学園王者としてのおれの生活が始まった。
もう、学園生活は一変したといってもいい。
なんか詐欺同然に契約させられた割に、おれは新しい生活に満足していた。
だって、学内にいさえすれば、授業に出る必要もない。試験があっても、下駄のおかげで名前さえ書けばパスできるのだ。
学園王者は黄金色の特別な校章をつけて他と区別する。だから面識のない上級生や下級生たちもおれを見ると深々と頭を下げるのだ。
学園王者には各種の特権が与えられている。変な話だが、女子更衣室に異変あり、となれば着替え中だろうが何だろうが、とつにゅーあるのみだ。職員会議にズカズカ立ち入っても文句は出ない。学内におれの侵入を阻める場所はないのだ。
もっとも他の生徒がおれに一目も二目もおくのは、学園王者には特殊な能力が備わっているという迷信に基づいているらしい。なにしろ、常識では計り知れない事件を解決するために選ばれているのだから、その能力もとんでもなく非常識なものに違いないと信じられているのだ。
そーゆう能力はおれ自身の自覚する範囲ではなにひとつ存在していないのだが、みんなから祭り上げられるのは、ま、悪い気はしない。なもんで、鷹揚に「んむ、ご苦労」などと声をかけたりする。
気持ちいいと言えば、放課後だ。
基本的に学園王者は第一時限目から通常クラブ活動時間いっぱいまで学内にいなければならない。休みや早退は医者の診断書がなくては認められないほどだが、逆に学内にさえいれば何をしていてもよかった。
小徳館の生徒会長執務室はおれ専用の部屋になっていた。王者ルーム、と扉には記してある。
生徒会予算を使ってダブルベッドを買い、冷蔵庫も買い込んだ。
このダブルベッドの上で、小夜子と戯れるのが日課となった。
小夜子のテクニックの上達ぶりは目を見張るものがあった。
命じれば何でもやった。普段は生徒会長として教師をすら圧倒する威圧感を発しながらも、おれの前では従順そのものだった。
ベルトで手を縛って後ろから責めたり、ちょっとした玩具を使ってみたり、まあ、いろいろ。
おれは至極ふつーの高校生だったので、本格的なSMやスカトロには発展しなかったが、おれがそう望めば小夜子は喜んで応じただろう。そういう方面については小夜子はおれ以上に好奇心が強かったのだ。
おれは別に小夜子に不満があるわけではなかった。だから、その話を最初に小夜子が持ち出して来た時にはおれは二の足を踏んだのだ。
「ねえ、奉仕隊がいつまでもわたし一人というのは変だわ。太助さま、女の子を増やしましょう」
小夜子は裸でおれの身体の上でうねっていた。
腰だけが別の生物のように蠢いている。
「なんだ、おれの相手がいやになったのか?」
おれは手を伸ばし、小夜子の重い乳房を支えながら訊いた。
小夜子は薄く笑う。最近、こういう笑いをよく浮かべるようになった。
「まさか。でも、太助さまは学園王者の特権をあまり使っていないようじゃない? 授業に普通に出ているし、他の生徒を使役することもない」
「そりゃあ、な。別におれ、他人を支配するとか、興味ないもん。第一、クラスメートの連中との関係がギクシャクするのがいやなんだ」
学園王者になったばかりの頃は、おれも特権を使うことが楽しかった。だが、クラスの連中がおれに対して遠慮のベールを張って接して来るにおよび、おれはあえて今まで通りの生活に戻るようにしたのだ。とはいえ、放課後の悦楽までは捨てられなかったが。
小夜子はおれの目をじっと覗きこむようにする。切れ長のきれいな目だ。おれの指示により、小夜子はコンタクトレンズに代えた。そうすると優等生タイプのおとなしい印象は消え、燃え立つような女の表情が露になる。おれと一緒にいる時以外の小夜子は、伊達眼鏡をかけて生徒会長のイメージを維持しているのだ。
「太助さま、あなたは学園王者―――有事の際には命を捨てても学園の平和を守る英雄なのよ。わたしたち一般生徒は、あなたのためにもっと奉仕するべきだわ。どうして遠慮することがあるの?」
「ああ……そうだな」
おれは小夜子の視線に気圧されて肯いた。学園王者はリスクが大きい。もしも、異次元との扉が開き何か事件が起こったら、命がけで問題を解決せねばならないのだ。幸いにして、いまだ問題は何も起こっていないとはいえ、未来の事件に対して事前に責任を負わされているのは大きな十字架であるといえる。任務をもしも拒否すれば、規定によりおれは退学を食うし、あらゆる教育機関からの締め出し、OBたちの息がかかった社会分野からもシャットアウトされる。異能学園と異名をとる小徳学園の卒業生たちのコネクションを考えれば、もはや人生を破壊されたも同然のダメージを受けるというわけだ。
考えてみれば、その危険に対して、現在受け取っている代償は決して十分なものではないのかもしれない。
「わたしが女生徒たちを組織して、奉仕隊を充実させるわ。太助さまにもしも希望の女生徒がいれば、真っ先にここに連れて来ましてよ」
おれの脳裏にはすぐに真奈の姿が浮かんだ。学園王者におれがなってから、まともに会話をしていない。真奈がおれを避けている。
真奈とは気のおけない友人関係だった。お互い子供の頃から知っている。だが、実質には手を握ったこともない。フォークダンスとかは別として。
「……真奈」
「まな?」
小夜子が小首を傾げた。淫猥な笑顔が口許にはある。
おれは慌てて打ち消した。
「なんでもない! 女生徒の選択は任せる。ただし、むこうの意志は尊重しろよ」
「わかったわ」
小夜子はおれの根を絞りあげながら、声をたてて笑った。
それからの数週間のことは―――描写にも困る。
日替わりで女生徒が王者ルームのベッドに横たわった。
アラブの大富豪でもこれほどの性生活は実現不可能だろう。
毎日、違う子がおれに抱かれに来るのだ。
同級生もいれば上級生もいた。例外なく、一般的に「可愛い」と表現される子ばかりだった。
一年生の子もいた。アイドル顔負けのルックスをしていると思ったら、本物のアイドルだったということもある。小徳学園出身の大女優に憧れて入学した、子役出身の美少女アイドルだったのだ。その子は、おれと小夜子と三人とのセックスを夜まで繰り広げた。小夜子ほどではないが、実にテクニックも優れていた。
年下という点では、中等部の子さえ来た。さすがにおれもためらったが、小夜子は頓着しなかった。中等部の制服であるセーラー服を剥ぎ取り、その子を全裸にすると極太バイブで責めたてたのだ。もうその子の乱れること乱れること。その狂態を見ているうち、おれの逡巡も消えうせた。おれもその子を抱き、あまつさえ小夜子の勧めに従ってアナルさえも奪ってしまったのだ。さすがに終わってから後悔は禁じ得ず、
「今度は初等部の子を連れてこようか?」
という小夜子の提案は却下した。
それにしても、荒淫の毎日。
おれはいつしか授業にもまったく出なくなり、家へすら帰らなくなっていた。王者ルームにこもりっきりの生活になっていたのだ。
女の子は小夜子が連れて来る。その後は、小夜子も一緒に楽しむこともあれば、おれ一人の時もある。女の子たちはただただ淫乱に振る舞う。女の子には何をしても勝手。ただ、コンドームの着用だけは忘れなかった。
飽きることはなかった。毎日違う肉体を賞味できる。そのうちの半分弱は処女でもあった。なんのためにおれに抱かれに来るのか、彼女たちに聞いたことがないわけではないが、答えはいつも同じ。
「学園王者、太助さまに抱かれたくて参りました」
と。
やはり興奮するのは顔見知りの二年生の女子が来た時だ。
特にクラスメートは血管がちぎれそうになる。
クラスでも清楚なイメージで男子から絶大な支持を受けている川瀬佑美を抱きしめた時、おれは歯ぎしりするクラスの男どもの顔をイメージせずにはいられなかった。
佑美は体育の授業の直後おれのもとに来たため、体操服姿だった。
おれはブルマーの上から佑美を執拗に愛撫した。狂っていた。
固くまぶたを閉じた佑美が、おれの名前を呼びつづけるのを聞いていた。
ブルマーの股間の色が変わっていた。佑美の分泌したものが、ブルマーを濡らしていたのだ。
佑美の体操服の中に手を入れ、ブラジャーだけを剥ぎ取った。
そして、体操服ごしに乳房を愛撫した。
こぶりな佑美の胸。愛撫を繰り返すうちに、乳首が体操服を押し上げ始める。
その乳首をおれは吸う。体操服の布一枚を隔てて。
おれは佑美を裸にしないことに固執した。
挿入する時もそうだ。ブルマーの股間の布を左にずらした。
ピンク色の襞の半分しかあらわになっていない状態で、おれは根を沈めた。
佑美は泣いていた。
痛みのためか、それともおれの異常な愛し方のせいか。
だが、責めつづけるうちに、佑美の声には甘やかな音律が混じり始め、じきに自分から身体を動かし始めた。
一度目はコンドームをつけたまま、中で。
二度目はコンドームを外して、佑美に舌で奉仕させた。
佑美の顔におれが放ったものがべっとりとついた時―――おれは意識を失なっていた。
おれは朦朧としていた。ここ数日、まともに食事すら取っていないような気がする。というのも、もはや今日が何曜日で、いつからこんな生活をしているのか、わからなくなっていたからだ。
気がつくと、おれは真奈の膝の上に頭を乗せていた。
そこは、真奈が所属する茶道部の部室であった。今は他の部員はいない。
茶道部の部室の一角にしつらえられた簡易座敷におれは横になっていたのだった。
「目が覚めた?」
真奈は大きな瞳をおれに向けていた。
おれの両の目から、なぜかこの時涙が流れ出た。
「真奈……おれ……」
言葉が思いつかなかった。ただ、なぜだか無性にあやまりたかった。
「太助ちゃんね、ふらふらと校庭を歩いていたのよ。まるで夢遊病者のようだった。他の生徒は学園王者のあなたに遠慮して、誰も近づかなかったわ。仕方がないから、あたしが肩を貸してここまで連れて来たのよ。それとも、小徳館の方がよかった?」
真奈の声には若干の―――いやあからさまな皮肉があった。
おれは首を横に振った。
「あそこには、もう二度と戻らない。学園王者なんか、二度と名乗らない」
「他の男子生徒が羨ましがってたわよ。酒池肉林だって」
真奈は面白がっているような口調だ。ただ、手はやさしく、おれの額の生え際あたりを撫でてくれている。
「あたしもねえ、実は生徒会長に命じられたことがあるの。太助ちゃんの伽をしろって。他の子の話を聞くとね、なぜだかわからないけど拒否できないんだって、生徒会長に命じられると。でも、あたしはいやだって言えたの。驚いたような顔をしていたわ、生徒会長」
真奈が……。
もしも、真奈が王者ルームを訪れていたら……おれはどう振る舞ったろうか。
おれは、自分のおぞましさに吐き気がした。おれは抱いていたに違いない。真奈を。佑美を興奮の極みの中で犯したのと同じように。あるいは、それ以上の貪婪さをもって。
「真奈、真奈、許してくれ。おれはどうかしていたんだ。最初のうちは確かに有頂天になっていた。だけど、途中からわけがわからなくなっちまったんだ」
おれは真奈の腿を抱きしめた。子供のように縋りついて泣き出した。
「もういいよ。どっちにしろ、終わりだもん」
真奈の声が頭上、遠くから響いた。
おれはふっと寒気を感じて顔を上げた。
そこには―――
「それがあんたの本音というわけね、学園王者」
薄笑いを浮かべている小夜子の顔が。
真奈はいない。そこは、茶道部の部室でもない。第一、真奈は茶道部だったのか?
そこはいつものダブルベッドの上。おれと小夜子は全裸でいた。
「どうして……」
おれが茫然と口を開いた時、ドアが秘めやかにノックされる。
小夜子は視線をドアに向けることさえせず、すべてを既に諒解した者の余裕でもって、「お入り」と告げた。
ドアが静かに開くと、そこには制服姿の真奈が立っていた。
真奈の顔には表情がない。うつろな視線を前方に向けている。
小夜子が笑った。おれに視線を垂らして。
「さあさ、お待ちかねのメインディッシュよ、学園王者さま」
「真奈……」
おれの声にも真奈は反応しなかった。
真奈はドアを後ろ手に閉め、ゆっくりと頭を下げた。
「2年F組の志村真奈です。学園王者さまに抱かれに参りました」
真奈の声には張りがなかった。今までの女生徒たちと同じだ。
小夜子は横目で真奈の様子を見ていた。満足そうな笑みが口許に浮かぶ。
「お脱ぎなさいな、志村さん。学園王者さまはお待ちかねよ」
「はい」
真奈は肯くと、ブレザーのジャケットのボタンを外し始めた。
「よせ」
おれはかすれ声で囁いた。
「目を覚ませ、真奈」
小夜子の顔が間近に迫る。
「学園王者さま、いったいどうしたの? 念願の志村真奈よ。存分に味わうべきじゃない?」
真奈はジャケットを脱ぎ、スカートを落としていた。
カッターシャツの下からは純白のパンティが覗く。その小さな布が、真奈がスカートを脱ぎ去るために脚を動かす度に、微妙によじれ、その下にある丘の存在を感じさせる。
なんということだ。おれは勃起している。
小夜子の掌が擦り始めている。
「まあ、なんて硬さ。よほどご執心だったのね」
「やめろ……真奈だけは、だめだ」
「なぜ? 幼馴染みだけは大事に取っておきたいの? あんなにたくさんの女の子をおもちゃにしたくせに」
「それは……おれが馬鹿だった」
おれはうなだれた。小夜子はおれの根をいじり続けていた。おれの弱点を知り尽くしている。抗うことなどできない。おれの根はますます充血し、女の肉を貪婪に求め始めた。
「さあ、真奈さん、こっちへ……」
小夜子が招く。
パンティとブラジャーだけの姿になった真奈は、ゆらゆらと揺らぎながら、ベッドへと近づく。
おれは真奈の顔を凝視した。
真奈の目はうつろだ。なにものをも見ていない。
「真奈!」
おれは叫んだ。
「目を覚ませ、真奈!」
「無駄よ、学園王者。わたしの術は完璧、真奈さんはよほど強いショックを与えない限り、夢から醒めないわ」
小夜子があざ笑う。なんという笑顔。まるで妖女のそれだ。
真奈がベッドの側まで来る。白い膝がベッドに乗る。
おれは身を乗り出し、その膝に思いっきり歯を立てた。
がぷ。
「いったーい!」
悲鳴が真奈の唇から発せられた。
「なにすんのよ、もうっ! 太助のバカっ!」
平手打ちがおれの側頭部にヒットする。
「えっ、なに、ここ……きゃっ」
真奈が正気に返ったらしい。自分の姿に気付いて、身を縮こませた。
「なによ、太助ちゃん、その格好は……」
真奈は顔を真っ赤に染め、おれから視線を外した。むろん、おれは全裸で、しかも股間が屹立している。
「ばかなことを……」
小夜子が呟いた。まったく狼狽していない。催眠術を破られても落ち着き払っている。
真奈は小夜子に強い非難の視線を向けた。
「生徒会長、これはいったい、どういうことなんですか!?」
「志村さん。せっかく夢見心地の中で初体験をさせてあげようと思ったのに……それも学園王者の太助さまとね。でも、こうなってしまっては……」
小夜子の黒髪が下からの風にあおられるかのように持ち上がる。
その裸身が一瞬、闇に飲まれたかのように見えた。いや。
闇が小夜子から生み出されているのだ。
小夜子の股間から。形を持った闇が、雲のように放出されているのだ。
「異次元の……扉」
おれは呟いた。
「そう……今度の扉はね、もう開いていたの。それも、わたしの身体の中に」
小夜子が凄絶な微笑を浮かべて言った。
「インキュバス……夢魔? なんでもいいわ。女の肉体を棲み家とし、若い生命のしずくを糧とする。そのようなもの。それが、わたしの中に入り込んでしまった。だから、必要だったのよ。学園王者と、彼に奉仕する女たちが」
異次元からの来襲者。それは既に訪れていたのだ。それも、一番最初から。
小夜子は自分の股間を指で開いた。
濡れた、桜色の秘められた唇。
その奥には闇が渦巻いている。
「いでよ、闇の眷属たち」
小夜子の誘いに応じ、小夜子の体内から―――正確には小夜子の体内にある扉の<向こう側>から、黒い翼あるものどもが飛び出して来た。
「ひっ!?」
真奈が後退る。
黒い影たちは翼を動かして、真奈の頭上に浮かんでいた。
まるでSFX映画の一シーンだ。だが、二匹の生き物―――ゴキブリに筋肉の鎧をつけて背中に蝙蝠の翼を生やしたようなギトギトヌラヌラのそいつら―――は確かに実在していた。
それも邪悪な意志を持って。
「邪天使と黒天使―――というのよ。見た目は悪いけど、なかなかテクニシャンなの。女の子の身体をよく知っているわ」
小夜子が涼やかな声で紹介した。
二匹の形態はよく似ているが、一方が半透明に近いグレーであり、もう一方は漆黒だ。どうやら前者が邪天使、後者が黒天使だろう。
邪天使たちは、ぎぃ、と声を立てた。あいさつのつもりか。
真奈はと見れば、半分卒倒しかけている。
邪天使、黒天使が両側から真奈を抱きかかえた。
真奈はもがいた。悲鳴も上げられない。
「真奈!」
おれはベッドから飛び降りようとした。顔が何かにぶつかった。透明な壁だ。ベッドのまわりに、いつの間にか透明な壁ができあがっている。
小夜子が流し目をくれる。
「無駄よ。この壁は破れはしないわ。さ、あなたが守ろうとした果実が邪天使たちにもぎ取られるさまを見学していなさい」
邪天使が、真奈のブラジャーをはぎ取っていた。ぷちん、と音をたてそうなほどに張り切った乳房が揺れながらこぼれ出す。
「やだっ!」
胸を覆い隠そうとする真奈の腕を黒天使が封じ、はがいじめにする。
邪天使の顎が開き、奥から粘液に覆われた触手が伸び出した。触手の先端には緑色のいぼが無数に吹き出しており、そこから粘液が分泌されているらしい。
触手が真奈の胸に伸びる。
「絶対やだ! 助けて!」
真奈が泣き出した。そういえば子供の頃から真奈はカエルとかあのへんのヌラヌラ系統が苦手だったのだ。
ぴちゅ。
触手が真奈の乳首に吸いつく。
と、見る間に触手が回転を始める。
「きゃっ!」
真奈の身体が痙攣的に伸びる。
邪天使は、真奈のもう一方の胸を掌でこねている。小錦の掌よりもでかいと思われる邪天使の掌が、白い肉の山を揉みしだく。
「邪天使は胸を責めるのが上手なの。特に触手で乳首を苛められるとね。ほら、真奈さんの顔が上気してきた」
小夜子が楽しそうに言う。
おれは真奈の表情を凝視した。
真奈は嫌悪に顔を歪めている。だが、額にはうっすらと汗をかき、頬には血がさしている。そして、息が荒く、切なくなっている。
邪天使の指が真奈の乳首をつまむ。
尖っている。ピンク色に染まった乳房の頂で、ピンと尖り立っている。
その乳首の先端に触手が触れた。
「ああっ!」
真奈の唇が割れ、叫びが漏れた。
「ほら、ね」
小夜子は目を細めて軽く首を傾げた。