えーと、以前、「ハートキャッチいずみちゃん PERFECT Volume.1 ハート編」。サブタイトルリスト についてつらつら書きましたが、下巻もすでに発売になってます。
「ハートキャッチいずみちゃん PERFECT Volume.2 キャッチ編」! トラウママンガ・ブックス(英知出版)
今回も860ページくらいある、まるで辞書のよーなぶ厚さです。
なにしろ、「ハートキャッチいずみちゃん」といえば、少年誌にはあるまじきH描写(セックス描写ではない)で「伝説」になったマンガ。特に、シリーズ後半のエスカレートぶりは生半可ではありません。その全容がついにこの「キャッチ編」で明らかになるわけです。
個々のエピソードについては別表(サブタイトルリスト2)にまとめましたので、そちらをご覧いただくとして、このシリーズをざっと概観していきましょう。
前回のコラムでも書きましたが、連載当初は、 ヒロインの原田いずみは「脱ぎキャラ」ではなく、むしろ、女の子大好きの暴走少年・明智菊丸の心を読んで、その行動を未然に防ぐ立場だったわけです。いわば、いずみ視点から、菊丸の「男の子としての欲望」を、マンガ的な比喩を使って描き出す、という手法を取っていたわけです。そのため、いずみが脱がされるのは菊丸の妄想のなかだけで、現実世界では、せいぜい下着まで、それ以上露出するとしても、乳首は隠れている、そんな感じでした。
それが、もうひとりの女の子キャラ、千春の登場以降、バランスがかわっていきます。千春は菊丸のことが好きで、もうノーガードなわけです。菊丸のセクハラを受け入れてしまう。それにともなって、菊丸の行動はどんどんエスカレートしていく。つまり、菊丸の自由度がアップして、彼の視点で物語が進むようになっていく。菊丸視点の「女の子の裸が見たい」「エッチなイタズラをしたい」という欲望がストレートに描かれるようになっていったのです。
そして、その傾向が明確になっていく過程で、いずみのキャラとしてのスタンスも変化します。すなわち、「主人公」から、「菊丸の第一ターゲット」に移行していく。すなわち、いずみの裸も解禁される。同時に、作中における「心を読む」回数は減っていき、「ハート編」の最後の方では、まったく心を読まなくなります。
つまり、「ハート編」の終わりあたりで、「ハートキャッチいずみちゃん」のHマンガとしてのスタイルは完成したわけです。
さて、「キャッチ編」において、そのスタイルがどのように進化・発展していったかを見ていきましょう。
最初のうちは、菊丸はただ裸が見たい、とか触りたい、という目的で行動していました。それが、すこしずつ、「女の子を感じさせたい」という方向にシフトしていきます。それは、描写において、「ぴっくぅ〜ん」だとか「ああ〜ん」だとかの効果音やあえぎ声が増えていくことで確認できます。
さらに、それが進行して、「ほかの人間がいるところで」裸にしたり、エッチなイタズラをしたりする描写が増えていきます。
たとえば、いずみたちの乳房をモグラ叩きのモグラ人形だと思いこませて他の人間の目の前にさらしたり(キャッチ編8「危険な温泉旅行」)、たくさんの観客の前でいずみにトップレスで腹踊り(乳踊り?)をさせたり(キャッチ編14 「ドッキン!!はらおどり」)、そういった趣向の話が後期に入ると非常に多くなる。
これは、つまり、「羞恥プレイ」の要素が加わったのです。
少年マンガの表現上の制約から、過激すぎる性描写はできません。それでも、なんとかエッチ度を高めなければならないという要請から、おそらく「羞恥プレイ」の要素を組み込んでいったのでしょう。
しかし、それでもマンネリ化は避けがたく、どうしても描写は過激になっていかざるを得ませんでした。
その結果、それまでは上半身中心だった「菊丸の興味」が、下半身へと移っていきます。マンガの描写においても、乳首いじりは前菜で、股間への責めがメインディッシュになっていったのです。
いわば、ターゲットが、いずみの胸から、「アソコ」に移動していったわけです。
シリーズ後半、とくに終盤に近づくにつれ、いずみや他の女の子が大股開きさせられるシーンが頻出します。もちろん、そのものズバリは描けないのですが、かなりきわどい描写が増えていきます。
その頂点が「人質、大脱出!!」(キャッチ編18)でしょう。この話においては、いずみは下半身を徹底的に責められ、ついには自分から腰を動かしてしまいます。もう、ほとんどセックス描写に近いものです。
ここまで描いてしまっては、もうそのものズバリしかありません。いくところまでいってしまったのです。
この話のあとも連載は半年くらい続いたようですが、さほどの盛りあがりもなく最終回を迎えてしまいます。最終回などは、非常に長く続いた連載のわりに、驚くくらいあっさりとした終わり方です。この間、作者になにがあったかとかは、ちっとも知らないんですが、なんとなく、慌ただしい幕引きだったのではないかという気がします。
いろいろ書きましたが、キャラクターのかわいらしさ、Hのシチュエーションの豊富さ、そして描写の過激さなど、いずれをとっても、少年誌に掲載されたマンガとしては希有な作品であることは確かです。それが、こうした形で復刊されたことは、たいへん嬉しいことです。
ああ、おお、「ハートキャッチいずみちゃん」よ、永遠なれ!