滑縄の幻想

 情景―――薄暗い体育倉庫のなか。体育用具をしまいに来た当番の女の子(中学二年、13歳)橿原智子は、同じクラスの滑縄ひろし(13歳)に突然襲われ、縄跳び用のビニールロープで手首を縛られ、積み重ねられたマットの上に転がされている。

「いやっ! さわらないでエッチ!」

「智子ちゃん、き、嫌わないで。ぼ、ぼくは前からずっと君のこと……」

「滑縄クンなんかだいっきらい! 来ないでよ」

「わかってるよ……ぼくは醜男だし、智子ちゃんのような子には釣り合わない。でも、好きなんだ! 死にたくなるほど好きなんだよ!」

「だったら、勝手にどっかで死んでてよ」

「冷たいね、智子ちゃん。でも、ぼくだって人間だ。思いが募ればどんなことだってできるんだ。あとでどんな罰を受けることになったとしても……」

「変態! 気違い!」

「なんとでも言ってくれてもかまやしない。ぼくはそんな言葉、さんざ言われ馴れているんだ」

 ひろしは、智子の体操服の上から、年令の割に豊かな膨らみを探る。

「やだ、いやーっ! 誰か、誰か!」

「声を出したって無駄だよ。もう学校にはぼくと君しかいないんだ。君のご両親はとも働きで帰りはいつも夜中だ。だから、君の帰りが少々遅くなっても、心配してここへ探しに来る人もいない」

「そんな、ことまで」

「智子ちゃんのことなら何でも知っているさ。毎晩、君のうちを覗いていたんだ。昨夜、君はご飯を食べた後、オナニーをしたろ? 反町のCDを聴きながらさ……やつにやられているところをいろいろ想像していたんだろ? 口でしたり、おしりからされたり……な、そうだろ?」

「いや! やめて!!」

 智子、耳の付け根まで真っ赤に染まる。滑縄、喋りながら、智子の身体を撫でまわし続けている。

「こうしてもらうことを想像してたんだろ、反町にさ。彼なら許したわけ? 畜生」

 不意に悔しさが爆発したように乱暴に智子の乳首のあたりをつねる。

「いたい!」

「ごめんよ、いたかった? 乱暴するつもりはなかったんだ。ぼくは君を愛しているから、絶対に君をいじめたりはしない。約束するよ」

 言いつつ、またやさしく身体をさわり始める。ブルマーの上を掌で撫でまわす。夢見るような滑縄の表情。

「と、智子ちゃん!」

 がばっと智子におおいかぶさる滑縄。

「いやっ! いやだったら! いやぁっ!」

 嫌がる智子の唇を奪おうとする滑縄、猛烈な抵抗に遭う。

「なんだ!? 誰か、まだ残っているのか?」

 のぶとい大人の男の声。