1.概説

くりいむレモンがくれたモノ……

 エロアニメというジャンルは、このシリーズによって始まったと言っても過言ではありません。

 もしかしたら、それ以前からエッチなシーンのあるアニメはあったかもしれません。

 ですが、このシリーズほど成功したものはなかったはずです。

 「くりいむレモン」が成功したというのは、単にセールスがよかったという意味だけではなく、人気漫画家を巻き込んだり、声優人気が盛りあがったりして、ファン層が表に広がっていったことも含んでのことです。

 つまり、メジャーになった。メジャーと言い切るのもちょっとアレな気もしますが、アダルトビデオのジャンルというよりも、一般のアニメやコミックのファン層に近いところ――まあ端的にいえばオタク――のジャンルに近くなった。

 それが意味するところは何かというと、活発なファンの存在によって、一般メディアとの距離が近づく、ということです。

 現に、「くりいむレモン」の人気が高まったことで、メディアの注目が集まり、声優のユニットをアイドルとして売り出したり、人気声優がラジオ番組を持ったり、ということが起こりました。

 それはテレビへの露出にもつながり、アダルトビデオを本来は見ることのできない年齢層にも情報が広まっていくことにもなりました。へんな話ですが、エロアニメが性的な知識の入り口になった人も多いのではないでしょうか。そのきっかけを作ったのは「くりいむレモン」の成功だったと思います。

 「くりいむレモン」の功績でもうひとつ強調したいのは、エロのジャンルをほかのジャンルのエンタテインメントとつなげたことです。

 たとえば、ファンタジー。あるいはSF、ホラー。学園ものなどもそうかもしれない。さらに言えば、既存のアニメのパロディといったものもあります。

 ふつう、実写のアダルトビデオにはストーリーらしいストーリーがないものがほとんどです。(ストーリーがあっても、たいていはつまらない)

 AVはヌキの道具に過ぎないという割り切りがあることと、実写でストーリーのあるものを作るのはセットなども含めてたいへんコストがかかってしまうことがその理由だと思います。

 しかし、アニメの場合は、ただセックスシーンをつなげただけでは、魅力がありません。きちんとした世界設定のもと、魅力的なキャラクターが、おもしろいストーリーのなかで動かないことには、セックスシーンの説得力もなくなってしまうのです。実写では、女の子は間違いなく映像のなかに実在しています。そんな女の子が、ただセックスして見せるだけでも事は足ります。でも、アニメの女の子は絵があるだけでは存在できません。ある世界のもとで、役割が設定されて、初めて存在できるのです。

 ですので、エロアニメは必然的にストーリーを持ちます。そして、そのストーリーは、一般のアニメやコミックで人気があるものが選ばれます。ファンタジーやSFや格闘アクションや学園コメディやホラーやバイオレンスや……その多様なストーリーとエロシーンがうまく合体した結果、そこにはまで存在しなかった魅力的なエンタテインメントが誕生することになったのです。

 「くりいむレモン」の成功で、多くの業者がこのジャンルに参入しました。その結果、傑作も生まれたし、どうしようもない駄作もその数倍(数十倍? もっと?)量産されました。

 今はエロアニメもなんか斜陽らしいんですが、それでもたくさんの新作がリリースされ、それなりにジャンルとして成り立っているようです。どこのレンタルビデオ屋にもエロアニメの棚って、ありますよね? つまり、このジャンルにはまだニーズがあり、それでご飯を食べている人もそれなりにいる、ということです。

 現在のエロアニメのありようが、ひとえに「くりいむレモン」に起因する、と言うつもりはありません。おそらく、現在のエロアニメの方向性については、エロゲーとの連繋を無視しては語れないような気がします。現在のエロアニメは単独のジャンルとして確立していると言うより、エロゲーなどと補完関係にあるのではないかな、という気もしています。

 ですが、そのきっかけを作った、という功績は確かにあるはずですし、また、リリースから十何年も経っているビデオアニメ作品が、今でも入手することができる、見ることができる、ということ自体、賞賛されて然るべきです。

 まあ、難しいことはおいといて、まずは「くりいむレモン」がくれたものについて思いを馳せつつ、個々の作品を振りかえってみたいと思います。

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