うたかたの天使たち 第七話
真冬の幻奏者

苑子編

エピローグ

 おれは身体ごと振り返り、手を伸ばし、布団のかたまりをつかんだ。その感触は――

 ふにゃ。

「ん……んー? おにーちゃん、なに?」

 ネムネムな表情の苑子が身体を起こす。浴衣の裾がみだれ、子供の健康的な脚が剥き出しだ。

 そうだよな。苑子はここにいる。おれにラブラブな苑子がほかの男と――なんて、ありえねえ。

 どうやら苑子に寝取られ系のウソ手記を書かせたことが影響しているらしい。隣の部屋でセックスしている女の子がまるで――苑子だと――思えてしまった。

 どうかしてるぜ。

 そんなことより。

 おれは苑子の手を引っ張り、壁際に座らせた。

「な……なに?」

 大きな目でおびえたように見上げてくる。嗜虐心をそそるんだよな。

「耳、つけてみろ、すごいぞ」

「え? やだ、はずかしい」

「なにか恥ずかしいんだ、ばか」

 耳がいいのか、隣の部屋でなにがおこなわれているのか、苑子は悟ったらしい。

「おまえと同い年くらいの女の子だぞ。オッサンとアナルセックスしてる」

「だって……そんな……」

「いいから聞け」

 苑子を壁に押し当てる。

 隣はどうやら最高潮だな。コップなんか押し当てなくても、状況がわかる。

いくぅーっ! いっちゃうよぉっ! ああああっ! はぅあっ!』

 女の子は大絶叫だ。イキまくり。あたりはばからぬ声をはりあげて、すごいアクメっぷりだ。

「隣の女の子、すげーな。あれ、ケツの穴でイッてるんだぜ。まるでおまえだな」

 苑子は首筋まで真っ赤になっている。昂奮してるな、くくく。

 おれは苑子の浴衣の胸ぐりに手をこじいれる。当然、素肌。ふわふわオッパイ。うお、乳首ビンビンだ。

「お……おにいちゃん……だめ」

 苑子が身体を固くする。

 なにがだめだ? ああ?

 モミモミモミ……ああ、今日はいちだんと素晴らしい揉みごこちだ。適度に張ってる感じ。弾力がすごい。

 催してきた。発情してきたぞぉ!

 おれは苑子を押し倒す。隣の部屋はどうやら後戯から、また盛り上がりつつあるようだ。女の子の甘い声が聞こえてくる。苑子そっくりの声。こっちも負けてられねえな。

「お、おにいちゃん、おねがい、電気……電気けして」

 泣きそうな声で苑子。ああ? いまだってちっちゃい豆球しかついてねーだろが。

「真っ暗にして……お願い」

 ふだんは明るいところでも平気なくせに、どういうんだ?

 もっとも、旅先でちょっとナーバスになっているのかもしれない。見えなくても、苑子の身体は知り尽くしている。扱いに困ることはないぜ。

 おれは苑子のリクエスト通り、部屋を真っ暗にした。手探りで苑子を抱きしめる。

 オッパイをもみまくり、乳首を、その周辺を吸いまくる。こりゃあ、キスマークだらけになっちまうな。小学生の肌にキスマーク――犯罪だぜ。

「ん……んっ……」

 なにかイマイチっぽい苑子の声。感じてないのか? そう思って股間を触ってみて、びっくり。

 こいつ、はいてない!

 パンツはどうした、パンツは?

 ノーパンで寝るような子に育てたおぼえはありませんよ。

 しかも、びしょびしょじゃねーか。

 隣の女の子の声が刺激的だったからか。濡れやすい苑子だが、この出足はかつてない。こりゃー寝ながらオナってやがったな。

 これだけ濡れてりゃ前戯は不要だ。

「苑子、入れるぜ」

「えっ……でも……まだ」

 うろたえたような苑子の声。おれはかまわず苑子の太股を押し開き、ペニスを押し込む。

 ぬるっ。

 すんなり入った。次の瞬間。きゅんきゅんきゅんっ!

 すっげ、締めてくる。これが小学生の膣か? 名器なんてもんじゃないぞ。奥とか、うねってる感じさえする。

「あ……う……っ」

 苑子の苦しげな声。

「お……にいちゃ……」

 その唇を覆い、ベロチュー。

 ベロチューしながら、ピストン突きまくり。苑子がおれに抱きついてくる。振り払われまいと必死になるかのように。

「ほひひひや……ほめ……ほめんね……」

 苑子が涙声で言い――それから、自分から腰を動かし始める。

 なっ、なんですか、それ! 上手すぎですよ! どこで憶えたんだ? まったく、子供の進歩は日進月歩だ。

 それにしても、なんで泣く? なんであやまる?

 おまえにひどいことしてるのはおれだろ? いじめたり、露出プレイ強要したり、たまにほかの男に触らせたりとかな。エロい手記書かせたりするし。

 でも、それって、苑子が可愛いからだ。もう、いじめまくりたいほど可愛い。ああ、くそ、可愛いなあ!

 おれも、もっと素直になれればいいのに。好きだよって言えればいいのに。

 だけど……伝わってるよな? おれの気持ち、苑子に。

 おれと苑子は言葉もなく、ただ、愛しあった。隣の部屋のカップルのことなんかどうでもよくなった。ただひたすら、苑子をむさぼり、愛おしみ、奪い尽くした。

 受精・妊娠って言葉も脳裏をよぎったが、たまらなかった。苑子の中で最高の瞬間を迎えたかった。だから、中で出した。

「うっぅ……あああっ! いっ……いくぅ……いっちゃうううっ!」

 苑子がおれの腕のなかではねた。絶頂に達して、痙攣した。

 後始末をするために明かりをつけた。もう苑子はいやがらなかった。

 うすあかりのなか、苑子の裸身はきれいだった。キスマーク――男の所有印だ――が全身についている。暗闇の中だからって、おれ、こんなに苑子を吸ったのか。

 おまんこが開いて――精液がこぼれ出ていた。びっくりするくらいたくさん。

「おれ、がんばったなあ」

 いつもの三倍くらい出したようだ。泡だった白い粘液が後から後からこぼれ出る。これは妊娠させてしまったかもだ。でも、後悔はしない。

 だが、苑子はどこか悲しそうに顔をそむけて、小さく――

 ごめんね、おにいちゃん

 ――と言った。

 

 翌日も、苑子の様子はちょっとヘンだった。思い詰めたような、アンニュイな――昨夜のことを怒っているのかと思ったがそうではないようだった。むしろ、苑子のほうが罪悪感を感じているようだ。

 帰りの電車でも、あまり会話がはずまなかった。

 でも、まあ、家に帰るまでには機嫌もなおるだろう。

 この電車でも、行きと同じく三人掛けで、あのおっさんが相席だった。英字新聞を開いて熟読しはじめる。対抗しておれはナイトタイムスの風俗特集をねぶめように読んだ。

 おっさんが新聞に集中しているのをみはからいおれは苑子を抱き寄せた。

「な、しゃぶってくれよ」

「え……でも、おじさんが……」

 隣をちらちら見つつ苑子が言う。

「大丈夫だって。コートで隠すから」

「……」

 うらみがましい視線をおれに向けつつも、いやとは言わない苑子。コートのなかに顔を埋め、おれのズボンのジッパーをおろす。

 ちろちろと鈴口を舐め、それから竿をしゃぶりたてる。ほんとにうまくなったぜ。

「これも手記に書けよ……家に帰るまでが遠足っていうくらいだからな」

「……おにいちゃんの、ばか」

 コートのなかから、くもった眼鏡ごしに苑子が唇をとがらせた。

おしまい あるいは つづく


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