「じっとしておいで。まだ、こわしたくはないから」

 ぼくは言い、指を前後に動かしはじめた。

「あ、あう」

 少女の身体がガクガク動いた。

 筋肉の収縮が指に伝わる。

 熱い、内臓の痙攣が心地よい。

「この奥の宮殿に帰れない仔猫が泣いてる」

 ぼくは指をいちばん奥まで差し入れた。少女が首を前にたおし、長い声をもらす。

 指先が、とどく。きらびやかな宮殿のはいりぐち。そこに至る隘路はたえずぼくの指をしめつけている。

「でも、そこにはたどりつけないんだ」

 また、喪失感がぼくの胸をかむ。重さのない冷たい風が胸をかけぬける。

 ぼくは少女のなかから指をぬいた。もはや興奮は胸のうちにはない。ただ、答えを得られなかった寂寥感だけがあった。

「そう……」

 声がした。

「……仔猫はあなただったの」

 少女の切れ長の目がぼくを見あげていた。

「やっとわかった」

 そう言うと、少女は口許をほころばせた。愛らしい笑顔になる。

「もう、ひとりじゃないのよ」

 ほんものの猫に語りかけるかのように、少女はぼくの首に抱きついた。

「帰ってきて、いいの。わたしはあなたのおうちになるから」

 ぼくの性器が反応することなど今まではなかった。だが、少女の言葉に解放されたかのように、それは突如おこった。

 少年のように初々しいぼくの性器は、飾り毛さえない少女の入り口に当たり、そして――

「!」

 少女は声のない叫びをあげて、ぼくにしがみついてきた。

 彼女の宮殿に至る隘路は、指よりも太い異物の侵入にはまだ耐えきれないのだ。

 ぼくは、彼女を破壊しながら帰途についていた。

 少女が痛みにたえかねて嗚咽をもらしている。

 なんという哀しみ。

 ただ、還るべき場所にたどりつくまでに、なんという罪を犯さねばならぬことか。

「いいの、帰ってきて……」

 切れ切れに叫ぶ少女の声にさらに罪悪感をつのらせながら、それでも――

 ようやく先端が彼女の宮殿に届いた。

 ぼくの分身は少女のなかにある。すこし動かすだけで、少女はぴくんと身体を震わせ、熱い吐息をもらす。

「わたしも……ひとりじゃない」

 ぼくと少女は奇妙なオブジェのようにつながったまま、しばしの時間を過ごした。

 

 

 すべてが終わったあと、ぼくは少女の体をたんねんにすすぎ、もう一度抱いて浴槽に入り、十分に体を暖めた。

 それから、風呂を出た。

 少女に服を着せ、山荘を出た時には、もう雨は止んでいた。

 雨上がりの冴え冴えとした夜空に、星の光がちりばめられていた。

おわり