まゆは、ほとんど朦朧としているようだ。
「まゆ、おしりに指をいれてあげるよ」
おれは、中指をまゆの愛液で濡らし、それからアヌスに差し入れた。
「くああ……あっ」
身体が硬直する。おしりがぷるぷると震え、括約筋がおれの指を締めつけてくる。
「すごいよ、まゆ。指がちぎれそうだ」
「おにいちゃん、怖いよ、まゆ、怖い」
すがるような声。まゆは、いきかけている。それが、わからないから怖いのだ。
「まゆ、力をぬいて、楽にして。おれがそばにいるから、安心して」
「おにいちゃん、ずっと一緒にいてくれる? まゆのそばに」
「ああ」
「よかった……」
まゆの身体が柔らかくなる。おれは、まゆのおしりに指を入れたまま、ペニスを膣に挿入した。
「あふっ、うあっ」
満たされた声をまゆがあげる。
おれは、指と腰を同時に動かした。中指は第二関節のところまで埋まっている。まゆのおしりをかきまわしながら、たまにピストン運動をさせる。
腰もゆるやかに円運動させる。
指がペニスの動きを感じ、ペニスも指の存在を感じる。
「あひっ、ううっ、あっ、あっ」
まゆの声が高くなる。そして、間隔も短くなる。
「あうっ、うっ、おにいちゃ……うっ、ううううう」
長く鳴いた。
果てていく。まゆが、その扉をひらいて、あたらしい階梯をのぼりはじめる。
ぐったりしているまゆを、おれはだきあげて、湯船のなかに導いた。
はあ、はあ、と荒い息をして、ぼうっとしているまゆにおれはくちづけた。