「つまり、ここは体育倉庫ではなく先生の六畳一間の下宿で、先生は自分の生徒を強姦するシーンを想像しているのに過ぎない、ということです」

 滑縄の指摘に、山椎は腰をひねりながら応える。

「しかし、橿原のあそこの具合は本物だぞ。すごく気持ちがいい」

 苦痛にゆがむ智子の表情を楽しむように見おろしながら、山椎は言葉を続ける。

「いやむしろ滑縄よ、こういうふうに考えられはせんか? お前は橿原智子に片思いをしていた、そうだな?」

「はあ……」

「お前は橿原とやる情景を想像していた。人気のない体育用具室に連込んで、なわとびで縛りあげる。いかにも童貞の中学生が考えそうなシチュエーションじゃないか」

 滑縄は無言で山椎を見つめていた。無表情で、男根を智子にしゃぶらせている。

「だが、そこが童貞少年。想像の世界でさえセックスには踏み込めない。そこで大人の男が闖入して、自分の目前で憧れの女生徒の処女を奪うという展開になるわけだ。これが白昼夢だとしたら滑縄よ、精神分析医ならどんな分析をするだろうかなあ?」

 にやにや笑いながら山椎は言い、男根を抜いた。男根には、智子の鮮血がその他の分泌液と交じりあってこびりついている。

「橿原、今度は後からだ」

 山椎は智子を跳び箱の上にうつぶせにさせた。

 智子の痩せた尻をぐっと左右に開き、その間に男根をめりこませる。

「ひぃぃっ」

 山椎は激しく突き上げた。

 智子は歯を食いしばった。眼には涙がたまっている。痛みと屈辱、それらがないまぜになって智子の瞳を濡らすのだ。

「こんなの、うそよ! 悪夢だわ。こんな、こんなことがあるはずない!」

 智子は言葉を連ねた。

「これって思春期の女の子が見るエッチな夢に過ぎないのよ。好きでもない、ううん、心の底から大っきらいな男に無理矢理される、そんな歪んだ想像がむしろ快感を呼ぶのよ。そう、これはそんなくだらない夢にすぎないのよおおお」

「でも、橿原、おまえのアソコにおれのチンポが入っているのは現実だ」

山椎は額に汗をにじませ、快感に顔を歪ませながら言う。

「いいなあ」

 滑縄はうらやましそうにそれを見詰めている。

「夢よ夢よ夢よ」

「気持ちいいなあ」

「マスでもかこうかな」

「現実じゃない、現実じゃない、現実じゃない」

「あうあ、いきそうだあ。橿原、中で出すからな」

「先生、せめて外で出さないと」

「いやいやいや、抜いて、抜いてよおお―――! たとえ夢でも絶対にいやああ」

「うううううーっ」

「あらら」

「いやーっ!」

「出ちゃった」

「出ちゃったじゃないですよ、まったく」

 橿原智子は起き直った。自分の部屋の自分のベッドでだ。

「はっ、夢だったのね。よかったああ!」

 智子はパジャマの股間にしみが広がっているのに気がついた。

「ひどおい、ベトベトぉ」

 手をパジャマと下着の下にくぐらせ、指で触ってみた。

 強い臭いを放つ白濁液が指に付着していた。

 山椎は六畳の和室の万年床に横たわっていた。

「ああ、気持ちよかった」

 呟く山椎の下半身は裸で、射精をしたばかりのようだ。

 布団の横には、ブルマーと体操着が散乱していた。

 通信販売の。

 滑縄は―――

 吊られていた。

 体育倉庫の暗闇のなかで。

 縄跳びが首に食い込み、だらりと身体がぶらさがっている。

 足元にはルーズリーフノートの一片が置かれ、ボールペンで殴り書き。

 

 ――ここはカビ臭い。ここは汗臭い。

 ――でもここだけがぼくを受け入れる。

 

the end.