「さあ、しゃぶれよ」
なぶるように亀頭がこすりつけられてゆく。
顔をそむける気恵くん――だが、チョコさんの手に引き戻される。
さらに鼻のあたりを手でふさがれる。鼻で息をさせないようにするためだ。
呼吸のために、気恵くんの口元が少しゆるむ。そこに牡のシンボルが浸食していく。
「う……んんんん……っ」
鼻声とともに気恵くんの唇が動く。呼吸するためなのだが、まるでチョコのペニスに奉仕しているかのように見える。
「ほうら、悪あがきはやめて、くわえろよ。ああ?」
チョコさんが気恵くんの顔を固定して、腰をぐっと突き入れる。
「んぶぅっ!」
ついに――
気恵くんは陥落する。
こじあけられた唇に、ペニスがねじりこまれる。
うわあ……
あごがはずれそうなくらいに大きく開いた口に、巨根が出たり入ったりする。
「う……むぅ……」
気恵くんの口が犯されている。残酷な光景だ。
レフェリーのやつ、調子にのって、気恵くんの乳首を指でひっぱったり、つぶしたり、やりたい放題だ。ワレメもチンポでコスコスしていやがる。
気恵くんの顔が上気し、眉間にしわ寄る。唾がわいているのか、唇の端からたれ落ちる。
「へっへっへっ、どうだ、うまいだろ? 極太ポッキーを味わいな!」
たしかに、真っ黒いチョコさんのペニスはポッキーに似ていなくもない。まあ、太すぎるが。
じゅぷ、じゅぽ、音をたてながら強制フェラが進行する。
「ひゃはは! 嬢ちゃんのおクチ、気持ちいいぜえっ! もっと舌を使えよっ!」
気恵くんはチョコさんの巨根を頬張りつつ、観念したように目を閉ざした。
ポッキーのペニスをしゃぶりたてる。抵抗は無駄だと悟ったのか。
「おほっ、おまえ、経験あるな? うまいじゃないか」
そりゃあそうだ。舌さばきはレスラーの大事なテクニックだ。しゃべれないレスラーはブレイクできない。だから、おれは夜な夜な気恵くんの舌がなめらかになるように特訓したのだ。
むろん、お返しにたっぷりナメナメしてあげたぞ。
そんなことはともかく、だ。
おれが仕込んだフェラテクで、気恵くんはポッキーを逆に追い込んでいく。さすがは天性のレスラーだ。
じゅぷっ、じゅぽっ、ぐちゅっ。
巨根を半ばまで飲み込みながら、気恵くんは舌と唇と、おそらくは歯までも使って、ポッキーのペニスを愛撫している。
レフェリーの手で乳首をつままれ、引っ張られ、クリトリスをペニスでコスコスされながらも、がんばっている。
もうかなりエロい気分に気恵くんもなっているようで、表情が悩ましげだ。その表情にフラッシュが集まる。そのものズバリよりも、せつなげな表情の方がそそるらしい。
「ん……ふぅっ……んん……」
「おっ……おお、いいぜ……いきそうだ」
百戦錬磨のチョコポッキーが中学生にリードされている。だが、ポッキーはそれにはかまわず、腰の律動を速めていく。
「いくっ、いくっ! 出すぜ、飲めよ……っ……おおっ!」
ビクンビクンと腰を振り、射精する瞬間――
がぶっ!
びぴゅっ!
悲鳴と放出はほぼ同時だった。
「ぎゃひぃ!」
チョコポッキーが悲鳴をあげる。
股間を押さえて飛びのいた。
「こ、こいつ、噛みやがった!」
さすがに噛みちぎるほどではなかったようだが、チョコポッキー自慢の逸物に歯型がついていた。
「そ――そんなきたないもん、口に突っ込むんじゃねーよ!」
白い粘液を汚らわしそうに吐き出しながら、気恵くんが叫んだ。
「レ、レフェリー、や、やっちまえ! そいつをファックしてしまえ!」
ポッキーがわめく。本当なら自分で突っ込みたいところだろうが、歯型から血がにじみ、へなへなになってしまっているのだからしょうがない。
その声に応えてレフェリーが気恵くんを押し倒そうとするが、気恵くんもむろんおとなしくはしていない。懸命に抵抗する。
業をにやしたチョコポッキーも加わって、気恵くんをマットに押さえつけた。
「くっ……あっ! 離せ!」
小ぶりな乳房を揺らしながら、気恵くんがもがく。だが、両腕をチョコポッキーに押さえ付けられてしまった。
レフェリーが気恵くんにのしかかる。
このままでは、気恵くんが衆人環視のなか犯されてしまう!
レフェリーのペニスが気恵くんのワレメの上をこすった。
「やだ! 入れないで!」
粘膜同士がこすれてぬめりあい、いまにも入ってしまいそうだ。
「いやだぁ! ゆういちぃい!」
「はーい」
おれは思わず返事をした。
しばしの間。
「ゆういち?」
疑問形だな。
「はいい」
おれは答えた。
下から気恵くんがすごい眼でにらんでいる。
あう。
サングラスと付け髭が滑り落ちた。ライトのせいで汗だくなのだ。
「ゆ、う、い、ち、い、ぃ?」
疑問形が激怒形に変化。
おれは、気恵くんに笑いかけた。説明をこころみる。
「あのさ、控え室で鬼畜軍団の悪だくみを盗み聞きしてさ。気恵の先輩たちを守ろうと思って……」
「ぜんっぜん、守ってなかったじゃん! 鬼畜軍団の手伝いしてたじゃん!」
「まあ、なんつーか、その場のノリっつーか、客の反応?が、楽しくて、ついさ」
「あたしのこと犯そうとしたのも、ノリかよ!」
「こ、これは、チョコさんからおまえを守ろうとして、いろいろやってるうちにこんなコトに――」
つぷっ。
亀頭を気恵くんのオマンコにもぐりこませる。
あ、気持ちええ。
「とかなんとか言いながら、入れるなーっ!」
気恵くんがキレた。やばい、殺される。
どうせ死ぬなら腹上死がいい!
ずぶううっ! 奥まで突っ込んだ。
「ば、ばかーっ!」
気恵くんが絶叫し、跳ね起きた。
すげーパワーで、チョコポッキーが吹っ飛ぶ。
でも、おれとはまだつながっている。そのままのかたちで。
「こ、の、ば、か、や、ろ、お、っ」
回転する。ジャイアントスイングだ。
ち、ちんぽ、折れるぅ……!
無理な角度で刺さっているから、根元からポッキリいきそうだ。それでも、気恵くんの膣はぎゅっと締まって、おれを解放してはくれない。
気持ちいいのと痛いのと、回転で目が回るのとがいっぺんにおそってくる。
「ゆういちの、バカチンー!」
女の子にはあるまじき暴言を吐きながら、気恵くんはおれをぶん回し、よろよろと立ち上がりかけのチョコポッキーに叩きつけた。
ごぎょ。
おれの頭とチョコさんの頭が壮絶な音をたてて激突した。
その瞬間、おれのちんぽが気恵くんから抜けた。びゅっ! スペルマがはじけ飛ぶ。
これは快感を超えてるね。くせになりそうだ。
半ば気絶状態でチョコポッキーと折り重なる。不本意だが、しかたがない。
おれが気恵くんからキッツいおしおきをうけていたとき、リングの一角では、もうひとつのクライマックスが訪れようとしていた。
「ああっ! いく、いく……いっちゃう!」
ほのかサマがイキそうになっている。タッグパートナーの婚約者に生姦されている。
「だ、だすよ、ほのかの中に思いっきり出すよ!」
「ああん、出して! ほのかのオマンコにたっぷり出してぇ!」
清楚なほのかサマの乱れっぷりに、観客はむろん、デスピオンやタンカーまでも固唾を飲んで見入っていた。
「うっ、出るっ!」
イケメンがうめき、尻を震わせた。ほのかサマの中に射精しているのだ。
「ああああっ! あついのがおなかの中にぃ……いくぅううう!」
ほのかサマが絶叫して、気をやる――と見えたその瞬間だ。
「なぎさ、いまよ!」
ほのかサマが声をはりあげた。
なぎさサンをバイブ責めしていたタンカーに隙ができていた。ほのかサマのイキっぷりに気を取られていたのだ。
「でえっ!」
なぎさサンのキックがタンカーの顎にヒットする。
「なにっ!?」
デスピオンが動くより早く、ほのかサマがデスピオンの腕を振りほどいていた。
イケメンくんはほのかサマに蹴飛ばされてマットの上に転がっている。
立ち上がったほのかサマは、体勢が整っていないデスピオンにパンチとキックを浴びせかけた。
「き、きさま、イッたんじゃ……」
防戦一方のデスピオンがうめく。
「おあいにく。藤ピーの粗チンじゃわたしを満足させるなんて無理よ」
股間から白い精液を垂らしつつ、ほのかサマが婉然と笑った。
「そ……そんな」
呆然としているのはイケメンくんだ。
「ほのか、人の婚約者を粗チン呼ばわりするのはひどいんじゃない?」
タンカーをボコりつつ、なぎさサンが唇をとがらせる。
「もっとも、もう、元・婚約者だけどさ」
その言葉に衝撃を受けたのか、うずくまっていたイケメンくんが顔をあげる。
「な、なぎさちゃん、ぼくが悪かっ……」
その顔面に。
なぎさサンとほのかサマのリングシューズが同時にめりこんだ。息ぴったりの同時攻撃、後ろ回し蹴りだ。
「聞く耳もたん!」
「ばかな男……!」
イケメン婚約者はリング下に投げ捨てられた。もはや用済みだ。
「いくよ、ほのか!」
「オッケイ! なぎさ」
全裸のシャイニング・プリンセスが手をつなぎ、回転する。ほのかサマが支点になって、カタパルトのように、なぎさサンを射出する。
コーナーに押し込まれていたタンカーとデスピオンにラリアートを叩きこむなぎさサン。さらに、すかさず走り込んできたほのかサマがエルボーの追い打ちだ。
よろけたタンカーをなぎさサンが、デスピオンをほのかサマが、がっちりと捉える。
同時にDDTが炸裂する。マットにのびる二人の巨漢レスラー。
そこに転がり込んできたのが、かく言うおれとチョコポッキー、というわけだ。
なぎさサンとほのかサマ、そして気恵くんの視線が交錯する。
「いくよ、ほのか!」
「決めるわよ、気恵!」
「はい、先輩!」
三人は同時に動き、それぞれ一番近いコーナーポストにのぼる。
そして、計ったように跳躍する。
なぎさサンはフロッグスプラッシュ。カエルの跳躍のように空中にダイブして身体を浴びせる技だ。
ほのかサマはダイビングセントーン。これは、空中高くジャンプして、背中で敵を圧殺する。
そして気恵くんは完璧なシューティングスタープレス――コーナーから伸身宙返りを決めつつ、獲物にボディプレスするという、プロレスの飛び技の最高峰だ。
三人同時にフォール!
そこに、本職のレフェリーが走り込んできて、カウントを始める。
会場も総立ちで大合唱だ。
ワン、
ツー、
一瞬の間。
スリーッ!
ゴングが打ち鳴らされ、歓声が沸き起こる。
テープが、紙吹雪が、花束が舞い飛ぶ。
観客はみな立ち上がり、声を限りに叫び、涙を流していた。
すさまじい熱狂と歓喜。会場が弾け飛びそうなほど。
リング上ではなぎさサンとほのかサマ、そして気恵くんが抱き合っていた。
思いっきりなぎさサンが拳を突き上げる。もう全裸がどうとか、関係ない。
「プロレス、サイッコー!」
おおおおおおおっ!
「こんな、サイコーなこと、やめられないよ!」
やはり素っ裸のほのかサマも顔を輝かせて叫ぶ。
「シャイプリ、引退は撤回しまーす! これからも、最高の、このリングで戦いつづけます!」
うおおおおおおおっ!
「それに、あなどれない新人も出てきたしね!」
なぎさサンが気恵くんの腕を取って、高く差し上げる。
「こいつが宇多方気恵だ! あたしたち同様、応援よろしく!」
ごおおおおおおおおおおっ!
歓声と拍手と足踏みが共鳴して、会場が壊れそうな有り様だ。リングサイド席では、例の外人のオッサンがでかい手を打ち鳴らしている。
手を振ってファンに応える気恵くんが一瞬目を閉じた。生まれたままの姿で、ライトとファンの歓声に包まれている。
「き・も・ち・いー!」
どうやら――プロレスラーに、なっちまったようだな。
話はこれで終わらない。
試合後、控え室にあの外人のオッサンがやってきて、気恵くんを名指しで面談を要求してきたのだ。
団体のスタッフたちは応対におおわらわだ。椅子を用意したり、コーヒーを手配したり、まるで偉いサンが来たかのようだ。ちょっと体格のいい、鷲鼻のオッサンがそんなに偉いのかねえ。
しかし、そいつを目の前にした気恵くんはぶっ飛んだ。
「ヴァ、ヴァンス・マクガバン会長! うっそぉ!?」
だれだ、それ?
『すばらしい試合だったよ。ニッポンの女子プロレスのレベルは高いと聞いていたが、まさかここまでとは。意外性に富んだ展開、エロティシズム、それになんといってもスピーディで迫力あるレスリング――われわれのショウに必要な要素がすべてそろっている』
オッサンは英語でそんなことを言った。
どうやら、このオッサン、アメリカのプロレスリング団体WXZ(World Xtream Zone)のオーナー兼CEOで、おしのびで来日していたらしい。WXZといえば、全米はむろん、日本を含めた世界各国に番組を配給している業界最大手の団体だ。いわばプロレス界のメジャーリーグといっていい。
なるほどな。それで、試合中、団体のスタッフがいろいろバタついていたのか。
通訳を介しての会話は続いている。
『とくにミス・キエ、きみには可能性を感じる。キュートなルックスに、そのプロポーション。なにより、観客を引きつけ、燃え立たせる、天性のスター性がある』
「そ……そんな」
気恵くん、舞い上がっている。その気恵くんにマクガバン会長は誘いをかける。
『どうかね? うちでやってみないか? 君ならトップスターになれるかもしれない』
おいっ、だまされるな! うまいこと言って、アメリカに連れてって、ゲイシャガールのかっこうさせて、日本人を笑い者にする気なんだ。
『まずは年棒20万ドルでどうかな。むろん、人気が上がればすぐに上げてあげよう』
やりなさい、気恵。ゲイシャガールだって、日本の伝統文化ですよ!
気恵くんは目を見開いた。迷っているのか、考えているのか、言葉を失う。
視線を動かし、おれを見る。おれは激しくテレパシーを送った。カネのためだ、脱げ!
わかった、というように気恵くんはうなずいた。マクガバンに向き直る。
「マクガバン会長、あたし、まだデビューもしてないし、まだまだ日本で勉強しなくてはいけないことがたくさんあるんです。お話はありがたいんですけど、お断りします」
な、なに!?
マクガバンは目をとじて、大きく何度もうなずいた。
『なるほど……わかったよ。あと5センチ背が伸びて、英語ができるようになったら、連絡をくれたまえ。きみのために契約書を用意しておくよ』
大きな手を差し出した。気恵くんは両手でその手を握った。
ちょ、ちょっと待て、20万ドルだぞ。おれに半分の権利があるとして(突っ込むなよ)、1000万円以上だ! とりあえず遊んで暮らせるんだぞ!
だが、商談はすでに終わっていた。さすがアメリカ人、あっさりしたものだ。握手を終えると、すぐにその場を去ってしまった。忙しい人間らしい。
「な、なんで断ったんだ、気恵! せっかくのチャンスを!」
マクガバンのオッサンが消えたあと、おれはそう言って、気恵くんを叱責した。気恵くんは眉をひそめた。
「なに言ってんだよ。そんなことしたら、遊一といっしょにいられなくなるだろ? アメリカなんだぞ、WXZは」
そ、そういえば、そうか……
「それにさ、あたしは確かにWXZにあこがれてたけど、それが本物かどうか、自分でもまだわからない。もっと時間をつかって、考えたい――だから、今はまだお預けだ、と思ったんだ――受験もあるしね」
気恵くんはふっ切れたように笑った。おいおい、自己完結するなよ……
でも、まあ、いいか。いい顔してるし。