Karen

玄猫

司会 「次の商品のご紹介です。石崎遥菜(いしさきはるな)23歳です。150万円よりとなります。」
「ヒューッ!」
巨大なパーティー会場のような場所。立派な内装とは逆に外見は崩れかけた小さなビルだ。これだけ巨大なのに窓は一つもない。それもそのはず、ここは人身売買の現場なのだから。
いばら かずひと
楚一人
「おいおい。遥菜、ちょっと安すぎねーか?」
楚一人。25歳。プレゼンター。
かんのまさとし
神野正敏
「相場だろ。ウチは処女(ヴァージン)が売りだからな。ヤツ、小さい頃犯されて非処女だから。」
 神野正敏。27歳。一人のこの道の先輩だ。この組織のボスの親戚。
一人 「そぉですか。でも我が社では珍しい非処女でプレミアがついたり・・・。」
正敏 「ははは。ブランド品かよ。」
一人 「いや、一応我が社のブランドだし・・・。」
正敏 「ははは。そうそう。処女といえば、お前調教師の勉強もしてんだよな。今度、幼女(ロリータ)の調教に立ち会ってみないか?」
一人 「先輩!僕はロリータの調教には反対です。」
正敏 「ははは。そうだったな。」

…ロリコンなんかくそくらえだ。一人の中にはそんな心がある。小さい頃の、恐怖。
一人がまだ10歳だった頃、家に20〜30位の男が押し入り、7つの妹、香恋(かれん)を犯され、攫われた。
「ヘー。かわいーじゃねーか。名前、何てーんだ?」
香恋 「い…いばらかれん。」
「へー。かれんちゃんか。」
男はそう言って香恋の股間を厭らしく撫で回す。
香恋 「やめてェーっ!助けて!お父さん!お母さん!」
「ははは。テメーの親父とお袋ならもう死んでるぜ。」
香恋 「そんな...お兄ちゃん!助けに来てェッ!」
「何ッ!?まだ居やがったのか!…まあいい。出てきたら殺すまでだ。」
一人は恐かった。今出たら“確実に”殺される。金属バットを持つ手が、震える。
男は香恋のスカートをめくり、パンティの上から刺激する。
香恋 「ひあッ!」
香恋が痙攣を起こした。
「ほう。子供のくせに感じるんだな。」
香恋 「うぅぅ...」
「泣いたって無駄だぞ。」
男はそう言って香恋のパンティを下げた。そして男は自分の一物を取り出し、強引に捻じ込もうとした。
香恋 「ひぎいッ!!」
香恋は大声を上げ、気絶した。
「入るわけねーか。」
「シコシコ...」
「ビュッビュッビュッ!」
男は香恋の腹から股間の下まで真っ白な濃い液体を大量にぶちまけた。
「はァはァ。こいつは高く売れるな。」
男はそう呟き、香恋を抱えて家から出て行った。
「ドサッ。」
一人は男が出て行くと同時に緊張の糸が切れ、香恋を更に心配になり、それを脳が処理できなくなったのか、気を失った。
思い出しただけで背筋の凍る過去。思い出したくないのに、毎日香恋が夢に出てくる。思い出さずにいられない。
正敏 「おい。一人。一人!?」
一人 「あ。はい!」
正敏 「どうした。」
一人 「いえ、別に。」
正敏 「遥菜、1500万円で売れたぞ。10倍だ10倍!値段の増え方ではでは我が社始まって以来の快挙だ!」
一人 「そうですね。良かった。嬉しいです。」
正敏 「なんだ?その気の抜けた喜び方は。担当お前だろ。お前いつもそうだな。」

一人の家。かなり古いコンクリート作りで、中でも一番古い部屋を一人は借りている。
一人 「疲れた〜。久々のプレゼンだもんな。でもマジで150万円程度じゃぁやってらんねーな。」
一人はぶつぶつ言いながら帰ってくると、部屋のまん前に幼い少女が全裸で倒れていた。
一人 「おい!大丈夫か!?」
揺さ振ってもぐったりしている。死んでいるのか。
見ると少女の股間からドロドロと精液のような物が流れている。レイプされていたらしい。
妹を犯されたときのことを思い出してしまう。
とにかく、一人は少女を部屋へ入れ、脈と呼吸を確かめた。脈も呼吸も乱れてはいるが止ってはいない。
そして体を洗い、服を着せ、ベッドへ横にした。
少女 「ん?…ここは?」
少女は目を覚ました。
一人 「起きたか。ここは僕の部屋だよ。君は家の前に倒れていたんだ。」
少女 「助けてくれたの?」
一人 「ああ。これを飲んで。」
一人は買ってきたスポーツドリンクを飲ませた。少女はこくこくと美味しそうに飲む。
可愛らしい。一人の中に恋愛感情のような物が生まれてしまった。
でも、それは性的なものではない。幼い少女といると、とてもプラトニックになれる。
人がロリコンになるのは初めて恋と言うものを知るのが5〜10歳くらいだからだと言う。
その頃を心のどこかで思い出して人はロリコンになる。
そんな小さい頃に性的なものを考える人は居ないから、ロリコンはあまりセックスに興味のない者が多いと言う。
しかし一人はこの説には否定的だ。
…7歳の妹が犯されたし、現にここに犯された少女がいるし。
でも、現に一人の初恋は結構早くて6歳。転校してきた隣の席の女の子。
そして、少女に恋する自分もいる。
一人 (香恋。生きていれば22歳か。)
少女 「お兄さんはどうして助けてくれたの?」
一人 「え?君が倒れていたからに決まってるじゃないか。あ。名前聞いていなかったね。君の名前は?」
少女 「嗄恋(かれん)。」
一人 「え!?」
嗄恋 「どうしたの?」
一人 「いや、僕の妹もかれんって言う名前なんだ。偶然だね。」
嗄恋 「へ〜。そうなんだ。お兄さんの名前は?」
一人 「一人。楚一人。」
嗄恋 「かずひとさんか〜。」
一人 「もう一度寝る?」
嗄恋 「お兄さんと?」
一人 「…?」
嗄恋 「お兄さんと寝るの?」
嗄恋は自分の股間を指差した。
嗄恋は売られて“寝る=セックスする”だと思っているのだろう。
穢れの無い、毛も生えていないものが、なにゆえ穢れた棒に汚されねばならぬのだろう。…何故。
一人 「違うよ。休むかって聞いてるんだ。」
嗄恋 「うん。」
嗄恋は眠りについた。
「ガチャッ。」
正敏 「おーい。一人!ビール買ってきたぞ!」
一人 「しーっ!!起きちまうだろうが!」
正敏 「誰が?」
一人 「ぎく。」
正敏 「ん〜??あ〜っ!結構かわい〜じゃね〜か!オメーも『先輩!僕はロリータの調教には反対です。』とか言ってるくせにロリータ調教してんじゃねーか!ちょっと触らせろよ!」
正敏は嗄恋に手を伸ばした。
一人 「や…やめっ!」
「ぱんッ。」
一人が正敏の手の甲をはたいた。
正敏 「痛ゥ...何も叩く事ねーだろ。」
一人 「あ…ごめんなさい。」

 
正敏 「売り物じゃない〜?」
一人 「え…ええ。」
正敏 「じゃ〜、何だよ。」
一人 「怪我して倒れてたから手当てただけですよ。」
正敏 「汚して?おまえ、やったんじゃねーか。」
一人 「その“けがす”じゃないですよ!!」
嗄恋 「お兄ちゃん、その人、誰?」
嗄恋が起きてきた。
一人 「あ…僕の先輩だよ。でもスケベな人だから近づくなよ。近づいたらお尻触られっぞ。」
正敏 「ひでーな。触らねーよ。」
一人 「触ろうとしてたくせに。」
嗄恋 「触ってもいいよ。」
一人・正敏「え゙っっ!?」
嗄恋 「男の人にお尻とか触られるの、慣れっこだもん。」
一人 「嗄恋。もう君は誰にも触られなくていいんだ。一人の人間として生きていいんだ。」
一人は嗄恋を抱きしめた。良くアホっぽいドラマとかでやってるヤツをマジにやってる。
嗄恋 「お兄ちゃん…。」
正敏 「あのな…。」
一人・嗄恋 「あ。」
正敏 「お前らは何をいちゃいちゃしとんじゃ。ものすんげ〜年の差でっ。」
何故か沈黙。
嗄恋 「ビールでも飲む?」
一人 「お前は飲めんだろ。」
正敏 「ところで嗄恋ちゃんはお母さんとお父さんはどうしたの?」
一人 「先輩っ!」
正敏 「あ゛。」
嗄恋 「パパとママに捨てられたの。」
気まずい空気が流れる。
嗄恋 「でも気にしてないから!」
正敏 「そうだよね!」
一人 (んなわけないでしょう。)
しかし10分もすれば何故か場は元に戻った。
『性に関する犯罪者二人のいる部屋にロリ美少女一人を放置することは危険か?』
 とゆー、この状況をある意味的確に(?)表しているこの質問に対し、『危険ではない』・『安全』と答えれば、異常者だ。でもここは和やかで、『危険ではない』で、『安全』だ。

数日後。一人は普段は自分の部屋でゴロゴロしている。
一人 「仕事がしたい〜?」
嗄恋 「うん。」
一人 「何のだよ。児童買春でもすんのか。」
嗄恋 「…そうだよ。」
一人 「本気かよ。」

 
同じ日。
「カタカタカタ・・・」
一人は会社(人身売買組織)のPCのデータベースで調べていた『児童買春』について。
居た。たった一人。顧客が。
「PPP...」
まつやま
枩山
「はい。枩山です。」
一人 「神野の者です。以前我が社の商品を買っていただいた枩山様に間違いありませんね。」
枩山 「はい。そうですが。小学生ですね。」
一人 「ええ。訳あってお売りできないのですが、美少女が居ましてね。」
枩山 「本当か?金はいくらでも出すから売ってくれないか?」
一人 「すみません。金はいくら出されても売れないのです。今日の午後1時半、第一倉庫へ来てくださいませんか?」
枩山 「ああ。構わん。1時半だな。確かに。」
一人 「ありがとうございます。」


一人 「かれ〜ん。仕事みっかっ(てしまっ)たぞ〜。」
嗄恋 「本当!?」
一人 (やっぱりあまりやらせたい仕事じゃないな…。性に飢えた獣の相手なんか。)


1時半。第一倉庫。この倉庫は今は倒産していて人も近づかない。
一人 (やっぱり嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!)
嗄恋 「どんな人だろー。かっこいー人だといーなー。」
一人 (なわけねー。)
小さい頃を思い出してロリコンになる。一人はその説には否定的だ。一人は『大人に相手にされないから子供に走るだけ』と言う考え方だ。だからロリコンにロクな奴なんか居る筈が無い。
「ギ...」
倉庫の扉を開けてサングラスをかけた男が入ってきた。枩山だ。
枩山 「遅れました。枩山です。」
一人 (マジ!?)
嗄恋 「かっこいー!」
枩山はものすごい美男子であった。例えるならば一人がホモセクシャルになりそうな位の美男子だ(謎。良く分からんのでもう一つ例えを出すと、ホストクラブが3軒は潰れる位だ(益々謎。
「チャッ。」
「バサ...」
枩山はサングラスを外し、髪を掻き揚げた。
さっき3軒といったが100件に訂正したい位に格好良い(益々々々謎。
一人(ウソだ!そんなバカな事があろうはずが無い!街を歩けば50人の女子高生が彼氏ほったらかしてストーカーにでもなりそーな男じゃねーか!そーだきっと何かの間違いだ!きっとこいつはお手伝いで後ろからデブ野郎が出てきて『実はボクちゃんが枩山さ!』とかゆ〜に決まってる!)
お手伝いさんがサングラスを外し、髪を掻き揚げなんかしてこんな小学生向けのアピールする訳無い。
枩山 「どうしました?」
硬直する一人を見て枩山は首をかしげた。
一人 「いえ、持病の硬直症が…。」
なんじゃそりゃ。
枩山 (そんな病気があったのか!?私はなんと常識が無いのだ!)
あるわけなかろう。
枩山 「実は私もその気(ケ)がありましてね…。」
あるんかい。
一人 (本当にあったのか!?)
ねーよ。
一人 「そうなんですか〜。」
そうじゃないって。
嗄恋 (なに言ってるんだろ。そんな病気無いのに。)
やっと正解。


 
…何やかんややってるうちに、一人は益々嗄恋をやらせる事が嫌になってきた。逆の意味で。
しかし今更止めろと言えない。考え込んでしまった。
枩山 「楚さん?大丈夫ですか?硬直症の発作ですか?」
一人 「い…いえ。大丈夫です。では、契約書にサインを。」
一人は契約書を取り出した。
内容は嗄恋には一切の怪我をさせずに、苦痛を与えずに、この時間内に倉庫内であればなにをしても良いという物である。契約金は30分5万円。
枩山 「ここに描かれている怪我の基準は何ですか?下らない事で訴えられたら堪りませんし。」
一人 「血の一滴、痣の一ミリでもできたら怪我だ。」
挿入不可能じゃん。
枩山 「まぁ、いいでしょ。」
いいのかよ。
一人 (金あるんだな…。)
一人はサインを受け取ると倉庫から出ながら言った。
一人 「ごゆっくり。」

 
枩山は嗄恋の唇に自分の唇を重ねた。
「ちゅッちゅルちゅル。」
舌と舌を絡ませあう。しばらくして枩山は唇を外す。
嗄恋 「ぷはぁ。」
枩山 「服を脱いで。」
嗄恋 「いいよ。」
嗄恋は服を脱ぎ始めた。幼い、薄い胸が見えた。可愛らしい乳首が見える。
枩山 「かわいいよ。」
嗄恋はその言葉にときめいた。
「するする……」
枩山は嗄恋の服全てを脱がした。
「ペロ...」
枩山は嗄恋の股間『スリット』を舌でなぞった。
嗄恋 「あっ!」
「ちゅぱっ。ちゅぱっ。」
枩山は舐め続けた。
枩山 「どうだい?気持ち良いかい?」
嗄恋 「うんっ。はァはァ。」
枩山 (どういう調教したらこんな7才ほどの少女がここまで感じるようになるんだ?)
枩山は興味をそそられたので聞いてみた。
枩山 「嗄恋ちゃんは誰にエッチを教わったの?」
嗄恋 「わかんない。気付いたら知ってたの。」
枩山 (…嘘は言ってないな。教えられたんじゃなく、自分で覚えた…!?)
この子には何かある。枩山でなくともそう感じただろう。しかし枩山はこれを調べてみたいと思った。
枩山はカメラを取り出し、嗄恋を写真に収めた。
「パシャパシャパシャ。」
そして枩山は嗄恋の事を手帳にメモした。
嗄恋 「ねーねー。時間終わっちゃうよ〜。」
枩山 「ごめんごめん。ところで嗄恋ちゃん。パパとママは?」
嗄恋 「知らない。」
枩山 「そうかー。」
嗄恋 「そんな事調べてどうするの?」
枩山 「嗄恋ちゃんのパパとママを探そうと思ってね。」
嗄恋 「本当!?」
枩山 「嘘言ってどうするんだよ。」
「ガララ...」
戸が開いて一人が入ってきた。
一人 「タイムアップだぞ。…って、なに仲良く話してんだよ。」

車の中。
一人 「何か変な事されなかったか?」
嗄恋 「されなかったよ。ちょっと裸にさせられて舐められただけだった。」
一人 「・・・・・。で、何を仲良く話してたんだ?」
嗄恋 「枩山さんが嗄恋のパパとママを探してくれるって。」
一人 「そんな無理な…。」
嗄恋 「ううん。絶対に枩山さんは嗄恋のパパとママを探してくれるもん!」
一人 (女ってみんな色男に弱いって本当だな。)
嗄恋 「もっと仕事探してね。」
一人 「ああ。」

 
会社。
一人 「やっぱねーなー。ロリは。」
正敏 「一人。なに探してんだ?ロリ?お前、嗄恋ちゃん売るのか?」
一人 「先輩。売ったら何されるかわからないでしょう。だから触り放題みたいなのを。」
正敏 「それだって何されるかわかんねーだろーが。で、以前の顧客を調べてると言う訳か。」
一人 「そう言うことです。」
正敏 「で?見つかったか?」
一人 「一人。枩山って男です。」
正敏 「ああ。枩山様か。」
一人 「枩山様を知ってんですか?」
正敏 「ああ。美男子だって噂だぞ。あれなら言い寄ってくる女なんか沢山いるだろうから買う必要ねーじゃねーか。」
一人 「でもロリコンでしょう。」
正敏 「ああ。だから買ってんだな。でもうちじゃーロリはみんな調教して卸してるからな。うちで直接売ったのは枩山と…」
一人 「枩山と?」
正敏 「いや、ただの言い間違えだ。」
一人 (?)
正敏は慌てた様子で去って行った。
一人 「先輩、いかにもあやしい…。しかし、うちで売ったのが一人だけじゃもう探しようがねーなー。」
と、一人の目に見てはならないフロッピーディスクが映ってしまった。
ブラックリスト。客にしてはならない人物の名簿。
一人 (もはやこれしか…。)


夕。
正敏 「あれ?ブラックリストのフロッピーへのアクセス記録がある。一体誰が…。」
正敏がキーボードを叩きながら、売上の計算をしているとそのアクセス記録を見つけた。
正敏 「…一人!?あのバカ!“」
正敏は大急ぎで車を走らせた。
正敏 (間に合え!)
第一倉庫の近くの公園のベンチに一人が座っている。
正敏 「ばかッ!」
一人 「せ…先輩!」
正敏 「嗄恋ちゃんに男の相手させてるだろ!」
一人 「え?…ええ。」
正敏 「そいつ、ブラックリストに載ってた奴だろ!」
一人 「ぎくっ。…そ、そうです…。」
正敏 「ばか!そいつに売った少女の遺体が発見されたからブラックリストに載せたんだ!このままじゃ嗄恋ちゃんが殺されるぞ!」
一人 「ええっ!?」


 
「ガチャ...」
一人 「戸が開かない!?」
正敏 「内側から鍵閉めてるんだ。倉庫の戸だから力ずくでも開くかどうか…。」
一人 「家にペンチがあったはずですから持ってきます!」
正敏 「ああ。」
一人がペンチを取りに行くと正敏は気を静める為に煙草に火をつけた。
正敏 「…そうだ。車の中に手斧(ちょうな)があったはずだ。」
そして正敏は車から手斧を持ってきて、鍵を叩いた。
「ガン!ガン!ガン!」
鍵も少しずつ削れているが、手斧は元々木を削る物だ。
「ばきっ。」
正敏 「あ。」
手斧が折れた。
「ぽろ。ちゃりん。」
鍵も折れた。
「ギギギ...」
正敏 「あっ!!」

 
数分後。一人がペンチを持ってきた。
一人 「あれ?戸が開いてる。折れた手斧?先輩がこれで開けたのか。」
「ギギギ...」
一人が戸を開けると、血が溜まっていた。
一人 「なっ!?」
一人はその血を手にとった。
一人 (乾ききっていない…。嗄恋を助けに入った先輩が襲われたのか?いや、短時間でこんなに乾く筈がない。嗄恋の血か?なら嗄恋と先輩は何処に!?)
「ガサッ...」
一人 「誰だ!?」
正敏 「俺だよ。」
一人 「先輩!嗄恋は!?」
倉庫に入ってきた正敏に一人は唐突に尋ねた。
正敏 「闇医者へ運んだよ。」
一人 「闇医者!?嗄恋はまだ子供ですよ!」
正敏 「子供だろうと老人だろうと組織の人間だ。普通の病院へ運ぶわけにはいかんだろう。」
一人 「そんな…。」
正敏 「いや、闇医者といっても信用の置ける人物だ。安心しろ。」


闇医院。
一人 「嗄恋!」
闇医者 「今目を覚ました所です。」
一人 「良かった。嗄恋。」
嗄恋 「お兄ちゃん…。」
一人 「済まなかった。俺が至らないばかりにこんなめに…。」
嗄恋 「いいんだよ。お兄ちゃんが止めたのにやったの嗄恋だもん。嗄恋のせいだよ。」
この仕事は元々は嗄恋が言い出した事だ。しかし一人は自分が自分の金儲けに嗄恋を使うようになっていたことに気が付いた。それなのに嗄恋は一人をかばう様に『嗄恋のせい』と言った。一人の中に自己嫌悪があふれる。
一人 「嗄恋!違う!悪いのは俺だ!」
一人が嗄恋を抱きしめた。
嗄恋 「・・・お兄ちゃん。」
と、嗄恋の布団からカビの臭いがした。
一人 「嗄恋を連れて帰ります。」
正敏 「え!?」
闇医者 「駄目だ。もう少し安静にしていないと。」
一人 「この布団、カビの臭いがしますよ。」
闇医者 「ばかな。そんな事はない。どれ?多少するかもしれんがこの程度で人は死んだりしない。」
一人 「…こんな所にいたら嗄恋は助からない。つれて帰る。」
正敏 「一人。そうは言っても今日くらいは先生に預かってもらった方が…。」
一人 「構いません。俺にも手当てくらい出来ます。」
一人は嗄恋を抱え、つかつかと闇医院を後にした。
正敏 「で?治療費は誰が払うんだ?」


 
一人のマンション。一人は嗄恋にお粥を食べさせていた。
一人 「ごめんな。本当ごめん。」
嗄恋 「いいんだよ。もう。」
アナウンサー 『昨日、発生した強盗事件の犯人の似顔絵が、目撃者の証言により出来ました。身長は...』
一人・嗄恋 「あっ!」
そう、その強盗はブラックリストの人物にそっくりだったのだ。
嗄恋 「そっくり。」
一人 「いや、間違いない!この人物だ!」


 
数週間後。
一人 「嗄恋。一度だけ。一度だけいいか?」
そう言うと一人はいきなり嗄恋と唇を重ねた。
嗄恋 「…っ!?」
数秒重ねた後、離す。
嗄恋 「お兄ちゃん!?」
一人 「ダメなら…それでいいんだ。」
すると嗄恋も一人と唇を重ねた。嗄恋も数秒重ねた後、離す。
嗄恋 「待ってたん…だよ。」
そしてどちらからともなく、服を脱ぐ。
嗄恋 「小さいね。」
一人 「るせっ。」
嗄恋 「あ。でも大きくなってきた。」
嗄恋はその大きくなってきた物を口にくわえ、口の中で動かした。
一人 「んっ。」
そして自分の唾液でヌルヌルになったそれを口から出すと、今度は手で上下に刺激する。
嗄恋 「いいでしょ?」
一人 「ああ。今度は嗄恋をよくしてあげるよ。」
そう言うと、一人は嗄恋のスリットを舐めた。
嗄恋 「んっ。」
一人は嗄恋のスリットを開き、中の方を刺激した。やはり少女の体は弱々しく、つつけば壊れそうだが、一人は壊れないように優しく撫でた。
一人 「嗄恋...」
「がくんっ。」
嗄恋の力が崩れるように抜けた。
一人 「嗄恋?」
嗄恋 「大丈夫。気持ちよすぎたんだよ。本番いく?」
一人 「入るかな?」
嗄恋 「大丈夫だよ。」
嗄恋は自分のスリットを左右に開き、一人に壁が見えるようにした。桜色の壁だ。
一人 「入れるよ。」
嗄恋は何も言わずに頷いた。
「ぐ...ぐぐぐ...」
きつい。やはり入らないか。一人は引き抜こうとしたが、抜けない。嗄恋が一人を押さえていた。
嗄恋 「抜いちゃ…やだ。」
一人 「嗄恋…。」
嗄恋 「入るもん。絶対入るもん。」
そして、もう一度入れ始める。今度は入っていった。小さな小さな穴に太い大きな棒が入ってゆくのを嗄恋は認め、そして悦んだ。
嗄恋 「ん...んんんっ...あッ!」
一人 「んッ!」
「ぐぐ...ぐぐぐ...」
入ってゆく。2人は一つになる…。声も息も体も。全て…。
「あああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」
「ドピュッ!ドクッドクッドクッ!」
注がれてゆく。そして、尽きる。残ったのは二人の荒い息だった
『はァはァはァはァはァ.....』

翌日。一人の会社。
「プルル...。ガチャッ。」
正敏 「もしもし。ああ、嗄恋ちゃん?え?一人?今日は休みだよ。」
嗄恋 「えっ!?大変!すぐ来て!」
正敏 「え?今仕事中だし。」
嗄恋 「そんな事良いから!」
正敏 「あ…ああ。」

一人の家。
正敏 「嗄恋ちゃん、どうしたんだい!?」
嗄恋 「お兄ちゃん、仕事に行くって言って出て行っちゃったんだよ!」
正敏 「でもそれなら何か秘密の………」
嗄恋 「違うよ!だって、昨日………」
正敏 「昨日?」
嗄恋 「お兄ちゃん………、私を抱いたんだもん。ね!これって変だよね!」
正敏 「………一人とは初めてか?」
嗄恋は頷いた。
正敏 「・・・正敏の居場所に心当たりは!?」
嗄恋 「昨日、ビジネス関係みたいな電話してたよ。廃ビルで合おうって。」
正敏 「廃ビル?何処の?」
嗄恋 「わかんないよ。そこまで聞いてないもん。」
正敏 「廃ビルなんかそうあるもんじゃないが…。」



廃ビル。
「あ?野郎一人か?女を持ってくるんじゃなかったのかよ。」
一人 「私の名は楚一人。」
「あ?あに訳わかんねぇ事いってんだ!?こっちは女連れてきてなくてキレかかってんのによォ!」
一人 「覚えていないか?もう一度名乗る“楚”一人。」
「だ〜か〜ら〜この前のコトだろぉ?金ぐれー出すよ!ったく。あっ!い…楚…!?」
一人 「思い出したか。」
「チャッ。」
一人は拳銃を取り出し、その男に向ける。そして、その男は“ブラックリストの人物”であった。
一人 「俺の妹の香恋を誘拐したのも、嗄恋を犯したのもお前の仕業だ。更に言えば嗄恋を買った金は、強盗で手に入れたものだろう?」
「ああそうさ。」
一人 「一つ聞く。香恋は…楚香恋はどこだ。」
「しらねーよ。平和に暮らしてんじゃねーか?お前らのおっさんに預けたからな。」
一人 「なっ!?まさか…漢(から)伯父さんに!?」
「ああ。空(から)とか名乗ってたっけ?変な名前だな。腎虚か?」
一人 (香恋は…戻ってこない。漢は俺をこの道に引きずり込んだ男なのだから。そして“現代のJack the Ripper”(切り裂きジャック)の異称を持つ殺人鬼だから…香恋は…もう…。)
一人 「嗄恋を犯して俺の家の前に放置したのもお前だな。」
「ああ。そうさ。とは言っても、親に捨てられたヤツを可哀想と思って買ってやったが、飽きただけだがな。とはいっても、本当の親は交通事故で死に、ヤツを捨てたのは養父母だけどな。」
一人 「許さねぇ…。てめぇだけは。」
「待てよ!お前だって同じような事してんだろ!」
一人 「してるかも知れねぇ。俺だって少女の人生を充分弄んでるかも知れねぇ…けど、俺は人の命をそう粗末に扱った事なんかねぇ!お前にカレンを預けた時以外はな!!」
「ドン!」
カレン…それは香恋とも嗄恋ともとれた。
「ギッ。バッ!」
銃声が聞こえるのと、扉が開いて嗄恋が飛び出してくるのと、どちらが早かったろうか。
弾丸(たま)は嗄恋の体を貫き、男には当たらなかった。
一人 「嗄恋!!」
「ドサッ。」
嗄恋は倒れた。
「ぐっ。」
血まみれの嗄恋を一人は抱き上げた。
一人 「バカ!何で来たんだ!」
嗄恋 「お兄ちゃんが、…人、殺すと思ったから…。パパとママが、人の命が一番大事だって、殺したら、殺した人が一番苦しいって…言ってたから…。大好きなお兄ちゃんを苦しめたく…なかったから……。」
一人 「嗄恋…そんな良い事教えてくれるパパとママが嗄恋を捨てたなんて嘘だ。嗄恋のパパとママは交通事故で死んで、嗄恋を捨てたのは嗄恋を預かった人なんだよ。嗄恋の…パパとママは……。」
嗄恋 「そっか。それが聞けて…良かった。」
嗄恋が動かなくなるのを一人は腕で確かめていた。
一人 (もう…何もないな。)
「ドン!」
一人の手から出たその銃声が貫いたのは、一人だった。



9年後。あの後すぐ自首した正敏は、刑期を終え、二人の墓参りをしていた。正敏は、墓の前に手を合わせた。
正敏 (結婚、おめでとう。…生きていれば、バージンロード走ってるところか。)
正敏は、墓を後にしようとした。と、
枩山 「どうしました?ずいぶん地味な結婚式ですね。」
正敏 「枩山さん!?」
枩山 「私も、刑期を終えて出てきた所です。折角の二人の結婚式です。ゲストは多い方が良いでしょう?私の知り合いを呼んでいますよ。」
枩山の後ろには、沢山の人がいた。一人最後の商品になった石崎遥菜もいた。また、一人の売って来た少女たちがいた。
枩山 「みんな買い戻しましたよ。お陰で破産寸前です。」
正敏 「・・・・・。」
遥菜 「さあ、結婚式を盛り上げましょう!」
…これだけの人に包まれて…
   …二人は、きっと天国で…
    …幸せに笑っているのだろう…

End.

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