買いました。トラウママンガ・ブックス「ハートキャッチいずみちゃん PERFECT Volume.1」。サブタイトルリスト
このVolume.1はコミックスの前半部分(4巻めくらい?)までが収録されている。855ページもある分厚さで、カラー口絵のほか、書き下ろしもある。もっとも、この書き下ろし、作者のお宅訪問というどうしようもないモノで、これならばなかったほうが……という程度のシロモノ。まあとにもかくにも、いずみちゃんの艶姿が堪能できるのであれば、多少の問題には目をつぶろう。
というわけで、読み始めてみたのだが、意外や意外。脱ぎまくっていると思ったいずみちゃんは、連載当初は脱がないキャラだったのだ。
いや、正確に言うと脱いではいるのだが、肝心なところは手やタオルで隠している、というふうに、裸そのものはなかなか見せないのだ。もっとも、男主人公の菊丸の妄想シーンで脱がされてはいるのだが……。
いずみちゃんの胸が本当の意味で(菊丸の妄想ではなく)露出したのは、なんと第24話「スリル満点・スイカゲーム」においてである。この作品が掲載されていたのは月刊マガジンなので、実に2年もの長期間にわたり、いずみちゃんはその肌を守りつづけたことになる。むしろ驚嘆すべきガードの固さである。
連載初期においては、いずみが主人公だったせいか、いずみに対するイタズラの度合はあまり激しくなく、どちらかというと、ゲストキャラの女の子が菊丸の餌食になるというパターンが多かった。また、いずみの特技(?)である「心を読む」シーンが頻繁に出てくる。絵的な露出も下着レベルまでがほとんどで、おとり捜査の回(第14話)で、パンツが脱げてしまうのは、その当時の作例としては過激な部類に入る。
内容がエスカレートしていくのは、第19話で千春がレギュラーキャラとして登場してからだ。
菊丸に好意を抱いている設定の女の子が現われたということは、菊丸のイタズラを許容する受け皿ができたということだ。すなわち、「受けキャラ」である。それに対していずみが「ツッコミ」となることで、菊丸を中心にした三角関係が完成した。このバランスは実に具合がよかったと思われ、以降、いずみ・千春・菊丸は三人セットで行動するようになる。
しかしこの結果、菊丸が自由に動ける環境ができあがり、実質の主人公になっていく。連載当初に比べ、いずみが「心を読むシーン」はどんどん減っていく。つまりそれは「視点」がいずみから菊丸に移ったことを意味する。
第22話「車は急に止まらない!!」では、菊丸が車のワイパーにいずみのブラジャーを引っかけて遊ぶというシーンがある。車が暴走しているという緊急事態にあるにもかかわらず、そんなことにはおかまいなしで女の子にイタズラをする、菊丸の弾けっぷりがこのあたりから顕著になってくるのだ。パンツに頭に突っ込むなどという過激な表現が出てくるのもこの頃からだ。
それでも、まだ、いずみも千春も乳首は出していなかった。乳首が出てくるのは菊丸の妄想の中でだけだった。
だが、24話でついに、いずみのバストが解禁される。
それ以降は歯止めを失ったかのように表現が露骨になっていき、メインが「乳首責め」に移行する。性行為はNGの少年誌においては、そのへんが表現の限界だろう。(もっとも、さらに先の話では、その限界をも突破してしまうのだが……)
初期の、スケベだがけっこう硬派なところもある、という菊丸のキャラもいつしか変質し、スケベのためなら生命の危機さえいとわない、しかも超絶のテクニシャンになってしまっていた。
いずみの菊丸に対する感情にしても、連載当初は「ちょっと気になるクラスメート」という位置づけで、菊丸にヤキモチをやかせようと挑発することさえあったのに、中盤以降はあたかも菊丸にイタズラされるために登場するようになる。毎回、千春とともに、菊丸と旅行したりするようになるのである。
つまりこれは、当初の「テレパシー能力を持つ女の子・いずみの視点から男の子の心をのぞき見る」という作品の趣向が、「菊丸がひたすらエッチなイタズラをして、女の子を感じさせる」というものに変質したということだ。むろん、後者のほうが読者(男の子が多い)の欲求に合致しているので、人気は中盤以降上昇したと推測される。
エッチ描写は、回を重ねることにエスカレートする。刺激には読者はすぐに慣れてしまうからで、バストいじりが解禁されれば、毎回それが求められるし、さらにそれが続けば飽きられてしまう。となると、今度は下半身に焦点が移動していくことになり、果てはセックスするしかなくなってしまう。少年誌に掲載するマンガとしては、リミットオーバーだ。
中盤以降の作品を収録することになる「ハートキャッチいずみちゃん PERFECT Volume.2」は、したがって、表現が過激になっていく過程を楽しめるはず。これはますます目が離せないという感じだ。
復刊ドットコム(サンプルページあり)