熱海の夏 To Txow seyki baka

〜10年前。変質者に襲われ、処女を失った右京。村興し絶叫温泉レースで優勝し、温泉旅行を手に入れ、良牙と熱海へ…〜

 「呪泉郷…。」
ここは熱海。彼は良牙。恋人の久遠寺右京と熱海旅行に来ている。この二人は恋人でも何でもないのだがなぜか仲がいい。

 一ヶ月前、絶叫温泉レースで、半分イカサマとはいえ、この二人が優勝したのである。良牙は呪泉郷へ行こうと思ったのだが、彼の並外れた方向音痴のせいで熱海に来てしまった。
 でも右京はお好み焼きが売れるので大喜びだ。
 「はい。300円になります。ありがとうございました!」
 「しゅん。呪泉郷…。」
 「良牙!なにしょげとんねん!ブタ玉にして食ってまうで!」
もちろん冗談なので良牙は気にする筈は…
 「うっせぇ!誰が豚だ!」
…あった。それでも良牙は右京のカラッとした笑顔に励まされた。
 「そうだよな!しょげててもしょうがねぇ!熱海に来たからには熱海を満喫しねーとな!」
 (ホンマ。立ち直りの早いやっちゃな。)
右京は誰にも聞えないような小声で笑った。

 この日、二人は熱海を満喫した。良牙の顔に笑みが戻った。

 夜。温泉旅館。
 「何ぃ!?」
 「はい。響様と久遠寺様。二人で一室。」
 「そんな。うちイヤや!」
 「はぁ。そう言われましても…。」
前以て調べて置くべきだったのだ。良牙と右京は同じ部屋に泊まることになってしまった。
 「うちがこいつに襲われでもしたら責任取ってくれるんやろな!?」
 「誰がお前なんか犯すか!」
 「あの〜。お客様。」
仲居が困った顔をした。
 「ママ〜おかすってなに〜?」
無邪気な8歳くらいの男の子が母親に訊いていた。
 「広ちゃん。気にしちゃダメよ〜。」
広ちゃん(?)の母親が広ちゃんに言った。広ちゃんの母親は良牙と右京をキッと睨むと広ちゃんを連れて部屋へ入っていった。
 「俺たちひょっとして…」
 「明かん事してしもたかも。」
十二分している。

 二人(ハァト)の部屋(笑。
 「ドキドキ。」
良牙はなかなか眠れない。それもその筈。隣に右京が眠っているのだから。
 (こ…こいつめ!よく眠れるよな…。俺だって一応男なんだぞ!)
心の中で良牙は叫んだ。自分に言い聞かせているといった方が適当かもしれない。
 「うぅぅ。」
 (右京の泣き声?まだ眠ってなかったのか?)
背中を丸めて泣いている右京の姿が、寝ているように見えたのだ。右京が眠ってなかった事もめったに泣く事の無い右京が泣く事も良牙には不思議でならなかった。
 「乱ちゃん…。乱ちゃん…。」
 (まさかオ○ってんのか!?…いけねぇいけねぇ。何想像してんだ俺は…。げっ!勃っちまった。)
 「ぐすん。ぐすん。」
 (気になる!)
 「かさ…」
右京は写真のような紙切れをバッグの下に隠すと布団を頭から被った。
 「すゃすゃ。」
右京は寝息を立てていた。
 良牙はそっと右京のバッグの下へ手を入れて写真を取り出した。月明かりに照らして写真を見る。次の瞬間良牙は自分の目の100%を疑った。乱馬じゃない。写真の主は乱馬だと思っていた。
 (誰なんだ!?一体!?)
乱馬じゃない。良牙の全く知らない人物。顔はお世辞にも美男子とは言えない中年の男性。ドラマや漫画に出て来るいわゆる『アニヲタ』風の顔つき。
 (右京の親父さん…?違う。右京に右京の親父さんの写真を見せてもらった事があるけど全然違う。一体誰なんだ…!?)
右京が誰かも分からない小父さんの写真を持っている。それを見ている。
右京を知りたい。罪になってもいい。良牙は右京のバッグの中に手を入れる。風邪薬のような手触りの物が手に触れた。引っ張り出して月明かりに照らす。ピル。信じたくない。でもコウケイヒニンザイなのだ。良牙は何がなんだかわからなくなった。
急に悲しみが込み上げる。いつの間にか右京の事を好きになったのか?やり場の無い悲しみが怒りへと変わる。
体が言う事を聞かない。右京の布団に吸い込まれる。手が胸に触れる。
 「ぷにゃぷにゃ。」
 (軟らけぇ…。くそっ!気持ち良い!)
 「う…うぅん。」
右京の呻き声。良牙は一瞬焦った。
 (起きた!?)
 「むにゃむにゃ。」
 (寝てる。良かった。…全然良くないっつーの。俺、犯罪者だぞ。猥褻だぞ!)
心の中で叫んでも叫んでも止まらない。何かが身体を占拠している。自分に負けてる。
右京の股間に手を滑り込ませる。今までに感じた事の無い快感。
 (ダメだ!俺!止まってくれ!)
良牙はどうしても止まってくれない自分の欲望に押し潰されそうだった。
 「ズル!」
右京のタイツを下ろす。良牙は布団に潜る。
 「ちゅるちゅる。」
今まで見たことも無かった女性器。舐めてる。自分は今犯罪を犯してる。そんな気持ちは段々薄れて行く。
 「ズルズル。」
良牙は身にまとっていた物を全て脱捨てた。
 「じゅぷっ。」
良牙のモノは簡単に収まりきってしまった。しかし良牙を物凄い快感が襲った。このとき良牙は童貞を脱出する。
 「じゅっぽ!じゅっぽ!」
良牙はピストン運動をする。
 「う…うぅん。」
右京の寝言の呻き声。
 「くっ。気持ち良い!」
良牙は未だかつて感じてことの無い快感に酔いしれていた。
 「あっ!あっ!あああぁぁぁ!!」
 「どぴゅっ!ぴゅっ!ぴゅっ!」
勢いよく右京の子宮に良牙の精子が注がれた。
良牙はこのまま眠りそうになった。
 (ヤベェ。ヤベェ。バレたら大変だ。)
良牙は自分と右京の性器をティッシュで拭い、右京に服を着せ、自分も服を着て、布団に入って眠った。

 翌朝。
 (ううん。なんや股の間が変な感じやな。うち、どないしたんやろ?)
 「Zzz。」
 (良牙。もう朝なのに寝とる…。まさかこいつが…んな訳あらへんよな。こいつに人を犯す様な勇気あらへんよな。)
 右京は自分に言い聞かせた。
 (朝風呂にでもいってくるか。)
右京は温泉セットを持って部屋を出た。

 「どん!」
人にぶつかった。
 「あ。ごめんな。おっちゃん。大丈夫か?」
 「あぁ。あれ?右京ちゃんじゃないか。」
 「あ。おっちゃん。」
そう。右京が小さい頃に右京を犯したあの男。
 「何でこないなトコにおんの?」
 「商店街の福引の一等賞さ。右京ちゃんは?」
 「うちも商店街の福引なんやけどちょっと違うな。うちは…」
右京は事の次第を全て話した。
 「へえ。右京ちゃんはやっぱ強いね。」
 「半分イカサマやったけどな。」
 「イカサマ?」
 「いや、何でもあらへん。」
 「なァ…。右京ちゃん。」
 「ふにふに。」
男は右京の胸をいきなり揉む。
 「あ…そんな…。いきなり明かん!」
 「良いだろ?別に。」
 「明かんて。連れがおんねん。」
 「連れっつったってどうせ女友達か誰かだろ?」
 「ビュン!グサ!」
男と右京の後ろに突き刺さっているのは黄色いブーメラン…良牙のバンダナであった。
 「貴様!右京に何してやがる!…テメェは!」
 「久し振りだなクソガキ。」
 「テメェが何で右京に痴漢してんだ!」
 「痴漢?何のことかな?俺と右京ちゃんはこういう関係だぜ。」
 「あんたら…知り合いなん?」
 「今はんな事どうでもいい!お前の根性、俺が叩きなおしてやる!」
 「ブン!」
良牙は番傘を振り回した。男はそれを匠に交わす。
 「おっと。危ねぇモン振り回すんじゃねぇよ。」
男はヌンチャクの様な武器を取り出して良牙に殴りかかった。男も武術の使い手だったのだ。
 「くっ。」
良牙は番傘でヌンチャクを受け止めた。
 「強くなったな。クソガキが!」
 「ふざけんな!ぶっ殺す!」
 「ビュン!ビュン!」
番傘とヌンチャクが飛び交う。
 「ちょっとあんた等…止めんかい!周りが壊れるやんけ!」
 「あ。しゃあねぇ。外で勝負だ。」
 「ああ。」

 外。
 「テメェ。また性懲りも無く右京を…。」
 「ふん。俺はお前のせいで職を失ったんだ!」
 (良牙とおっちゃん…どう言う関係なんや?)
 「ドカッ!ミシッ!」
 (外でも充分壊れてんな…。)
 「お客様!お止めください!」
女将さんが叫んだ。
 「女将はん。こいつ等は止まらへんと思うで…。」
 「そんなぁ〜。」
 「ドカッ!」
 「うぐ!」
ヌンチャクが良牙の腹に当たり、良牙は弾き飛ばされた。
 (くそぉ。強ぇ。乱馬並の強さだ。)
崩れ落ち、ただ耐える良牙。その良牙を勝ち誇ったかのように見つめる男。2人を心配そうに見つめる右京。嘆く女将さん(笑)
 「クソガキ。その程度か。口ほどにも無い。」
 「くっ。テメェだけは絶対に赦さねェ!」
 「ドスッ。」
良牙は男に素手で飛びかかった。
 「バッ。」
良牙は軽く投げ飛ばされる。
 「ドサッ!」
 「うああああ!!」
良牙はまた男に素手で殴りかかった。
 「バッ!」
 「ドサッ!」
 「無駄だと言うのが分からないのか。」
 「分からねェよ。お前には絶対に勝つ!」
 「止めてや2人とも!」
右京が叫んだ。
 「てやーっ!」
 「ドッ!」
良牙の回し蹴りが男の手に命中した。
 「カシャン!」
ヌンチャクが地面に落ちる。次の瞬間…
 「バキ!」
良牙の殴りが男の頬に命中した。
 「ドサッ。」
倒れ込む男に良牙が殴りを入れようとするも男は手で防ぐ。2人は縺れ合う乱麻の様に河の方へ転がっていった。
 「バッシャーン!」
 「バシャ!ピチャ!」
2人の殴り合いは河の中でもなお続いていた。
 「ドス!」
 「うぐ!」
男の拳が良牙に入った。
 「バシャ!」
良牙の身体は糸の切れた操り人形の様に河を流れていった。
 「良牙!」
右京は流れて行く良牙を追いかけた。
 「バシャバシャ」
 「きゃぁ!」
 「がしっ。」
石に躓いて転びそうになった右京を受け止める手。…明らかに良牙。
 「大丈夫か?」
 「大丈夫かて…それはうちの台詞や!」
あれ?良牙が人間のまま。ここは温泉町なのだ。この河は温かい温泉なのだ。

 「良牙が『あの時』の裁判で!?」
 「ああ。」
ロビー。良牙も男も包帯やらバンソーコーやらが体中に巻き付けられ、貼り付けられしている。
『あの時』とは右京がこの男に犯された時の裁判だ。この男が右京を犯しているところを偶然見かけたのだ。そして良牙は警察に通報、右京は保護され、男は逮捕。
 「え?でもでもでも、うち、公園のベンチで寝とったんとちゃうん?」
 「は?そんなのお前の親父さんがお前の為を思って吐いた嘘に決まってんじゃねえか。」
 「嘘!?」
 「右京ちゃん気付いてなかったのか?」
 「お前は黙ってろ。ロリコンクソ男。」
 「誰がロリコンクソ男だ!」
大体当たってるが。
 「でも良牙。それ10年も前やろ?何でおっちゃんの顔覚えてたん?」
 「これだ。」
良牙はピルの箱を取り出した。
 「これは…」
 「うちのピル!良牙いつの間に!?」
 「何でお前がピルなんか飲んでるんだろうと思ったんだ。乱馬はお前のこと女として見てねぇみてぇだし、俺は右京が誰かと関係を持ってるなんて知らなかったからな。そして一つの答えにたどり着いた。」
 「…俺が右京ちゃんと関係を持っている。」
 「その通…」
良牙の頭上に黒い影が…
 「バン!」
 「良牙!内のバッグの中覗いたやろ!」
 「良いじゃねェか!右京の事知りたかったんだ!」
……………。
『負けたな。』男は思った。
 「ぽん。」
男は良牙の肩に手を置いて右京に聞えないような小声で言った。
 「右京ちゃんを幸せにしろ。右京ちゃんはHな娘だから毎晩大変だぞ。」
そう言って男は歩いていった。
 「お…おいそれどう言うことだ!?」
良牙が叫んでも男は黙って歩いて行った。