「でけたーっ!」
「わたしもできた、うふ」
あいことはづきがそれぞれ完成品を手にとって、どれみに見せつける。
「なんや、どれみちゃん、まだでけへんのかあ」
「うう、うるさあいっ!」
どれみは針と糸のあつかいに苦労しながら、かんしゃくを爆発させる。
「もうちょっとなんだから、しずかにしててよっ」
「まったくぶっきようやなあ、どれみちゃんは」
あいこは父親と二人暮らしのあいこはがさつっぽく見えるがそれなりに家事をこなせる。裁縫だって得意のうちだ。
はづきにいたっては、自分で洋服を作ってしまうくらいだ。人形用の服をつくるくらい朝飯前。
それにひきかえどれみときたら、もういったい何回針で指を刺してしまったことか。
せっかくのフリルもガタガタだし、ちっとも可愛くならない。
「もうすぐ開店の時間よ。手伝ってあげようか?」
はづきが声をかける。一瞬反発しかけたどれみだが、顔をゆるめて情けない声をだす。
「おねがあい、はづきちゃあん」
自分たちの人形を作ろう、と提案したのはどれみ自身だった。
『ビーバー人形みたいにさあ、洋服とかいっぱい作って、着せ替えられるようにするの。もっちろん魔女のコスチュームもね。どう? あたしたちにあこがれてるちっちゃな子たち、夢中になるよ、きっと』
『へえ、おもろそうやな。けっこうバカ売れして、あたしら有名になったりしてな』
『うふふ、お洋服のほかに、バッグとか、小物も作りましょうよ』
てな具合でトントン拍子に決まったのだ。
まずは一体作って、テスト的に店において、反応をみようということになった。
人形は魔法工作用のねんどをつかった。
まじない用の人形を作るための素材だ。このねんどに、どれみたちの髪を入れてこねると、あら不思議、どれみたちにそっくりな人形ができあがるのだ。いったんできあがると、手ざわりもまるで本物の人間のようにすべすべになる。
『なんか、カンタンだねーっ』
『工作の時間のも、これくらいラクやったらええのになあ』
『でも……ねんどの包装紙になにか注意書があるんだけど……』
はづきが小声で指摘したが、大人の魔女向けの注意書きはむずかしくてどれみたちには読むことができない。折悪しくマジョリカは魔界の寄り合いにでかけている。けっきょく、はづきの疑問は解明されることはなかった。
その文章はこう書かれていた。
《まじない専用。術をかけたい人間の髪をねんどにいれて作った人形にあたえられた刺激は、そのモデルになった人間の身にふりかかります。用途によっては危険なので、注意すること》
MAHO堂は、いつものように閑散としていた。
せっかくの新製品コーナーにもだれも注目してくれない。
「なんでやろか、こんなにキュートやのに」
魔女のコスチュームを着けた三人の人形がむなしく並んでいる。
「やっぱ、宣伝しないとダメなんじゃない?」
どれみが勢いこむ。
「でも……自分たちの人形を売りこむのって、ちょっと恥ずかしい……」
はづきが尻込みするが、思いたったら即実行がどれみの身上だ。さっそくお店の前にテーブルを持ちだして、人形をならべる。
「さあっ、かわいい魔女のお人形はいかが!? 着せ替えもできるよっ!」
たまに通りかかる人たちは見向きもせずに通りすぎていく。
小さな女の子をつれたおかあさんたちは、むしろ足早になっていく。
「ママー、おにんぎょさん」
「おうちにたくさんあるでしょ!」
そんな会話が小声でなされているようだ。
陽がかたむいたが、あいかわらず売れない。
「あかんなあ……」
「店じまいしよっか」
どれみたちがあきらめかけたときだ。
「あのー、すみません、この人形、売り物?」
ぼそぼそっとした声がかけられた。
「はいっ」
弾かれたようにふりむいたどれみの目の前には、小太りで、メガネをかけて、髪の毛がぼさぼさでちょっとアブラっぽく光っている、なんかヲのスジっぽいおにいさんが立っていた。
「手作りの、フイギュアなんだ。よく、できてるねえ」
おにいさんははづきの人形を手にして、そして、はづき自身と見比べた。細い眼がメガネの奥で光る。
「そっくりだなあ。これ、いくら?」
「えっ、あの……」
はづきが詰まった。それをおしのけるようにしてどれみが前に出る。
「はいっ、千円ですう!」
「安いなあ。じゃ、買うよ、こっちも」
あいこの人形だ。
男はサイフから二千円を取りだす。
どれみは唇をとがらせた。
「どうしてはづきちゃんのとあいこちゃんのだけなのよお」
「だって、この人形、服がヘンだよ」
男は、フリルのゆがみを指摘する。どれみは、うっく、とつまる。
「これだけ五百円にしてくれたら、買うよ」
男はにやにやと笑った。
「なんやかんやゆうて、ちゃあんと売れたなあ」
店の後仕舞いをしながらあいこが言った。
「なんであたしのだけ……」
どれみはぶーたれている。半額で買いたたかれたのをまだ根に持っているらしい。
「それにしても……あのおにいさん、女の子用の人形を買ってどうするのかしら」
ちょっと心配そうにはづきがつぶやいた。
「そんなん、きっと妹とかおるんちゃうか?」
楽天的にあいこが言う。そうかなあというように、はづきは首をかしげる。
むろん、彼女たちに、そのスジの方たちの趣味がいかなるものであるか、予想しろというのが無理なはなしだった。
「へえ……すごくリアルだなあ」
男は六畳一間のアパートに帰るなり、人形の服を脱がせた。
部屋のなかは、女の子のフィギュアであふれかえっていた。中には、裸のものや、局部まで作りこまれているものまでふくまれている。
「子供の手作りというからたかをくくっていたけど、なかなかどうして、たいしたもんだよ」
どれみ、あいこ、はづき、それぞれの裸身をみくらべる。
いちばん幼児体型なのはどれみだ。胸はぺったんこ、ちょっとおなかがでている感じ。脚の付け根に隙間があいている。乳首の部分はわずかにふくらんでいて、薄いピンクで彩色されている。
「すごいな、このテクは」
男はつばをのみこんだ。指先でその突起部分をたしかめてみる。
不思議な弾力性があった。
「あっ」
食卓で、どれみは声をあげた。
「どうしたの?」
「んっ? な、なんでもない、ちゃはは」
両親が不思議そうな顔をしてどれみを見ている。
まさかおっぱいの先っちょに電気が走ったから、だなんて言えない。
――なに、これ?
さっきから断続的に胸の先端に刺激がある。
声が出てしまいそうだ。
「さっきからへんよ、どれみ」
母親が心配そうな声をあげる。
「顔が赤いぞ。風邪でもひいたのか?」
父親がおでこに手をのばしてくるのをどれみはあわてて避けた。なんだか、いま、身体を触れられるのはとてもはずかしい。
「へっ、平気だからっ! ごちそうさまっ」
どれみは席をたった。空振りしたかっこうの父親を母親が笑う。
「あの子も年ごろになったのかもね。父親にさわられるの、意識しはじめるのよ」
「おいおい〜」
「なんと、ここまで作りこんであるなんて……」
男は細い目を見開いた。
どれみの人形の股間をひらいている。不思議な弾力性のある素材だ。関節も可動する。
股間には深い刻み目がある。ピンセットでひらくと、ちゃんと中まで作ってある。
「なんというテクだ。信じられない」
なにしろ、まじない用の人形だ。外見は本物のどれみと寸分ちがわない。
しかし、これを少女の手作りフィギュアだと思っている男にとっては驚き以外の何者でもない。
「穴まであるぞ……」
つまようじの先端を差しこんでみる。
入り口に抵抗感がある。
それがまるで処女膜であるかのような錯覚を男は持った。
股間が屹立している。
男はつまようじで人形の股間をいたぶりながら、自分のモノをしごきたてはじめた。
「んうううっ、なにい、これえ」
ベッドの上でどれみは身体をよじらせた。
抱きまくらにしがみついて、股間をまくらに押しあてる。
あそこがじんじんする。まるで固いものでかきまわされているかのような――
どこか薄物一枚へだてたところでこすられている感じがする。そのむずがゆいような感覚が、気持ちいい。
「やだ、ヘンに……ヘンになるう」
どれみは自分の指をパンツのなかに入れていた。そんなところ、触ろうと思ったこともなかったのに。
ぬるぬるしている。そしてとても熱い。
「あんっ、ああんっ、たすけてえ……」
どれみは中指を自分の体内にうずめていた。それがどういう意味を持つ行為なのかも知らないままに、絶頂の坂を駆けあがっていく。
その瞬間、頭のなかで歓喜のメロディが鳴りひびいた。
あいこは父親とお風呂に入っていた。
どれみやはづきと話したときすごく不思議がられたが、あいこにしてみればそれがふつうなのだ。
「おう、あいこ、背中ながしてくれ」
「まかしとき」
広い父親の背中を思いきりこすってやる。それが楽しみなのだ。
その日もそこまではいつも通りだった。
だが。
「あれ」
おしりのあたりに違和感があった。
「どないした」
「んにゃ、なんでもない……」
あいこはごまかしたが、おしりのあなの周辺がむずがゆい。あなをひろげられて、指かなにかか出入りしているような。
そればかりではない。
おしっこがでるあたりもムズムズしはじめた。まるでねっとりとしたものでつつまれているかのような。
「あひっ……うう」
あいこは父親の背中に抱きついていた。ぺったんこの胸をおしつける。乳首だけが立っている。
「おい……あいこ……」
「おとうちゃん……へんなんや……うち、へんなんや……」
あいこの手が父親の股間にのびる。
せっけんの泡がたっぷりついた手で男根をにぎりしめる。
「なっ、なにすんねん、あいこ」
「しらへん、わからへん、勝手に動くんや……ああ……気持ちええ」
「はっ、はっ、はっ」
男はあいこの人形の股間を舐めては、人形の手を自分のペニスのカリの部分にこすりつけた。ぺろぺろ、カリカリ、ぺろぺろ、カリカリ、という感じだ。
「ああっ、なんで、こまかく指が動くんだ、この人形は!?」
男はたまらなくなって、あいこ人形の顔にペニスをこすりつけた。
「はぷうっ、うう」
「あ……あいこ……やめんか……」
愛娘が男根をくわえている。
舌をうごかしている。
たまらない光景だ。前立腺にひきつれに近い刺激が走る。
「うちかて……なんで……わからへんけど……おいしい」
「あ、あいこ……」
「おとうちゃん、がまんしいひんで、ええよ。うち、子供やけど、おとうちゃんが気持ちよかったら、うれしいねん」
あいこは父親の男根を深く飲みこんだ。
「あっ、あいこっ!」
父親はあいこの頭をつかんで、はげしく腰をうごかした。
射精に至る動きだ。
びゅっ、びゅっ、びゅっ。
男の白い粘液があいこ人形の顔を汚す。
「ああ……すごい人形だ。二回もオナニーしちまったい」
ティッシュでまず人形を清める。自分のモノも拭いて、ティッシュを丸め、そのへんに投げる。その部屋の床に同じような紙屑がいくつもころがっている。
「さて……」
男ははづき人形を手にとった。
「この人形、いったいどういう仕組みなんだろうな」
モデラーとしての興味がわいてきたのか、男の顔が引きしまった。
「関節埋めこみ式としても、この自由度はすごいな。ちょっと見てみるか」
男はカッターナイフをとりあげた。
翌日。
「あれえ、はづきちゃんお休み?」
どれみはすっとんきょうな声をあげた。