美耶子のお仕事PART10

VRデート大作戦


 あいかわらずテレビ、映画、ライブなどに引っ張りだこの美耶子だが、最近、ちょっとめずらしい仕事があった。
 いまはやりのVRの仕事だ。
 VRというのはヴァーチャル・リアリティ、いわゆる仮想現実ってやつだ。ちょっと想像しづらいが、ゲーム世界にプレイヤーが入り込んだ感覚が味わえるという。
 美耶子が出演するのは、その中でもバーチャルデートというジャンルだ。
 いろいろな場所、遊園地や水族館などにアイドルと出かけて、いちゃいちゃできるという内容だ。
 これまでもそういったソフトはあったらしいが、実写で作られたものがほとんどだったらしい。
 実写だとアングルの制限があるし、撮ったシーン分のバリエーションしかない。可能な体験の幅が狭いのだ。それでもファンアイテムとしては十分かもしれないが、VRという新しい技術をしゃぶりつくすには物足りない。
 今回、美耶子が企画に乗り気になったのは、フルCG、というところに惹かれたためだった。
「あたしがゲームのCGキャラになるの? おもしろそー」
 そうなのだ。このVRソフトは実写ではなく、美耶子そっくりのCGキャラクターを作り、背景も美麗なCGで表現する。
 いまどきのゲーム機というのは要するに高性能パソコンだから、描画性能もすさまじい。以前はささやかれた「不気味の谷」なんてのもクリアしきっている。だまっていれば、実写かCGなのか、見分けがつかないほどだ。
 モデルがCGになることで、衣装も交換自由になるし、背景も選びほうだいだ。実写であれば行けないような場所もデート先にすることができる。ウユニ塩湖にでもギニア高地にでも宇宙ステーションにだって行けるのだ。そんなとこにデートで行きたいかはともかく。
 出てくるのはCGキャラクター――ということは「美耶子が出演している」とはいえないのでは?――と思うかもしれないが、それは違う。
 いくらCGの技術が発達しても、人間の動きを自然に表現することはまだまだ難しいのだ。
 それに、「美耶子らしい仕草」は美耶子本人にしか表現できない。
 そこで、モ―ションキャプチャーだ。美耶子は主としてモ―ションアクターとして出演したのだ。
 このモーション撮影ってのがおもしろくて、だだっ広いスタジオでモジモジくんのような全身タイツを着込んだ美耶子が、ひたすら基本動作を繰り返すのだ。歩いたり、走ったり、飛び跳ねたり、座ったり、寝ころんだり……日常的な動きや、デートをしているときの動きなどを、シチュエーションを分けて、数え切れないくらい撮った。一日ではもちろん足りず、何日間かを必要とした。だが、ボディスーツを着たまま、歌ったり踊ったり、シャワーを浴びる演技をしたり――美耶子にとってはすごく新鮮なようだった。
 また、声も録った。もちろん、別の日に、録音スタジオでだ。美耶子はアニメ声優の経験も多少あるが、今回演じるのはアニメキャラではなく、宇多方美耶子本人だから、終始リラックスしていた。音声にもたくさんのシチュエーションがあって、なかには「いったいどんな状況だよ!?」と思うようなものまであった。とにかくものすごいボリュームであることは間違いない。
 そのほか、美耶子自身の発案で、3Dモデルをよりリアルにするために、開発スタッフ向けの特別な撮影会を開いたりもした。これには開発スタッフたちも感激したらしく「最高の美耶子ちゃんモデルを作ってみせます!」と言ってくれた。
 そんなこんなでこちらの仕事は終わって。あとはソフトができるのを待つだけ――となった。
 そして、今日ついに、VRヘッドセット&ゲーム機一式とともに、サンプルのソフトが送られてきたわけだ。
 ひさしぶりに休みだから、ちょっとやってみようと思う。
 美耶子も楽しみにしていたようだが、残念、これは十二歳未満のお子様はプレイできないのだ。VRヘッドセットは成長途上の子供には害になることもあるようなのだ。(それを後から知った美耶子はぶんむくれていたが……)
 ともあれ、巷では品薄と騒がれ、とんでもないプレミア価格がついているVRヘッドセットをタダでもらえたおれ、勝ち組!
 さて、自室にゲーム機とVRヘッドセットをセッティング、サンプルソフトをスタートさせる。

 最初はVRヘッドセットの調整やチュートリアルがはさまる。このあたりが今までのゲームとは違って、なんか、こう、アトラクションみたいだな。ディズニーやUSJでもアトラクションの最初に係員の説明を受けて準備をするが、あんな感じだ。
 これから異世界――VR空間に入っていく気分が盛り上がっていくな。
 ちなみにコントローラーは両手に嵌めるグローブタイプで、手でおこなう操作――触れたり持ったり投げたり――ができるらしい。

「美耶子ちゃんとVRデート」

 おお、始まったぞ。
 おれは何の変哲もない児童公園にいた。
 文字通り、公園だ。
 空は晴れていて、周囲には緑があり、ブランコや砂場、ジャングルジムといった遊具もそろっている。
 この感覚を説明するのは難しいが、まわりすべてが公園の風景で占められていて、映像を見ているといった感じはしない。木々や遊具も実にリアルで、意識していないとそれらがCGであることを忘れてしまいそうだ。
 とにかく、おれはVR空間のなか――美耶子との待ち合わせ場所の公園に来ていた。
「お待たせ、おにいちゃん」
 聞き慣れた声がして、振り向くと美耶子がいた。
「おお、まじか」
 思わず呟いた。そこには白のワンピースに身を包んだ美耶子がいた。さすが日本のゲームクリエイター。おまえたちはヘンタイな――いや、たいへんな天才だ。
 CGモデルって、ここまでリアルにできるのか。実写さながらの再現度だった。
 美耶子の、稚ないながらもちょっと鋭さを秘めた顔だち、ネコっぽいアーモンド型の眼、ちんまりしたお鼻、薄いピンク色の唇。ちょと口をあけると覗く牙のような八重歯。マジで可愛い。本物と同等、いやそれ以上の再現度だ。
 目の前には選択枝が現れている。このへんはたしかに電脳空間、ゲームっぽいな。
『やあ、美耶子ちゃん、こんにちは』
『遅かったね、待ちくたびれたよ』
 これを選ぶには、視線を動かして選択したい方を見てうなずくだけでいいらしい。なにその未来インターフェイス。
『遅かったね』の方を選んでみる。
 すると、美耶子の表情が変わり、すまなさそうに両手を合わせる。
「ごっめーん、前のお仕事が長引いちゃって……」
 本物の美耶子はこんなふうに素直には謝らないのだが。
『前の仕事って……?』
「ドラマの撮影だよ!」
 このバーチャルソフトでは、「宇多方美耶子」という子役アイドルとしてのキャラづけされているようだ。
「この服、どうかなぁ? おかしくない?」
 白いワンピースにつばひろの帽子。夏の設定なのだろう。いかにも夏の少女という感じだ。
 おれからすると、仕事モード以外の美耶子が可愛い格好をするなんて、リアリティないことこの上ないが、ファンからすると理想的な子役アイドルの姿なのだろう。夏だと、うちの中ではパンいちでうろうろしとるのだが。
『似合ってるよ!』
『ちょっと子供っぽすぎない?』
 選択枝がまた出るが、ここは無難に『似合ってるよ!』にしておこう。わざと煽ってみて、反応を見るのもおもしろそうだが……
「えへへ……」
 照れたように美耶子が笑う。
「ありがと、おにいちゃん、うれしいな」
 うっわ、ないわ! こんな反応する美耶子は、全然リアルじゃねえぜ!
 でもこんな素直な美耶子がもしもほんとうにいたら――やられちまうだろうなあ……
「じゃ! デートしよ!」
 美耶子が手を差し伸べる。反射的にグローブコントローラーをはめた右手を出すと、おっと、視界内に男の手があらわれたぞ。どうやら、これがおれの手らしい。
 美耶子が俺の手を握ると(もちろん実際に握っているわけじゃないが)、グローブに仕込まれた機構が作動して、なんだかほんとうに手を握ったような気がする。
「いこ! おにいちゃん!」
 おお、データが始まったぞ。
 プライベートでは美耶子とデートなんてできないしな。すぐにファンに見つかってしまう。おれは美耶子のマネージャーでもあるから、一緒にいても不自然じゃないが、JSアイドルとマネージャーがつきあってるなんて噂がたったらもうアウトだ。

「どこにつれてってくれるの?」
 美耶子が訊いてくる。
 選択枝が現れる。

 遊園地 2,000ゴールド
 水族館 3,000ゴールド
 プール 5,000ゴールド

 ゴールドというのはゲーム内のお金らしい。VR空間でもデートに行くにもお金がかかるらしい。せちがらいな……
 だが、ゲームを始めたばかりのおれには所持金がないようだ。
 どうしたらいいんだ、と途方にくれかけたとき、ウィンドウが開いて、キーボードが現れた。
『クレジットカードの登録をしてください』
 なんと……リアル課金させやがるのか……!
 だが、まあ、やむを得まい。おれはカードでゴールドを買った。一万円分もあればいいだろう。一万円=10,000ゴールドだ。
 と思ったのが甘かった。
 まず、遊園地に行ったのだが、ソフトクリームをねだられ(1,000ゴールドだった)、『エッチな感じで舐め舐めしてあげる』という選択肢があって、買わずにはいられなかったのだ。
「ありがとーおにーちゃん♪」
 美耶子にニコッとされて、ソフトクリームをちょっとエッチに舐めるシーンをいろんな角度から観賞できて「これっていいシステムじゃね?」と思ってしまったのが運の尽きだ。
 その後、ジェットコースターにしろ観覧車にせよ、しっかりとカネがかかるため、あっという間に一万円分のゴールドがなくなってしまった。でもな。VRのジェットコースターはすごかった。本物いらんわ。
 なんか、ほんとに美耶子と遊園地でデートしているみたいだった。観覧車でいい雰囲気になったのでキスしようとしたら、『なにするの!? おにいちゃんのヘンタイ!』となじられてしまった。ああ、そこはそこはかとなくリアルでいいな。焦ってエロいことをしようとすると、好感度が下がるようだ。
 気をつけねば。
 次はちょっと張りこんでプールにした。
 ああ、以前、市民プールにいっしょに行ったなあ……。あの頃はまだ美耶子は芸能人じゃなくて、今よりずっと幼くて、やんちゃだったなあ。でも、あの頃から、他人の前では自分でキャラを作って演じていたし、やはり子役になったのは必然だったんだろうか。
 などと感慨にふけってしまった。
「お待たせ! おにいちゃん!」
 更衣室から出てきたのは水着姿の美耶子だった。イエローの水玉のセパレート。露出度はさほど高くない、ふつうの水着だ。さっき寄ったショップでは、もっともっときわどい水着も売っていたが、信頼度がまだ高くないので、お金を積んでも買えなかったのだ。あのヒモみたいな水着、いつかぜったい着せてやる!
 好感度重視のプレイで、美耶子に泳ぎを教えたり、いっしょにもぐりっこしたりした。何度も言うが、VRなので、ほんとに水中にいる感覚におそわれる。泳げない人はパニックになるかもな。
 途中のイベント(罠)では、美耶子の水着のブラが脱げてしまうハプニングがあったが、紳士的に水着を返してあげたし、平泳ぎで泳ぐ美耶子の股ぐらを鑑賞するのもぐっとこらえた。
 おかげで、美耶子の好感度はかなり回復したようだ。
 泳ぎ疲れた美耶子は、プールサイドのデッキチェアに寝そべって、クークー寝息をたてはじめた。
 ああ、もう、罠ばっか……!
 だが、少々おれもこのゲームになれてきて、アイテムの使い方を理解しつつあったのだ。
 このゲームではショップでアイテムを購入することができ、そのうちのいくつかはデートでエッチなイベントを起こすのに使えるようなのだ。
 たとえば、透明になれるアイテム。これを装着すると、一定時間透明になることができ、美耶子からおれが見えなくなってしまう。そのすきに、スカートの中を覗いたりできてしまうのだ。ただ、2,000ゴールドもするんだよな。
 小さくなれるアイテムもある。これを使うと、視点が低くなり、やはり合法的にスカートの中を鑑賞できる。
 そのほか、服を透視できるメガネとか、美耶子に気づかれずにタッチできる手袋とか――
 手袋買っちゃった! これは3,000ゴールドだ。
 VR空間で女の子に触れるっていうのはどういう感じなんだろう。
 美耶子はよく寝ている。ふつうに触れてしまうと、目を覚まし「なにしてるの? おにいちゃん」と聞いてくるのだが、この手袋をつけていると目をさまさないのだ。それどころか……
 おっぱいのあたりを撫でてみる。すると美耶子は眠ったまま、ビクンと反応する。
 リアクションのタイミングが絶妙なので、本当に触っているみたいだ。もちろん、本物の柔らかさは感じられないが、グローブにそこはかとないリアクションがあって、ほんとに触っているような気がしてくる。
 美耶子の胸のあたりを撫でていると、じきに乳首が立ってきて、水着にポッチが浮かび上がってくる。
「あぁん……」
 眠ったまま、美耶子が甘い声を出す。
 楽しい。
 胸をこすこすしているだけでめっちゃ楽しい。
「はぁ……あん」
 どんな夢を見ているのか……小さな舌先が動いて唇を舐める。
 腰をうねらせて、脚を広げる。
 水着の布地がワレメに食い込んでいる。ここにも触れるのかな……
 好奇心を抑えきれず、おれは美耶子のワレメに指を当てた。
「はああんっ! だめぇ……って、おにいちゃん?」
 美耶子が俺を見上げていた。しまった。手袋アイテムの有効時間が終わっていた。
「……なに、してるのぉ! ばかぁ!」
 怒られてしまった。一時の欲望に負けて、信頼度を一気に失った……


 などといいつつ、お金を遣えば美耶子の機嫌も直せるから、いいよね!
「わあい! おにいちゃん、ありがとう!」
 ウサギのぬいぐるみを買ってやり(機嫌を一気に戻せる効能あり、5,000ゴールド)、めげずにデートを再開。
 今度はおしゃれなシーサイドのカフェに移動する。
 VRすげーな、と思ったのは、プールで遊んだ結果が反映されていて、美耶子が日焼けしているのだよ。この機能をつけた人は良く解ってるな。
 ここで、透明アイテムを発動させ、美耶子のスカートの中に潜り込む。リアルでやったらマジ変態だ。そうでなくとも、リアル空間ではヘッドセットをかぶった状態で床に這いつくばり、必死で上を向いてハァハァ言っているので、目撃されたらかなりヤバい。
「あれ? おにいちゃん、どこ?」
 おれが見えなくなった美耶子がきょろきょろしているようだぞ、そのすきに、だ。
 おお、パンツ!
 美耶子のパンツ、見放題だ!
 青と白のストライプ。いわゆる縞パンだ。うむ。実際の美耶子のパンツの趣味と同じだ。ここがこだわりポイントで、この作品で美耶子が身につけている服や下着の多くは、実際に美耶子が持っているモノを忠実に再現しているのだ。そのために、開発会社に美耶子の愛用パンツも送ったくらいだ。(サイン入りの縞パンが今でもその開発会社の社長室に飾ってあるらしい)
 それにしても、パンツのモデリングが凝りまくっているな。カクカク感がまるでない。ものすごく大量のポリゴンを割いていることがわかる。CGだから、あらゆる角度から鑑賞できるのもいい。これだけで元は取れるだろう。
 おっと、視界がチカチカしてきた。アイテムの時間切れか……
「あっ、おにいちゃん、いたあ!」
 美耶子がおれを見つける。俺の姿が見えるようになったらしい。
「どこ行ってたの、もお!」
 ちょっと機嫌が悪そうだ。
「なんだかね、スカートの中に生暖かい風が吹いて、気持ち悪かったんだよぉ!」
 すまんな、それはおれの鼻息だ。てゆうか、VRって、鼻息までフィードバックできるのかよ!?


「すっかり遅くなっちゃったね」
 夜のベイサイドで美耶子が言う。夜景が美しい。何度も繰り返すが、これは現実ではない。だが、どうしても、風景にだまされてしまう。港の風を心地よく感じさえする。ヘッドセットから微量の空気が流れ出しているらしい。
「とっても楽しかったよ、おにいちゃん」
 にっこり笑う。実に可愛い。実物ももちろん可愛いが、3Dで再現された美耶子はなぜか、さらに可愛く感じられる。
 これでデートは終わりだ。本来なら、この後、判定が出て、その結果に基づいて、次のデートで行ける場所が増えたり、美耶子に着せる衣装がもらえたり、スペシャルアイテムが入手できたりする。
 だが、実はこのゲームには裏ルートがある。高額課金者にだけ許された禁断のコマンドだ。
 ふふふ。
 何もこれまで、意味もなく課金を繰り返していたのではない。ちゃんと、開発者から裏コマンドの情報をせしめていたのだ。まあ、ガチでここまで課金してしまうとは自分でも思わなかったが……
 一定以上の課金をした状態で、コマンドを入力すると――
『帰したくない』
 というセリフのあとに、選択枝が現れる。
 A:『ホテルに部屋をとってあるんだ』
 B:『一晩中、フィーバーしようぜぇ』
 下の方も気にはなるのだが、まずは上の方にしてみる。
「え……でも……」
 美耶子はためらう。もう一押しだ……てか、小学生相手にガチで口説いてるのって、ゲーム倫理的にどうなのかな?
A:『美耶子とすてきな思い出をつくりたいんだ』
B:『ええやろ、今日、ナンボつこたとおもとんねん』
 本音は下だが、まあ上にしておく。
「……うん、いい、よ」
 やったぜ! ほんとうはフラグを立てるのはもっと難しいらしいが、課金の力で突破したぞ!


 ホテルの部屋に移動した。
 さすがにここまで来ると、美耶子もしおらしい。
「さあ、全部脱いで」
「……はずかしいから、見ないで」
 恥じらいつつも、服を脱ぐ。
 ふはは、ついに美耶子を素っ裸にしてやったぞ。
 モデリングのチェックだな。
 ほう……
 モデラーはいい仕事をしたな。
 顔かたちだけではなく、ボディラインも美耶子そのままだ。
 ふくらみかけの胸も、子供っぽさと少女らしさが同時に潜むウェストラインも、小生意気に張り出したヒップも――
 本物を知り尽くしているおれでさえ、これが作り物であるとは信じられない。
「やだ……」
 おれの視線を感じて、身もだえする美耶子。実際とはもちろん違うが、こういう美耶子も新鮮だ。
 さて、ここからが大事だ。
 このゲームはアダルト指定はついていない。
 テレビ番組や映画と同じで、「子供は妊娠できないから性行為ではないよ」理論をつかっている。要するに全年齢向けだ。
 ここからの行為はセックスではなく、スキンシップなのだ。
「さわりっこしよう、美耶子」
「うん、おにいちゃん!」
 VR空間で、全裸の美耶子と戯れる。
 ベッドの上で、美耶子の股を開かせる。
「おまんこチェックするぞぉ!」
「あんっ、やだあっ……そんなトコ……広げないで」
 みちゅり……
「やだやだ、おにいちゃん、はずかしいよぉ……」
 まさか、ここまで作り込まれているとは……
 逆説的だが、全年齢向けだからこそだ。
 美耶子が大人だったら、この部分は不調法な「モザイク」に覆われていたはずだ。
 美耶子の性器が完全再現されている。
 形も、色も、本人のと寸分違わない。
 これは開発スタッフ向けの撮影会のたまものだろうな。美耶子のやつ、全裸になって、おまんこもアナルもくぱぁして資料写真をバシバシ撮らせていたからな……。
 じゃあ、こっちも――
 くぱっ
「あっ、やだやだ、そっちはおしりだよぉ、ばっちいよぉ……」
 アナルの中の粘膜の色まで本物そのままだ。これは、CGスタッフが凄いのか、CGさながらの理想的な造形と色の排泄孔を持つ美耶子が凄いのか。
 おれは興奮のあまり、美耶子のアナルにバーチャルな指を突っ込んだ。コントロールグローブの指を包むパーツがきゅっと締まる。
「ああんっ! やだ、やだぁ……」
 美耶子がお尻を振るわせると、その振動が指につたわり、締めつける度合いが変わる。
 もちろん、本物の感触とは微妙に違うが、しかし、視覚から受ける情報がそれを補完して、まるでほんとうに美耶子の肛門をほじくっているみたいだ。
 確信した。
 これは売れる。売れてしまうぞ……
 美耶子ファンなら言うまでもないが、そうでなくてもJS子役のおまんこやアナルがご家庭で見放題、さわり放題なのだ。これが売れないはずがない。これが家庭用ゲーム機で可能になるなんて……技術ばんざい!
「はあ、はあ……ここまで来たら……」
 ペニスが痛いほど勃起している。もどかしくなってペニスを解放する。VR空間の中にCGで描かれたイチモツが現れる。開発中だからか、モザイクなしだ。おれのものと寸分変わらないペニスがあらわれる。(恥ずかしながら、おれのデータも再現されているようだ)
「も、もう、がまんできないっ!」
 おれは美耶子をうつぶせにすると、バックからおまんこにバーチャルペニスをぶちこんだ。
 実際は、VRソフトと同時発売予定のオナホだ。椅子にアームで固定してあって、バーチャルな美耶子のおまんこの位置に合わせることができる。
 このオナホは、ただのオナホではなく、VRソフトと連動して、うねるのだ。
「おおおおおお?」
「やぁ……っ! は、入ってるぅ……!」
 美耶子が甘い声を放つ。
 すごい反応だ。
 お尻を振りたくっている。それに合わせてオナホがうねりまくる。
 すごい! 本物みたいな感触だ。ここまで再現できるのか、オナホは――VRは。
 入口の狭さから、奥にしたがってぬるんっと吸い込まれ、複雑なひだが亀頭をなめ回すように絡まり、天井のざらざらが迎えてくれる。さらに吸いつくような子宮口。
 子供の膣はツルツルでつまらないという説があるが、美耶子にかぎってはそうではない。
 まさに十歳のこの瞬間にしかありえない、奇跡の女性器、宇多方美耶子のナマ膣。
 この快感が、ご家庭で誰でも体験できるとなったら――
 いろんな意味で、社会は良くなるんじゃないだろうか?
 少なくとも子供に向けた性犯罪は激減する。
 そういう嗜好を持つ大人はみんなこのソフトを買えばいいのだ。
 完全に合法だし、誰も傷つかない。そして美耶子にはロイヤリティが入ってくる。
 いいことづくめだ。
 まあ、ユーザーが課金廃になってはしまうだろうが……
「あんっ! ああんっ! やだぁっ!」
 CGの美耶子があえいでいる。小さなおしりを動かしながら、背中をそらしてのけぞる。
 アヌスをいじりながら、ヴァギナを突きまくる。
「やっ! あっ! おしり、されながら、えっちするのすきぃ……!」
 これは実際の美耶子も好きなプレイで、興奮度のパラメータがどんどん上がっていく。
 そうだ。忘れがちだが、これはゲームだから、パラメーターを上げていくと、体位を変えたり、いろいろなオプションプレイが可能になるのだ。
「ああっ! はあぁ、おにいちゃん、抱っこして……抱っこしながらエッチして……」
 バックで突かれながら、美耶子がおれを振り返って懇願する。
 いいとも。おれは一瞬、美耶子の膣からペニスを抜いて、小柄な身体を抱き上げる。
 実際にはコマンド操作をして「対面座位」に切り替えたのだけれど。
 やっぱり、美耶子の顔を見ながらする方がいいよな。
 濡れまくりの美耶子のおまんこに改めてペニスを挿入する。
 おおおお!
 この感触! 狭さ! 熱さ! 一段と再現度が増したんじゃないか? さっきより全然いい! すごいぞ、メイドインジャパン!
「す、すごい……美耶子……おれ、いきそ……」
「おにいちゃん、キスしながら、して……いっしょに……」
 美耶子の顔が近づいてきて……舌が入ってくる。VRなのに、ほんとうに小さな舌で口の中を舐めまわされているみたいで、ゾクゾクする。超音波でそういう感覚を出しているらしいのだが――リアルすぎるだろう。美耶子の唾液の味まで再現できるのかよ? JSフェロモンたっぷりの美耶子の唾液はおいしすぎる。
 思わず、腰を動かしてしまう。美耶子の奥を突き上げる。
「んんんっ! んぅっ……!」
 美耶子が鼻を鳴らしながら、それでも舌をより激しく動かし、おれの口蓋を舐めまわし、舌を絡めてくる。
 息さえ、苦しい。おおお、このVR,体力いるな。へたすれば腹上死、いやVR死するぞ? そんな死因はかなりイヤだな……。だが、こんな可愛いJSとらぶらぶセックスできるのなら死んでも本望、というヤツはけっこういるかもな……。
「おにいちゃん……美耶子、いき、そう……いかせてくれる?」
 美耶子のパラメーターがMAX寸前だ。
 イキ顔寸前のトロアヘ顔をさらしながら、美耶子がせがむ。
 おれも、そろそろ限界だ。
 射精したい。ゲーム的にも肉体的にも。ちなみにこのオナホはプレイヤーの射精を感知して、VR映像にもリアルな射精描写をするということだ。なんでそれが成人指定にならないかというと、VRで描写された女児相手に射精する行為はなんら猥褻ではないからだ。
 だって、子供相手に欲情するはずがないし、射精したのは単なる生理現象だ。
 だから猥褻ではない。
 それにこれはゲームなのだ。本当の女児に猥褻なことをしているのではない。CGだから! フィクションだから! ファンタジーだから!
 でも、メチャクチャリアル!
「あああああっ! 美耶子イッちゃう! おまんこイッちゃう! おにいちゃん、美耶子のおまんこの奥で、出してぇ! ビュッビュッって、セーエキ、出してぇ!」
 ああ、いく! おれも出る!
「ひゃあああッ! んくっ、あああああっ!」
 美耶子のアクメ声を聞きながら、おれも射精していた。VR空間でなら美耶子を孕ませることさえ可能かもしれない……なんて、考えながら、精液を噴き上げさせていた。


 ああ……ガチで射精してしまった。オナホなのに……VRなのに……
 急速に訪れる賢者タイム。
 それにしても気持ち良すぎる。オナホって、こんなに気持ちいいものなのか? 人生観変わりそう。
『スペシャルイベント終了』
 というテキストが表われ、プレイ時間やコマンド選択の成功率、消化イベントのパーセンテージなどが表示される。なんと、これだけ遊んでも全体の五パーセントくらいしかイバントを消化していないらしい。これは、遊びごたえありそうだな……。
 おれはヘッドセットを外した。
「って、美耶子!?」
 ヘッドセットを外したということはVR空間から出たということで、現実のはずなのだが、それにもかかわらず全裸の美耶子がおれの膝の上に乗っている。
 どういうことだ? おれはVR空間に取り込まれてしまったのか?
「えへへ……ゆういちとおうちでえっちするの、ひさしぶりー」
 そ、そういえば、ここはおれの部屋、ということは下宿している宇多方家の一室で、美耶子にとっては自宅だ。
 すなわち、ここはVR空間ではなく現実で、美耶子も美耶子本人なのだった。
 ということは、おれのペニスを包みこんでいる極上のトロまんは――
「もちろん、本物だよ?」
 美耶子がお尻を上下させながら笑う
 あう。出したばっかりでその刺激はやばいって。
「あたしの中にいーっぱい出したよね、ゆういち。んふ、きもちーかった?」
 美耶子が腰を浮かし、ちゅぽん、とおれのリアルペニスを外すと、膣口から精液がとろぉーっと零れ出る。
「ちゃんとそこ、押さえとくのよ、しずる感は大切なんだからね」
 聞き覚えのある声がして、周囲を見渡すと、小柄デブでチョビヒゲサングラスの桃山園がいた。あと、カメラや照明や録音などの撮影スタッフも。
「な!? な、な、な……!?」
「ああ、学生、あんたのさっきのシーン、このVRソフトのプロモーションビデオに使わせてもらうから」
 桃山園がおれを見て、あっさり言う。
「問題ないわよね。高価なVRオナホセットをタダで貰えるわけないでしょ? プロモーションに協力してもらわないとね」
「それに、PV撮影のお仕事でもないと、ゆういちとおうちでセックスできないもん」
 美耶子もにこにこ笑って言う。
 そ、そういえば、この国では、撮影をともなわない、プライベートなセックスを未成年としたら犯罪なのだった。
 PVの撮影でなかったら、おれは犯罪者になるところだった……。


 ――というわけで、事情をようやく理解することができた。
 VRソフトの宣伝用のムービーの制作の依頼が桃山園のところにいき、桃山園が一計を案じたのだ。
 おれにVRセットを渡し、モニターさせるということにして、こっそり撮影チームを潜ませていたのだ。宇多方家では過去幾度もロケをしているので、勝手もわかっている。
 おれがVRゲーム内で美耶子とセックスしている最中に、撮影チームと本物の美耶子がおれの部屋に入ってきて、よきタイミングで入れ替わったのだ。
 そういえば、VR美耶子にせがまれて体位を変えた時に、やけにオナホの感覚がリアルになって驚いたっけ。あの時に入れ替わったのか、本物の美耶子と。
 やっぱりオナホは本物にはかなわないということか……。だが、肉薄はしていた。オナホでも確実におれは射精まで至っていただろう。
「どうだった、美耶子のおまんことオナホ、どっちがきもちかった?」
 美耶子が訊いてくる。久しぶりにたっぷり中出ししてやったためか上機嫌だ。
「それは、もちろん」
 美耶子のナマまんこに決まっているが、オナホもかなりのできだった。それを率直に美耶子に告げると、まんざらではなかったらしい。
「えへへ、最新式のセンサーを埋めて美耶子のおまんこの形をコピーしたんだから、当然だよね!」
 こういうエログッズに関しての日本の技術は世界一だ。
 センサーを取り付けたバイブを実際に美耶子の膣に入れて、いろいろ計測したらしい。
「でも、本物のほうが何百倍も気持ち良かった」
「えへへ……でしょ、でしょ? だって、愛があるもん」
 そう言うと、唇を押しつけてくる。
「ね、このまま、撮影の続きしよ? VRソフトのイベント用の資料映像、いっーぱい撮るんだって。ももちーも、いっしょに、ね?」
 おれが桃山園を見ると、ヤツはニヤッと嗤ってうなずく。くそ、全部仕込み済みか。
「今あんたがプレイしたのはあくまでも体験版。エッチイベントは絶賛開発中なの。そのための資料映像の制作も頼まれているってわけ。さあ、ここからは3Pシーンの撮影よ」
 すでに桃山園は下半身裸だ。
 それからおまけ映像の撮影が始まった。美耶子の穴という穴に桃山園とおれが精液を注ぎ込んだのは言うまでもない。


 このVRソフトは当然、大ヒットし、日本のVR普及を一気に推し進めた。
 美耶子を皮切りに、美少女子役の出演作が続々発売され、ついには美少年子役のアナルオナホやおちんちん型バイブバージョンも登場するなど、日本の新たな産業となったということだ。

おしまい