MA−YU 学園編

第一話 ふたつの始まり

 その年の春は駆け足でやってきて、入学式の季節を持たずに桜を散らしてしまった。

 七瀬まゆは中学生になった。

 背はあいかわらずだが、髪が伸び、顔だちもすこし大人っぽくなり、胸もふくらんだ――と本人は主張しているが、最後の項目については少々あやしい。

 そのなりたて中学生は、おろしたての制服に袖を通して、さっきから洗面所の鏡の前でいろいろやっている。

「む! むん!」

 あまり色っぽいかけ声ではないが、胸元を強調するようにポージング中だ。

「なにやってんだ、そろそろ出たほうがいいんじゃないか? 入学そうそう遅刻じゃかっこわるいぞ」

 歯ブラシをくわえた沢良明が洗面所に入ってくる。三〇センチの身長差はまだまだ埋まらない。

「うーん、おにいちゃん、リボン曲がってないかなあ」

「問題ない」

「もう、ちゃんと見てよぉ」

 不満そうに制服の胸を突き出すようにする。

 近年では制服のデザインを著名デザイナーに依頼して、なんとか入学者を集めようとする学校も多いようだが、祥英学園は創立以来かわらぬ形のセーラー服だ。ただし、没個性な濃紺一色のセーラー服とは異なり、白い襟から胸元まで《祥英ライン》と呼ばれる特徴的なラインが走り、一目でそれとわかるようになっている。

 良明の感覚からすると、正統派のセーラー服のほうがそそるのだが、まゆに言わせるとこういうほうが可愛いのだそうだ。

「おにいちゃんのネクタイはまゆが結んであげるからさ。ほら、さっさとする」

「それくらい自分でしろ。おれも自分で結ぶ」

 良明は相手にせず、うがいを始める。

「ちぇ――」

 まゆは頬をふくらませて、鏡のなかの良明をちろりと見る。

 ばしゃばしゃと顔を洗いだす良明を見て、にっと笑う。

「なんだよ……」

 タオルを探りながら良明が言う。まゆは腰に手をあてて、気取ったように胸をそらす。

「いやなに、おにいちゃんもいよいよサラリーマンに復帰かと思うと感慨ぶかくて。スーツ着るのひさしぶりでしょ? ちゃんと入る?」

 視線はランニング姿の良明の腹に刺さっている。

「おいおい、まだ腹は出てないぞ。それに、おれの場合はまだ正式採用じゃないしな。今日からが最終面接ってとこだ」

「しくじらないでよ、おにいちゃん。ふたりの生活がかかってるんだから」

「るせーな、もう」

 良明は寝ぐせのひどい髪をブラッシングしながら苦笑する。そして、ふっと口調を落とす。

「ごめんな。入学式に一緒に行ってやれなくて」

「あ、また出た、おにいちゃんの『いつもすまないねぇ、ゴホゴホ』が」

 まゆが片眉をあげる。

「いいよ、べつに――そのかわり、キスしたまえ、良明くん」

 命令口調で言って、顔を上に向けて唇をとがらせる。

「お……ああ」

 だれもいないのはわかりきっているのに、ついつい周囲を見まわしてしまう。

 腰をかがめてまゆの唇に顔をよせる。

 ちゅっ、と唇を触れさせてすぐ離す。

「だめ。ちゃんとして」

 まゆは良明の手を掴んで引きもどすようにする。

 しかたなく良明はもう一度まゆと唇をあわせる。

 まゆの方から舌をからませてくる。

「ん……ふぅ……」

 まゆが鼻を鳴らす。良明の手を導いて、セーラー服の胸元におしあてる。

 去年まではぺったんこといってよかったまゆの胸だが、自己申告の通り、少しは弾力が増しているようだ。でも、まだスポーツブラが関の山というところで、良明の掌にすっぽりおさまってしまう。

 良明の掌が、幼いふくらみのなかに、ツンと硬いものを感じる。ついつい掌をまわすように動かして、ふわっとした感触と突起の手ざわりを味わってしまう。

「んん……ん……」

 まゆはうめきながら、舌をつかって良明に反撃してくる。小さな舌の動きを口腔粘膜に感じて、良明の鼓動も速まっていく。

「あは……おにいちゃん……おっきくしてる」

 はふ、と甘い息を吹きかけながら、まゆは良明の股間に触れる。トランクスの上から形を確かめるように指を動かす。

「ばか……やめろって……」

 腰を引く良明だが、かまわずまゆはトランクスのなかに手を入れてくる。少し温度の低いしっとりとした指が亀頭をもてあそぶように動く。

「時間ならまだあるよ……だいじょうぶ」

 まゆは跪きながら良明を見上げる。その手はトランクスをずらして、良明の勃起したものを露出させている。

「朝っぱらから――だめだろ」

「いいもん。まゆはエッチな子だもん。おにいちゃんがめったにしてくれないから、欲求不満なんだもん」

 開きなおったかのように言うと、良明のものを口に含む。

「う……まゆ……よせ……」

「よひゃはひ」

 よさない――と言ったらしい。くわえたものを唇でしめつけながら、舌を動かしはじめる。

 くちゅる、くちゅくちゅと音をたてながら、唾をまとわりつかせる。

「あ……ああ……」

 張り詰めていく。まゆの口の温かさに包まれて、良明は大きく、硬くなっていく。

 ちゅぽン――音をたてて、桜色の唇から良明のものが抜け出すと、ピンと反りかえる。

「おにいちゃんの――すごくなっちゃった」

「ばか」

 良明は拳骨をまゆの頭に当てる。むろん殴るわけではない。こつんと軽く落とすだけだ。

「まゆ、ばかでいいもん」

 舌先をとがらせて、裏筋を舐めあげる。指は陰嚢に触れて、やさしく動いている。

「うあ……まゆ……あんまりそこ舐めると――いきそうだ」

「いいよ、おにいちゃん――出しても」

 まゆはふたたび良明を口におさめて、カリの部分を舌で刺激する。まゆは良明の弱い場所をよく知っているのだ――フェラチオ自体、良明が教えたのだから当然といえば当然だが。

 まゆは切なげに鼻を鳴らしながら、良明を奥まで吸いこんだ。昨日まで小学生だった少女が頬を上気させながら、顔を前後に動かして、良明のペニスに刺激を与えている。

 良明はまゆのセーラー服の襟ぐりから手を差し入れて、乳房をスポーツブラの上から握りしめた。んふぅ――まゆの鼻息が良明の陰毛を揺らした。

 乳首つまんでやる。まゆはうめきながら、舌をつかいつづけている。同時に、右手をスカートのなかにもぐらせて、自分で局部をいじっているらしい。おしりがカクカクと小刻みに動いている。

 まゆが喉奥まで良明を吸いこんで、顔を左右に振った。亀頭が口蓋の凹凸に当たってたまらなく気持ちいい。

「ああっ、出るっ、まゆ――っ!」

「んうううっ!」

 まゆが嬉しそうに目を閉ざす。

 良明の爆発をそのまま受け入れる。

「うっ……うっ……うう」

 精液が吸い出されていく。まゆが射精にあわせて吸っているのだ。身体が蕩けそうなくらいに気持ちいい。

「おひひひゃん……ひっはひへは……」

 口をひらいてまゆは白濁液を舌にのせて見せる。虫歯の治療跡さえないきれいな歯並びが見える。そして、命じられたわけでもないのに、んくんく、と喉をうごかして嚥下してしまう。

「飲んじゃった……おにいちゃんのセイエキ」

「ばかだな……吐き出せばいいのに」

「だって、もったいないもん」

 言いつつ、また指をペニスにそえる。欲望を放出して、硬度を失った肉茎を愛おしそうに撫でさする。

「おい……もう時間やばいんじゃないか」

「だって……まゆ、こんなだよぉ」

 片膝をたてて、スカートをめくりあげる。ショーツの股の部分が変色するほど濡れていて、そこに指をあてると、ちゅくちゅく音がするほどだ。

「しょうがないな」

 良明は時計を見る。どっちにしろ、この状態のまゆを外に出すわけにはいかない。フェロモンを出しまくりで、満員電車なんかに乗せたら一発だ。

「早く、こい」

 まゆの手を引いて、居間兼寝室の六畳間に移動する。ふとんを敷きなおす暇はない。ざぶとんを二枚並べて、その上にまゆを押しやる。

 セーラー服の少女はするするスカートとショーツを脱ぎすてると、座布団の上でおしりをついて、はしたなく膝をひらく。

「きて……おにいちゃん」 

 良明はそのまゆの脚のあいだに指を入れた。

「あっ……ん……」

 すでにぐっしょりになっているまゆのその部分は火照ったように色づいている。発毛が遅くて、産毛のような和毛が申し訳程度あるだけで、ほとんどツルツルのワレメだ。子供サイズの肉の花びらが、愛らしく顔をのぞかせている。

 指でクリトリスに触れてやる。ぴくぴくぴくっ――まゆは身体を震わせて反応する。

「そこ……さわられるの好きぃ……」

 鞘のなかのこりこりした部分をつまむようにしてやる。くにゅ、と小さな芽が顔を出す。そこを直接いじるとまゆは痛がる。だから、そこは舌でやさしく――

「あああっ! おにいちゃんっ! いいっ! 気持ちいいよぉ!」

 安普請のアパートだけにヒヤヒヤする一瞬だ。さいわい、ここは角部屋で、隣は時間が不規則な水商売の女性だから、いまごろは熟睡中だろう。

 希望的観測をまじえつつ、良明は舌による秘部へのマッサージを続ける。こういう時のまゆに声を抑えさせるにはさるぐつわをかませるしかないが、さすがにそこまで踏み込む勇気は良明にはない。戻ってこれなくなりそうだ。

「まゆ――いきそうか?」

 舌でクリトリスを弾きながら訊く。

「んっ……んん……」

 まゆは顔を真っ赤にして、うるんだ目を良明にむける。

「だめ――指とか舌じゃ厭だ。おにいちゃんのオチンチン、入れて」

「でもなぁ」

 時間が、という問題がある。

「オチンチンくれなかったら、イくの、がまんするもん」

「しょうがないやつだなあ」

 困り果てて――いずれにせよ回復してしまったその部分をなんとかする必要には迫られていたのだが――良明はまゆの身体に自分を覆いかぶせていく。

「すぐイけるように努力しろよ」

「うん、うん。だから早くぅ」

 良明はその部分に自分自身をあてがう。入れるときは今でもすこし緊張する。まゆのその部分は、いまでも、大人のペニスを受け入れられるとはとても思えないほど幼いからだ。

 でも、挿入すると様相が一変する。

 もちろんキツいのだが、しかし、湿潤な襞がピチピチと吸いついてきて、奥の質感が豊かで、とても未成熟な少女の内部とは思えない。

 良明はまゆの中に自分自身を埋めていく。

「はあ……ああ……おにいちゃん」

 まゆがしがみついてくる。

「おい、制服、しわになるぞ」

「ちょっとだけ――ちょっとだけだから――んん」

 良明の胸に顔をうずめ、熱い息を吐きだしながら唇をあててくる。胸から喉元にかけて、激しく口づける。

 まゆを早くイかせてしまわなければ、良明のほうがハマってしまいそうだ。

「いくぞ、まゆ――」

「うんっ、きてっ」

 良明はまゆの中で激しく自分自身を動かしはじめる。

「あはあっ! ああっ! おにいちゃんのがっ! まゆの中で動いてるよぉっ!」

 きゅんきゅん締めつけてくる。

「うあっ、まゆの中――すごいっ」

「おにいちゃんのも、すごいよぉっ! ああっ、当たる、当たってる……ううんっ!」

 ピストン運動にあわせて、まゆの腰がうねっている。その波長が重なる一瞬に、良明の先端がまゆの最奥部に届く。その瞬間にまゆの意識がスパークするようだ。

「おっ、にいちゃっ……あはっ! ああっ! 気持ちいいっ! 気持ちいいよぉっ!」

 新品の匂いのするセーラー服に包んだ身体をくねらせながら、少女は激しく喘いで高まっていく。

「あっ! ああっ! おにいちゃ……んひっ! い――きそう……っ!」

「おれも……おれもいくから……まゆ、いっちゃえ」

 良明も息をあらげながら、フィニッシュに向けて動きを速めていく。

 接合部分がぷちゅぷちゅ音をたてながら、おたがいの体液がブレンドされたものを噴き出させながら泡立っている。

「んっ、うんっ! い……く……いっちゃうっ! おにいちゃんっ、すきいっ!」

 まゆがわななく。身体が硬くなり、がくがくと震え、かかげられた脚がぶるぶるっと痙攣する。

「い……っくぅ……よぉ……っ!」

 まゆがのぼりつめた瞬間、良明も達している。まゆの中から引き抜くと、手を添える必要もなく精液を弾けさせる。制服にかからないようにするのが精一杯で、まゆのワレメから内股にかけてたっぷりとぶちまけてしまう。

「はあ、はあ、はあ……」

 まゆは小鼻を開いて大きく胸を上下させている。

 良明も余韻にひたりたいところだったが、視界の端に入った時計の針を見て、その考えはぶっとぶ。

「おいっ! 遅刻するぞっ! 早くパンツはいて、出発しろぉっ!」

 ティッシュを激しく取り出しながら、良明は怒鳴った。

つづく。