13

「なかなかよくできていますね。でも、ちょっと目尻の角度がちがうようです」

 ルリがルリの顔をさわっていた。正確には、ナデシコの制服を着たルリが、体操服にブルマのルリの立体映像の顔のあたりを調べていた。

「ルっ、ルリルリ!?」

「その呼びかたはやめてください」

 眉ひとつ動かさずにルリは言った。

「そーよ、ルリルリをルリルリって呼べるのはアタシだけ」

 ミナトがあらわれた。

 その後ろには、肩をふるふる震わせているメグミがいる。

「ア……アキトさんったら……」

「み……みんな? ホンモノ?」

 ウリバタケは震え声で聞くまでもないことをたずねた。

「たりめーだろっ!」

 右ストレートがウリバタケの顔面を砕く。スバル・リョーコだ。

「ウリリンったら、やーらし」

 とはヒカル。

「これがホントの……(いいシャレを思いついたら書きます)」

 とはイズミ。

「あんたって人は……」

 怒りのあまりそれ以上口がきけなくなったエリナ。

「説明しましょう! ウリバタケ整備班長は、思兼のモニターを遮断していたのですが、思兼のサポート用のサブブレインの回線は見落としていたのです。それをホシノさんが開いて、全艦に放送していたのです。みんなドンドンここに集まっているわよ。女性陣はセクハラに大激怒、男性陣は参加できなかったことに大激怒。特に副長は眼がすわっていたから、気をつけたほうがいい……」

「ユリカぁっ!」

 イネスさんの説明が終わらないうちに、絶叫とともにバーチャル・ルームに駆けこんできたのは、副長であるアオイ・ジュンだった。白装束に、抜き身の日本刀を振りあげている。もはや正気ではない。

 意識を怒りで灼熱させた人々がバーチャル・ルームになだれこんだ。

 三十分は暴風雨が室内を荒れ狂った。

 嵐が過ぎ、血圧がさがった人々がバーチャル・ルームを去ったときには、ウリバタケはボロぞうきん状態だった。整備班の連中も似たり寄ったりである。

「……テンカワと艦長は?」

 だれかがぽつりと言った。

「さあな……まだヤっているんじゃないか?」

 なんとなくウリバタケは答えた。

−おわり−