〜うたかたの天使たち〜
はじまりはいつも春

一子編

 

 おれ、小鳥遊一。小鳥遊(たかなし)一(はじめ)ではない。小鳥(ことり)遊一(ゆういち)だ。小島でもないぞ。

 この春大学生になったばかりの19歳だ。

 宇多方家におれがやってきた理由――それは単に大学に通うため、だけではない。いやむしろ、それは表向きの理由だ。

 親父とお袋からおおせつかった使命があるのだ。

「しかし、宇多方家の財宝っつってもなあ……。ホントだかウソだか」

 おれは浴槽のなかで身体をのばした。

 檜の風呂にゆったり浸かれるなんて、なんてぜいたくなんだ。だが、身体のほうはリラックスしても、頭のなかでは秘密指令のことがぐるぐるうずまいている。

 宇多方家には代々伝わる財宝が隠されている、というのが親父の情報だった。ニュースソースは死んだウチのじいちゃんである。じいちゃんが酔っぱらった時に親父にそういう話をしたことがあった、というのだ。もっとも、ウチのじいちゃんもとっくに死んでいるから裏はとれない。あやふやな情報だ。

 だいたい、財宝ってもんは山奥だとかに隠されているもんだろう。こんな都心にほど近い場所にあろうはずがない。

 うちの親父はケチで頭が薄くパチンコ中毒だが、ついでに時代小説ファンでもある。その親父の推理によれば、「幕末、幕府の隠し金をある旗本があずかって、自宅の地下にしまいこんだ、その末裔が宇多方家なのだ」という。むろん、根拠はほとんどないにちがいない。

 その隠し場所をなんとしてでも探り出せ、というのが指令なのだ。アホか、ほんまに。だが、きちんと報告しないと仕送りをしない、と脅されている。まったくふざけた話である。

「どっから手をつけるかなあ……」

 おれは身体を洗うために、浴槽から出ようと立ち上がった。

 そのときだ。浴室の戸がカラカラと開いた。

「遊一さん、おせな、流します」

 一子ちゃんだ。腕まくりをして、タオルも持っている。

「わあっ、いいよ、いいよ!」

 おれは浴槽にもぐりながらあわてて言った。

「遠慮なさらず」

 一子ちゃんはにっこり微笑んでいる。この子はどうもズレている。

「遠慮してるんじゃないって。おれ、ひとりで洗えるよ」

「いつもおじいさまの背中を流していましたし、妹たちの身体も洗ってあげていましたから」

 彼女はすっかりやる気で手おけに湯をくんで、タオルを浸し、せっけんをすりこむ。

「だめだって――いっしょに入るってのなら話はべつだけど」

 おれは相手をあきらめさせるために、そう言った。こう言えばふつうの婦女子は「イヤーン、エッチー」とか言って引き下がるはずだ。だが。

「あ、そうですね。遊一さんがよろしければ、ご一緒させていただきます」

 一子ちゃんは事もなげに言った。脱衣所にもどり、衣服を脱ぎはじめる。

 おいっ、十五だろ!? 中学卒業してんだろ!?

 おれはツッコミを口にしかけたが、喉がかたまった。

 一子ちゃんの裸体が目の前にある。

 ぎょく。

 おれは唾をのみこんだ。

 胸はけっこう大きい。くびれたウェストから張りだしたヒップなんて、もうけっこうおいしそうに育っている。見まいとしても、つい見てしまうソコは、ああん、きれいなタテスジが!

「ひさしぶりですね、一緒にお風呂にはいるの」

 かけ湯をしながら一子ちゃんが言う。いつの話だ!? 十年前っていえば、九歳と五歳だろ? 一子ちゃんのオッパイはぺったんこだったし、おれもチンチンおっきしなかったし!

 あのときの一子ちゃんといまの一子ちゃんとでは、裸の持つパワーがちがう。

 でも、一子ちゃんは自分のそーゆー姿がどーゆ影響をこっちに与えているか、ちっとも理解していないようだ。一子ちゃんの中では、おれと過ごした時間がそのまま停止しているのだ。

「どうか、しましたか?」

 小首をかしげて訊いてくる。おれの視線がさまよっているのを訝しんだらしい。

「じゃあ、おせな、流しますよ」

「はあ……」

 おれは一子ちゃんに背を向けて座った。しょうがないではないか。正面切って座ったら、おれだって理性を保てない。

「遊一さんの背中、大きいです」

 一子ちゃんが嬉しそうに言いながら、おれの背中をこすりはじめる。慣れた手つきだ。ほんとにじいさんの背中を流していたんだろうな。それをなつかしんでいるのかもしれない。

「あとで、わたしも洗ってくださいますか? むかしみたいに、洗いっこしましょう」

 無邪気な声で言う。それはヤバイでしょ、さすがに。

 昔だったら、洗いっこや触りっこをしても実害はなかったけど。

 いまやったら……最後までイッちまうな。まちがいなく。

「よいしょ、よいしょ」

 背後で素っ裸の一子ちゃんがいっしょけんめおれの背中をこすっている。ああ、一子ちゃんのおっぱいが背中に当たる。やらかいぞ、ふわんふわんふわん、という感じだ。

 だめだっ、理性がたまらんッ!

 我ながら、我慢強くないッ!

「いちこちゃんっ!」

 おれは立ちあがり、振りかえって、一子ちゃんを抱きしめようとした。

 腰をおおっていたタオルがはずれ、びゅんっとそそり立ったムスコがあらわになる。

「きゃあっ!」

 一子ちゃんが片ひざを立てて座ったまま、悲鳴をあげた。ああ、おれはレイプマンになっちまうまうまうまう(エコー)。でも、ガマンできいんだよおおおおっ!

「遊一さんっ! たいへんですっ!」

 ぎゅむ。

 うへ。

「腫れてますよお、こんなに……だいじょうぶですか?」

 ぎゅみぎゅみ、にゅち。き、きもちええ……。

「熱くて、脈打ってますよ。こんな状態なのにお風呂にはいっていたんですか……?」

 一子ちゃんがコスコスする。いや、心配してさすってくれているだけなのだろうが、指がカリにかかって、かなり効く。

 思わず腰が引ける。

「だ、大丈夫ですか? 痛かったですか?」

 一子ちゃんがうろたえる。おれが痛みを感じたと思ったらしい。

「真っ赤に腫れて、ど、どうしたら……」

 ああ、泣きそうな一子ちゃんの顔、たまらないっ!

 おれは一子ちゃんの顔にペニスを突きつけた。

「い、一子ちゃん……ごめん……痛くてたまらないんだ……舐めてくれない?」

「はい、舐めます」

 素直だ。

 というか、アホなのか?

 いや、やっぱり素直ないい子なのだ。昔から、この子はそうだった。人が困っていたりするのを見過ごせない。

 一子ちゃんがおれのペニスをぺろぺろする。傷を消毒するかのように舌を亀頭にこすりつける。

 鈴口を、舌が、うおおっ!

「く、くわえて、一子ちゃん――」

「こうですか……? はむっ」

 やわらかく温かい感触がペニスを包む。一子ちゃんのお口のなか。こんなことが起こるなんて……上京してよかった!

 一子ちゃんは、しかし、フェラチオのテクニックなんて持っていない。あくまで、治療のつもりで舐めてくれているのだ。

 けなげに舌を動かして、おれを癒やそうとしている。それが、また、たまらない。

「顔を、前後に動かして――吸って、そう、そんな感じで」

「は……はぷ……んぷ」

 くちゅくちゅ音をたてながら、一子ちゃんが頭を揺らす。白いおっぱいもゆれている。

 頭のなかがとろけている。

 夢じゃないか、こんな――

 うあっ! だ、だめだっ!

 おれは夢中でペニスを抜いた。

 びゅっ、びゅびゅっ!

 たまらず射精した。

「きゃっ」

 一子ちゃんの顔に白いねっとりとしたものが付着した。たっぷりと、だ。

 ああ、中学卒業したばっかの子に顔射をきめてしまった。

 だが、一子ちゃんは女神のような清らかな笑顔を浮かべていた。

「いっぱい膿が出ましたね……安静にしていれば、きっとすぐに治りますよ」

 おれは悟った。この子は、エッチなことについての知識が完璧に欠落しているのだ。男の生理についても無知らしい。

 財宝探しもたいへんだが、この子を教育するのも骨が折れそうだ。

 楽しみだけど。

 

 かくして、おれの宇多方家での生活が始まったのだ!

おしまい


MENU

INDEX