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「なかなかよくできていますね。でも、ちょっと目尻の角度がちがうようです」
ルリがルリの顔をさわっていた。正確には、ナデシコの制服を着たルリが、体操服にブルマのルリの立体映像の顔のあたりを調べていた。
「ルっ、ルリルリ!?」
「その呼びかたはやめてください」
眉ひとつ動かさずにルリは言った。
「そーよ、ルリルリをルリルリって呼べるのはアタシだけ」
ミナトがあらわれた。
その後ろには、肩をふるふる震わせているメグミがいる。
「ア……アキトさんったら……」
「み……みんな? ホンモノ?」
ウリバタケは震え声で聞くまでもないことをたずねた。
「たりめーだろっ!」
右ストレートがウリバタケの顔面を砕く。スバル・リョーコだ。
「ウリリンったら、やーらし」
とはヒカル。
「これがホントの……(いいシャレを思いついたら書きます)」
とはイズミ。
「あんたって人は……」
怒りのあまりそれ以上口がきけなくなったエリナ。
「説明しましょう! ウリバタケ整備班長は、思兼のモニターを遮断していたのですが、思兼のサポート用のサブブレインの回線は見落としていたのです。それをホシノさんが開いて、全艦に放送していたのです。みんなドンドンここに集まっているわよ。女性陣はセクハラに大激怒、男性陣は参加できなかったことに大激怒。特に副長は眼がすわっていたから、気をつけたほうがいい……」
「ユリカぁっ!」
イネスさんの説明が終わらないうちに、絶叫とともにバーチャル・ルームに駆けこんできたのは、副長であるアオイ・ジュンだった。白装束に、抜き身の日本刀を振りあげている。もはや正気ではない。
意識を怒りで灼熱させた人々がバーチャル・ルームになだれこんだ。
三十分は暴風雨が室内を荒れ狂った。
嵐が過ぎ、血圧がさがった人々がバーチャル・ルームを去ったときには、ウリバタケはボロぞうきん状態だった。整備班の連中も似たり寄ったりである。
「……テンカワと艦長は?」
だれかがぽつりと言った。
「さあな……まだヤっているんじゃないか?」
なんとなくウリバタケは答えた。