うたかたの天使たち 外伝

美耶子のドキドキ ドラマ撮影!

前夜のリハーサル

 1

 美耶子は楽屋でひとりむくれていた。

 時刻は午後十一時。

 エッチを拒否して寝たふりをしたのが三十分前。

 むろん、襲ってくると思っていた。

 遊一のことだから、今日の撮影について根ほり葉ほり訊いてくるにちがいないと思っていた。

 亀垣のことをどう思うのか、とか、裸見られて興奮したんじゃないか、とか。

「おまえ、パンツ撮られて、濡らしてたんじゃねーのかよ」

 とか言いつつ、あそこをさわってくるかもしれない。

 そうすると寝ているふりはむずかしい。もうやばいくらいに濡れているから。

 撮影中からそうだった。遊一のあの表情――心配そうな、誇らしそうな、そして熱っぽい視線。どんなにちゃらんぽらんに見えても、自分のことをいつも見てくれている。

 美耶子は遊一の視線を浴びながら演技をするのがいつしか快感になっていた。特に、ほかの男のひととエッチなお芝居をしているときの遊一の表情がたまらない。

 そのあと、遊一にたっぷり可愛がってもらうのも好きだ。

 そんなときの遊一はいつも以上に情熱的に美耶子を求めてくる。なんでもいうことをきいてくれる。どんなことでもしてくれる。

 そして、美耶子にもありとあらゆることをさせる。美耶子は高慢なお姫様にも、男の肛門をなめる雌犬にもなる。

 今日も、それを期待していたのだが――

「ったくぅ、ゆういちったらどこいったのよぉ」

 ワクテカして布団のなかで待っていたのに、訪ねてきた誰かと言葉を交わすと部屋を出て行ってしまった。

 むろん、すぐに話を終えて戻ってくると思ったのだが、まてどくらせど戻ってこない。

「――ちぇ、おしり、きれいにしておいたのにな」

 遊一に愛されるかもしれない日は、おしりでもOKにしておくのが美耶子のたしなみだ。

 パジャマの下の未成熟な身体は準備万端。なにしろ、撮影そのものが前戯のようなものだったのだ。

「はあ……自分でしちゃおうかな」

 美耶子はパジャマのズボンの上から股間を触ってみる。

「ひゃあっ」

 ロデオマシンで刺激された部分が、じんじんじん、とその記憶を反芻する。

 だが、美耶子はそれ以上、具体的なオナニーの方法を知らない。オナニーを覚える前に遊一と出会ってしまったからだ。初体験が浣腸プレイだった美耶子に、標準的な性知識など望むべくもない。

「ああ、もうムズムズ」

 美耶子は枕を股間に挟んで悶々――

 と思ったら、ドアにノック、だ。

「帰ってきた」

 ぴょんと布団に座り直す。

 一瞬、寝たふりしてやろうかと思ったがその考えはすぐに捨てる。だってもったいないしね。

 それでも思いっきり嫌みを言って、いじめてやろう――そう思いつつドアをあける。

「もお、遊一ったら、こんな時間にどこに――」

 言い掛けて、とまる。

 ドアの外にいた人物からは遊一とはまったくj異なる高級そうなオーデコロンの香りがしたからだ。

「やあ、遅くにごめんよ」

 そこにいたのは窪塚だった。

 

「ほんとに申し訳ないね。急遽シナリオに変更が入ったのでね」

 廊下を並んで歩きながら窪塚が言う。美耶子はその長身を見上げる。

「いえ、いいんです。ちょうど眠れなかったし」

 美耶子はパジャマ姿のままだ。このあたりの羞恥心のなさは子供らしい。

「ふむ、子供は本当はベッドに入る時間なのだけどね」

 申し訳なさそうに窪塚の手が美耶子の髪をなでる。

 美耶子は窪塚が好きだった。同級生の父親ということもあるが、姿も立ち居振る舞いも実に父親っぽい。父の記憶がほとんどない美耶子にとって、窪塚にかまってもらえるのはうれしいことだった。

「保護者のなんとかという人物にも立ち会ってもらいたかったんだが……」

「アイツのことはほっといていいですわ、おじさま」

「そうしよう」

 あっさり言う窪塚。もともと、窪塚が遊一の存在を認識しているかどうかさえ疑わしい。

「ところで、おじさま、あたし、ちょっと気になることがあるんですけど」

 美耶子が会話が途切れるのを嫌って何気ない話題をふる。

「あの、オカマっぽいメイクさんだったり、ADさんだったりする人のことなんですけど……なんだかあたし見覚えがあるって言うか……」

 現場を仕切ろうと必死になっていたようだが、周囲からは軽んじられていたというか、むしろじゃまにされていた感じがする。それでいながら、監督をはじめ、偉い立場の人たちも遠慮しているような――

「ふむ、誰のことを言っているのかわからないが、今回スタッフ的にはかなり異例の抜擢をしていてね。一度は業界を追放された男だが、数字を取るための秘策を持ってきたのだ。それに賭けてみようと思ってね」

「はあ……」

 窪塚がなにを言っているのかわからない。だが、そうこうするうちに目的地に着いたようだ。楽屋からはずいぶん離れた、調整室兼会議室のような部屋。殺風景なところだった。

 そこには先客がいた。

「あっらあ、来たのね、美耶子ちゃん」

 待ちかまえていたのはメイク兼AD兼……の謎の中年男だ。

「ありがと、窪塚プロデューサー、あたしの意見を採用してくれるのねん」

 男は窪塚にはとろけるような笑顔を向けた。

「ふむ……姿がよく見えないが、きみのプランは画期的だ。成功すればテレビの歴史を変えるかもしれない」

 窪塚は男のいるあたりにむけて重々しく言う。

「そろそろ元の姿に戻ってはどうかな。そのほうが、わたしにも君がどこにいるかがわかりやすい」

「うふ、了解よぉ」

 その男はおもむろにサングラスをはめ、野球帽をかぶった。

 いわばキャラクターを構成する部品が装着されたのだ。それによって、謎の男は美耶子の記憶のなかで収束した。

「あああああっ! ニセ監督!」

「桃山園桜次郎、復活よぉ〜!」

 

 ややあって。

 テーブルの上にはコーヒーカップが人数分置かれている。窪塚と桃山園はコーヒー、美耶子はホットミルクだ。

「おじさま、これっていったい……」

 美耶子は窪塚に説明をもとめる。

 桃山園といえば、この秋おこなわれたドラマのオーディションで女優にセクハラをおこない、問題になって業界から追放されたはずだ。

 それまでは売れっ子ディレクターだったのがどんどん没落し、あやしげな低予算ドラマ――しかもほとんどAVのようなものシロモノを作るくらいまでおちぶれていた。

 この冬にも美耶子はこの桃山園と出くわし、一悶着あったのだ。

「うむ。確かに桃山園くんは醜い。許し難いほどに汚い。いまでも輪郭くらいしか見えない」

 窪塚は、美しいもの以外は目に入らないという体質なのだ。

「だが、彼から企画書をもらってね……驚くべき内容だった。そう、テレビの常識を覆し、圧倒的な視聴率をたたきだせるかもしれない――そう思える内容だった」

 窪塚は熱っぽく語りはじめた。

「現在はスター不在、アイドル不在、インターネット普及によるテレビ離れなどなどで、視聴率は下がる一方。テレビメディアの危機が叫ばれている! そんな今こそ、人々をテレビの前に釘付けにするコンテンツとヒロインが必要だ!」

「はあ……」

 圧倒される美耶子。

「桃山園くんの企画はその点を見事に突いていた。すなわち、世界初、脱常識のライブドラマだ」

「ライブって、生中継のことですよね、それ、明日するやつじゃ……」

「ただの生中継ドラマでは数字はとれない。ハプニング、そして、現実ではありえないような事件、それを視聴者にみせつけるのだ。そして、そのヒロインは美耶子くん、君しかいない!」

 バーンと人差し指を美耶子に突きつける。

 さすがは敏腕プロデューサー、なにを言っているかはわからないが、なぜか納得させられてしまう。

「じゃ、じゃあ、このニセ監督の企画が採用に……?」

「桃山園よ、宇多方美耶子ちゅわん」

 勝ち誇ったように唇をとがらせる桃山園から美耶子は視線を外した。やっぱり思い出してしまう。一度ならず二度までもこの桃山園には恥ずかしい想いをさせられたのだ。むろん、その二度ともより大きなダメージをこうむったのは桃山園だが、美耶子にとってそれがいい思い出であるはずはない。

「……おじさまがそうしろというなら、きっとそれは番組にとってはいいことなんでしょうけど……」

 気が進まない。

「そうか、OKか!」

 テーブルごしに握手しようとする。美耶子はさすがにそれはすばやく避けた。

「まだOKしてません。どう台本が変わるのか教えてください。覚えられないと困るし」

 美耶子は暗記は得意な方ではない。今回のせりふだって必死の努力でなんとか覚えたのだ。むろん、周囲にはがんばっているところをみせないのが美耶子流だが……

「いいとも……といいたいところだが、実は台本はまだないんだよ」

 窪塚がすこし困ったように言う。

「え?」

「台本は桃山園くんの頭の中にしかないんだ。いわば、その場で美耶子くんに演技指導をするわけだ」

「そんな無茶な」

「無茶じゃないわよ。あんたにはそれができるってこと、あたしはちゃあんと知ってるのよ? 天性の力があるってことも」

 桃山園がしたり顔で口をはさむ。こんなやつにほめられてもうれしくない――というほどでもなく、美耶子はちょっと喜ぶ。

「え、あ? そうかな?」

「そおよお、って、あんた、基本的に台本棒読みじゃない。まともなのはアドリブだけよ」

「なっ!」

 やっぱり桃山園が美耶子をほめるはずがない。頭に来る美耶子だが、それはそれで正鵠を射ているのであまり言い返せない。

「あんたもさあ、わかってるでしょ? せりふを覚えるのは苦手、演技は薄っぺら、ルックスだって、世間的にはともかく、芸能界じゃ並。そんなあんたがこの世界でやっていくためには普通のやり方じゃあダメよ」

「別にあたし、芸能人になりたいわけじゃないもん」

「ふぅん、逃げるんだ」

 いやみったらしい口調。カッチーン! 美耶子の闘争心に火がつく。

「逃げたりなんかしないわ!」

「でも、台本がないとぉ、とか、女優なんてできないぃ、とか弱音はいてなかった?」

「そんなこと言ってません! やります!」

 美耶子は桃山園をにらみつける。

「言ったわね? あたしの演技指導を受けるのね?」

 ニヤニヤと桃山園は笑う。

「つらくって、泣いちゃうかもよ? それでもいいの?」

「泣いたりしないもん!」

 美耶子は言い放つ。

「よし、美耶子くん、じゃあ、早速、変更契約書にサインをくれたまえ」

 窪塚プロデューサーが書類を美耶子の目の前に差出す。

 美耶子はその書類を一瞥する。

「んと……出演契約書……? 違反した場合は……にゃああ、漢字読めない!」

 美耶子は後ろを振り返る。そこにいるべき人物を探す。だが、いない。小鳥遊一はここにはいない。

「あんの、バカ!」

 難読漢字だらけの契約書の署名欄に丸っこい字を書き込む美耶子。

 にたぁりとほくそ笑む桃山園――この時、運命は定まった。

 

 その場で演技指導が開始される。カメラテストも兼ねているのか、何台かのカメラが回されている。メインのカメラにはサングラスのディレクターがついている。

「じゃあ、変更したシーンを説明するわよ。今日撮った、お風呂のシーン、おぼえてる?」

 美耶子はうなずく。かなり恥ずかしい経験だった。だが、きちんと演じきった自信はある。

「あれね、チェックしたけど全然ダメだったわ。使えないわね」

「うそ! ちゃんとやったもん!」

「あれで? 超笑わせるわね、あんなぬるい演技。いい? 入浴シーンはドラマの華なのよ? それなのに、あんたの芝居と来たら……退屈すぎて、みんなあのシーンになったら、あくびしながらチャンネル替えちゃうわ」

 だるそうに桃山園が言う。美耶子の頭に血がのぼる。

「あたしの演技のどこがダメなのよ!?」

「ぜんぶよ、ぜっんっぶっ」

「むっきー!」

 地団駄を踏む美耶子。桃山園はそんな美耶子をせせら笑うようにながめる。

「くやしかったら、ここであのシーンを再現してみなさいよ」

「やるもんっ!」

 自分からパジャマのボタンに手をかける美耶子。脱ぐ気だ。

「あたしが亀ちゃん役をやるわ、ここが浴槽。服脱いで、入ってくるところからね」

 桃山園はソファに腰掛ける。

 美耶子は勢いよくパジャマを脱ぎ、パンツ一枚になる。下着に手をかけて、一瞬かたまる。

 自分はいったい何をしているのだろう。

「あれ? どうしたのぉ? もう演技に迷いがでちゃった? 口ほどにもないわねぇ」

 桃山園の煽りに、また怒りがこみあげる。とめかけた手を動かし、パンツを脱ぎ去る。

「後ろのカメラわかってるわよねえ? あんた、今日の本番で撮られること意識して、おしりに力入れてたでしょう。あれ、ぜんっぜんダメ。ラインが死んでたのよ、わかる?」

 桃山園が指摘する。美耶子はどきりとする。確かに、カメラを意識しすぎていたような気はする。

「あんた、じぶんちの風呂場でそんなにぴっちり脚を閉じてる? そんなことないでしょ? もっとルーズにしてるでしょ?」

 それは確かにそうだ……

 だが、桃山園や窪塚やカメラマンの前で全裸でいるのだ。緊張と羞恥で身体が固まってしまうのはどうしようもない。

「プーッ、げひゃらげひゃら。なにその顔。ぜんぜんダメじゃない。身体にも力入りすぎ。やっぱ才能ないわ、あんた」

 桃山園がはなくそをほじりながらあざ笑うように言う。美耶子の頭に血が上る。

 と同時に、やってやろうじゃないかという負けん気が頭をもたげる。

 美耶子は、えいやとばかりにしゃがみこむと、脱いだ服をたたみはじめる。無防備なワレメをさらしている。

「あら?」

 桃山園が薄い眉をあげ、それからニヤリと笑う。

「今度は立って、おしり突きだしてごらんなさいな」

 美耶子はきゅっとおしりを突き出す。力は入っていない。自然な少女のヒップラインが描かれる。

「そうそう、カメラに向かってね? おしりの穴がよく映るように」

 カメラが寄ってくる。

 美耶子は耐える。ここで妙に意識しておしりに力を入れたら元の木阿弥だ。おしりを下から舐め上げるように撮られても、脚は閉じない。

 

「できるじゃないの。じゃ、お風呂場に入ってきて……ガラガラガラ」

 戸を開けるSEは桃山園が担当する。カメラも移動する。

「セリフはアドリブでいいわ」

「おにいちゃんっ、背中ながしてあげるっ!」

 美耶子は芝居に入っている。

「ほうら、もうダメ。なんで手でおっぱいとか隠してるの? あんたみたいなペチャパイ、隠してどうすんのよ? むしろ、強調しなきゃでしょ?」

 桃山園は自分で自分の乳首のあたりをつまむ格好をした。

「ほら、自分で乳首をクリクリしながら、言うのよ」

「えーっ、でも!?」

「なんだ、できないの」

 鼻で笑う桃山園。

「できるよ、それくらい!」

 美耶子は自分の両の乳首をきゅっとつまむ。

「お、にぃちゃあん……背中ながして、あげ、ゆ」

 ちょっと噛み加減だが、なんとかセリフを言う。

「うん、悪くないわよ。もっと、乳首をいたぶるようにクリクリしないとダメだけどね」

「ん……でもっ……そんなことながらしゃべったら……ヘンだよっ」

「言いつつ、クリクリしてるじゃない。分かってきたようね?」

「これが……ほんとに演技指導なの?」

「そうよ。これがあたしのやり方。できない子には実地にたたき込むの。まあ、イヤなら泣きながらおうちに帰るといいわ」

 桃山園の表情も声も美耶子の神経を逆なでする。

「でっ、できるわよ!」

「じゃあ、続きよ。浴槽に入ってきて。はいっ、ざぶーん」

 SEはやはり桃山園が担当らしい。

 美耶子は浴槽をまたぐようにして、ソファに乗りかかる。桃山園から少し離れたポジションをとる。

「ああ、ダメダメ、浴槽の大きさを思い出して。そんなに大きいわけないでしょう? 二人入ったらキチキチなのよ?」

 桃山園がいらだたしげに言う。

 自分の膝をペチペチ叩く。

「ここでしょ、ここ」

 美耶子は仕方なく、桃山園の膝の上に座った。

 桃山園の顔を見るのはさすがにいやだったので、背中を向けている。

「そうそう、浴槽は狭いから、密着しないとね」

 桃山園が美耶子の胴に腕をまわす。中年男の加齢臭、だけではない垢じみた匂いを感じる。

「あの、カントクさん、お風呂入ってます?」

「いま、入ってるじゃない、やあねえ」

 桃山園はひっひっひっと笑う。

「まあ、リアルでは5日くらい入ってないけど?」

「ひぃっ」

 逃げようとする美耶子。もちろん、桃山園はそれを許さない。

「あらあ、もう降参? やっぱ、根性なし子ちゃんねぇ」

 言葉で美耶子を縛っていく。こんな言われ方をしたら逃げられない。

「続けます! これからどうするんですか?」

「はい。兄妹でしばし、お風呂トークよ。アドリブで」

 桃山園は全裸の美耶子を膝に乗せて、嬉しげに指示。

「いーお湯だよねぇ、おにいちゃん?」

「ほんとねぇ」

 言いつつ桃山園は美耶子の胸をまさぐる。ふくらみのほとんどない美耶子の胸だが、乳首の周辺はぽってりと脂肪が乗り始めている。その部分を親指と人差し指ではさんで、モミモミする。

「やっ、おにいちゃん、どこさわってるのぉ?」

 一瞬、肘打ちの体勢に入った美耶子だが、カメラと窪塚の視線に気づいて演技にもどる。

「美耶子、ちょっとおっぱいふくらんだ?」

「やだっ、おにーちゃんのエッチィ」

「エッチなのは美耶子のほうでしょ? こんなに乳首立てちゃって」

 くりっくりっと美耶子の乳首をこねくる桃山園。

「――監督さん、さすがにこれはテレビ的にはまずいんじゃないですか?」

 怒りを抑えつつ、囁く美耶子。

「あのねえ……あんたみたいなガキの乳首なんて、テレビ的にはどーってことないのよ。こうやって、ビンビンに立つまでしてあげないと、視聴率の足しにもならないのよ」

 桃山園の発言に大きくうなずく窪塚。

「たしかに、乳首を出せば数字が取れる、というのはバブルの頃の幻想。限界の先にこそチャンスはある」

「おじさま……?」

 美耶子は窪塚を見上げる。

「美耶子くん、きみには限界を超える才能がある、そう私は信じているよ」

「おじさまがそうおっしゃるなら……」

 それはきっと正しいのだろう、と美耶子は自分に言い聞かせる。

「そうそう、リラックスするのよ。楽しいお風呂タイムなんだから。大好きなおにいちゃんに乳首をクリクリされて、気持ちいいでしょ?」

「う……うん、気持ちいい……よ」

 実際に、乳首をマッサージされて、身体がポカポカしはじめてはいる。それに、さっきから、カメラが美耶子の身体を舐めるように撮っていて、それにもドキドキする。

 なんといっても、いま、美耶子は桃山園の膝の上で、だらしなく脚も広げているのだから。

「こっちはどうかしら?」

 桃山園の指が美耶子の股間に入ってくる。

「監督さん!?」

「演技よ、演技。それとも、しっぽを巻いて逃げちゃう?」

「う……」

「お芝居でアソコ触られるくらいで音をあげるなんて、しょせんはガキのお遊びってことよねぇ〜」

「遊びじゃないもん! 本気だもん!」

 思わず言い返す美耶子。桃山園はその美耶子の腿を下から持ち上げるようにする。

「じゃあ、覚悟を見せてもらうわよ……ご開帳〜」

「きゃっ」

 下から持ち上げられ、さらに脚を広げさせられる。

 桃山園の両手が美耶子の股間の亀裂を左右に開いている。

 それをカメラがアップで狙う。

「監督さん……これはさすがにダメなんじゃ」

「子供の大股開きくらい、NHKだって放送してるわ。きょうび、これくらいしないと、数字は取れないのよ」

「でっ、でも……っ、丸見え」

「だからいいんじゃない。インパクトがあって」

 美耶子の性器を限界まで広げる。膣の穴まで丸出しだ。

「全国の視聴者に見てもらうのよ、宇多方美耶子の奥の奥まで……っ!」

「あああ……! やあああっ!」

 無表情なカメラマンが美耶子の股間を撮影している。もちろんこれはテストだから、実際に放送されているわけではない。それでも、美耶子は想像していた。リアルタイムに、全国のお茶の間のテレビ画面に美耶子の性器が大写しになっているシーンを。

 家庭の団欒。

 家族の会話がふととまり、全員の視線がテレビに集中する。

 ぞくっ。

 ぞくぞくぞくっ。

 美耶子の背筋が震えた。戦慄だ。

 それも、甘い。

「おやあ?」

 桃山園が意地悪い声を出す。

「どうしたのかしら、穴から、とろっとしたものが出てきたわよぉ?」

「う……うそ」

「うそじゃないわ。自分でも感じるでしょお? おしりの方までたれてきてるわよ?」

 たしかに。感触がつたっていく。

「すごい、触ってもないのに」

 さらに広げられる。カメラがさらに寄る。ほとんど接写に近い。

 びくっ、美耶子の腰がはねる。

「と……撮らないでぇ……」

「役者が何言ってるの? 撮られてナンボの商売でしょうが」

 くにくにくに、周囲の秘肉をマッサージされる。

 さらには、鞘がひっぱられて、クリトリスが露出するくらいに広げられる。

 それでも、肝心の場所には触れられることはない。

「すごいわね、美耶子、あんた、触られてもいないのにクリトリスがパンパンになってるわよ? 反り返って、裏まで撮影されてるわ」

 桃山園の声も昂ぶってきている。

「あんた、クリトリスの裏側をテレビカメラで撮られてるのよ? わかってる?」

「あ……ああ……はあ……と……撮っちゃダメぇ」

「おまんこの穴もすごいことになってるのよ? トロトロになってるのが、生放送で映されてるのよ? みんな、録画開始してるわ」

「やんっ、やぁっ! はああんっ!」

 ぴゅっ、ぴゅっ、美耶子のおしっこの穴がひくつき、しぶきが噴き出す。

「撮られてイクの? 触られてもいないのに、撮られるだけでイッちゃうのね? それも、お漏らししながら」

「やだっやだ、映さないで……っ! あたしがイクとこ、映さないでぇっ!」

 もう止まらない。カメラに犯されている気がしていた。触れられてもいないのに勝手に膣が収縮し、おしりが動いた。

「やあああーっ!」

 びゅっびゅっ!

 美耶子はしぶきを放ちながら、気をやった。

「んふ、やればできるじゃない。じゃ、次のシーンは……」

 桃山園はポケットからバイブを取り出しながら、ひっひっひっと笑った。

つづく