ジャリン戦記(2)
ロッシュの店の奥にはいくつか小部屋がある。
むろん、ちょっとしたお楽しみのための場所だ。もともとは商談用のブースということだが、けばけばしい色合いの壁といい、部屋の面積の大半を占めるベッドといい、その機能は明白だ。
おれは、さっそく女のローブをはいでいった。
ぽろりん、と大きなおっぱいがころがり出す。
やや茶色っぽい乳首はすでに立ちあがって、いつでも吸ってねと言っている。
「じゃ、お言葉にあまえて」
ちゅぱっ。
「んあっ!」
いい感度だ。だれだ。巨乳女は感じにくいといったやつは。けけ。しかし、これはおれの愛撫だからこそ、ということもあるが。
「おまえ、名前はなんていうんだ。歳は?」
大きなおっぱいをもみもみしながら、おれは訊いた。
「んん……感じる……ミアというの、十七になったばっかり」
「ほう。おれより二つ年下か。で、レベルは?」
「んん……3よぉ……」
おれはがっかりした。レベル3といえば、攻撃魔法にして二、三種類が使える程度でしかない。そのへんのダンジョンで冒険者気分を味わっている程度のビギナーなのだろう。
しょうがねえ。身体だけは堪能させてもらおう。
おれはミアの左右の乳首を交互に吸った。
「ひいっ、どうしてこんなに感じちゃうのよう!」
「けけけ、すげー乳首が立っちまったぜ」
ミアの乳首はすでに最大限に膨張していた。
「んうう、下もぉ……」
「よしよし」
おれは、左手をミアの股間に移動させた。
すでに、そこは驚くほど濡れている。
顔に似合わず経験は豊富らしい。ミアの部分は指に吸い付いてきた。
おれは礼儀として、しばらくミアの敏感な部分を指で責めた。
ミアはよがり狂った。もう、暴れる。暴れる。
そろそろいいだろ。時間があんまりない。
おれは、フードとマントは取らずに、下半身だけ裸になった。いや、髪を露出させると、相手がケガするかもしれないし……
自慢じゃないが、おれのはでかい。
うそじゃない。いまから、証拠をみせるぜ。
ぐいい。
「あはんっ、おおきいーっ!」
な?
おれは、感じて暴れまわるミアを押さえつけて、腰を使いはじめた。
「あっ! あっ! いっちゃ、いっちゃううーっ」
あー、いけいけ。何度でもいけ。
ミアの具合は、まあまあというところかな。感じやすいタチらしく、自分が夢中になってしまって、こっちを楽しませようという気配りに欠けるところがあるが、まあ若いからしょうがないか。
おれは、ミアをよつんばいにして、バックからいぢめはじめた。けけ。このスタイルがいちばん好きなのだ。
つながっている部分がばっちりみえるしな。
ぱん、ぱぱん、ぱんぱんぱんっ。
腰をリズミカルに叩きつける。
ミアはおしりを振って、感じてくれている。
もう、むせびないていやがるぜ。たぶん、人生最高の快感を味わっているんだろうな。おれとやった女は幸せモンだぜ。
そろそろ、おれも……かな。
フィニッシュに向けて、また、体位をかえる。やっぱ、中に出すのはまずいし、バックだと背中にかけるしかなくて、ビジュアル的にもうひとつだ……っておれはAVに出ているんじゃねえっ!
「あ……あ……」
ミアはもはや半失神状態だ。あまりの気持ちよさに、白目をむいていやがる。
おれはミアの中からおれのちんちんを抜くと、ミアご自慢の巨乳の谷間に挟みこんだ。
「おうっ、こりゃ、ええ」
おれのちんちんは、ミアの愛液でヌルヌルだ。そのちんちんをミアの柔らかいおっぱいでサンドしてこするんだから、これはいい気分である。
おれは、ミアのことも考えて、左の指先でミアの乳首をいじりながら、腰を前後させた。
「うあっ! ひいいっ!」
ミアも感じてくれている。
おれも気持ちいーぞ。
「うっ」
腰を引いた瞬間、ぴゅっと出た。
押し出すようにして、さらに発射する。
「あふぅ……ん」
白い粘液がミアの火照った顔に跳ねとぶ。
淫猥にミアの舌が動き、唇のまわりに飛んだおれの体液を舐め取る。
と、その時、視線を感じた。
振り返った。
あるはずのない窓。
だが、確かに視線が注がれている。
扉とは反対側、奥の壁をとおして、なにものかの意志が伝わってくる。
――透視?
そんな高度な魔法を?
おれは、ミアがおれの尿道に残った精液をおいしそうに吸い出すのを放置し、壁にむかって意識を集中させた。
おれは魔法使いではない。ないが、ただの剣士でもない。
壁を通って寄せられる相手の意識の糸の先端を、おれはひょいとつまんだ。
達人ならばできる。相手の気をとらえて、自分にたぐりよせることが。
指先に相手の狼狽が伝わってくる。かるく、もがく感じ。やわらかい律動。
――相手は女だ。
おれの脳裏に、大きく目をみひらいた少女の顔がひらめいた。むこうの動揺がビジョンの形でおれの意識に投影されたのだ。
思ったよりもずっと若い。ほとんど子供のようだ。
ふいっ、と指先から感覚が消えた。
逃がしたか。だが、筋はいい。レベルに直したら、14か15か。
「ねええん、もっとおお」
唇のまわりを精液でベトベトにしたミアが二回目をねだってくる。
さてどうしたもんかな、と思いつつ、おれはオスの仕事の続きにもどっていった。
「すっきりした顔をしているな。よかったか」
カウンターに戻り、鍵を返したおれを見て、ロッシュがからかってきた。
「まあな。だが、レベルは3だぜ。マジでこの店、格が落ちたんじゃねえか」
おれは半ば本気でぼやいた。ミアとは先程別れたところだ。むろん、たっぷりとイかせてやった。おれの名前やら連絡先やらを教えろとしつこかったが、最後は尻を蹴っ飛ばして帰らせた。泣いていたが、けっ、しょうがないだろう。レベル3程度ではおれの旅の相棒などできはしない。
「いつものをくれ」
ロッシュがグラスにジンを注いで、おれの前においた。ここで一番安い酒だ。
「これはおごりにしといてやる」
ちっ、じゃあ、もっと高いのを頼めばよかったぜ。
「ジャリン――あいかわらずおまえさんの邪眼――というより邪掌はたいしたもんだな。おまえの手にかかると、どんな女でも夢中になってよがりたおすってわけだ。だが、おれの店の格についてどうこう言ってもらいたくはないな。ここの品位を落としているのは、どう考えてもおまえなんだからな」
「にしても、あの闘士にしても、たったレベル9ででかい顔をしていやがった……世も末だぜ。ここに来ても、まともなやつがみつからねえとは」
「また、一人になったのか……あいかわらずだな、ジャリン」
ロッシュがため息をついてほざいた。
「冒険のたびに仲間が全滅する……おまえ、なんと言われているか知ってるか? おまえと旅に出るのは、<地獄いきの馬車>に乗るのと同じだとよ」
「おれは生きてるぜ」
「だからよ、そこが問題なんだろうが。この前は三人連れて行っただろう。金髪と黒髪、それと赤い髪の――ぜんぶとびきりの美女で、戦士、アーチャー、スペルキャスター――平均レベルで12、3にはなっていた腕利きだったはずだぞ。彼女たちはどうした」
いやなことを聞きやがるぜ。おれは無言で床を指差し、それから、やっぱりこっちかなと考え直して天井を指した。
ロッシュは掌で顔をおおった。とはいえ、額の目はおれを見据えたままだ。
「あいつら、あっちもよかったし、腕も立ったんだけどなー。また、あーゆー感じのいい女の冒険者を紹介してくれや」
ロッシュの頬がひくっと動いた。
「おまえなあ……あの三人はこの店の常連で、男性客はみんなあの子たちを目当てに来てたんだぞ。それをおまえがかっさらっていった挙げ句、ロストしたってのか! この店にいい冒険者が寄りつかなくなったのも、おまえのせいだ!」
げっ、そうだったのか。
「だから、まあ仲間は自力で見つけるんだな」
にべもなくロッシュは言い切った。ちっ、なんて心の冷たいやつだ。仲間がいなくなって困っているおれを突き放しやがった。鬼だな、こいつ。
「せめて、なんかおもしろい話はないのかよ――手頃な仕事とか、金儲けのネタとか」
「そうさな……そっちのほうは心当たりがないでもないな」
ロッシュの表情がいたずらっぽいものにかわっている。
ちょっとやばい兆候だ。こういう時にロッシュが持ってくる話は、「手頃」どころか超がつく難易度であることが多い。だが、それを実は望んでいたりもするのだが。
「どんなんだ」
「ジャリンよ、ドリーマーって知ってるか?」
おれはうなずいた。
ドリーマーとは、夢を現実にしてしまう能力を持っている人間のことだ。
予知夢、といった生やさしいものではない。予知夢の場合は、夢のなかで、その後起こる現実の事件を事前に知るわけだが、ドリーマーの場合、みた夢がそのまま現実になってしまう。あらゆる因果律を無視して、だ。
むろん、ドリーマーの資質を備えている人間はめったにいるものではない。魔法はある程度の資質があれば、学習によってたいていは使えるようになるが、このドリーマーの能力は生まれついてのものなのだ。
「アルセア地方にヴィアーツァ伯爵という貴族がいてな、その伯爵の一人娘のアムリアというのがドリーマーなのだ」
ロッシュがまじめくさって言う。
「ドリーマーとしての能力はすごいらしくてな、彼女がみた夢はかならず実現する。どんなことでも――たとえば、世界を滅亡させることだってな」
ドリーマーにも当然ランクがあって、たいていは自分のまわりのかぎられたことにしか関与できない。ささいな夢――あれがほしい、これがほしい、きれいになりたい、恋人がほしいレベルの夢だ。一方、世界そのものを変えてしまったり、歴史を歪めてしまったり、といった、まわりへの影響が甚大な夢の現実化は、よほど高い能力を持ったドリーマーでなければ不可能なのだ。
「眉唾だな。なんで、そのアムちゃんが世界を滅ぼせるほどのドリーマーだとわかる?」
おれの指摘にロッシュはわが意を得たり、とばかりににやついた。
「アルセアってのは山国だ。海どころか大きな湖さえねえ。川ったってたいしたものはない。だがな、その土地を突然大津波が襲ったことがある。雨が降っていたわけでもない。なのに、大洪水になり、何万人もが溺れ死んだという」
「んなあほな」
「ちゃんとアルセアの史書にも記されている。いまから百年前、その地方を治めていたのがヴィアーツァ伯爵で、娘のアムリアは当時八歳だった」
「百年前だとぉ!? じゃあ、アムリアっつーのは……」
「まあ、聞け。アムリアは希有なドリーマーだったのだ。彼女は悪夢をみた。彼女が知っている世界が水浸しになるというな。幼かった彼女にとっての世界とは、アルセア地方のことだったのだ。もしも、彼女にほんとうの<世界>というものの概念があったら、その時点でこの世は終わりになっていたかもしれん」
「それにしても、なんで洪水の夢をみたんだ?」
「史書によると、前夜にジュースを飲みすぎて、おねしょをしてしまったんだそうだ」
「うーむ」
そんなんで溺れ死んだ人は浮かばれんなあ。
「で、アムリアはどーなったんだ?」
「ヴィアーツァ伯爵は事実をひた隠しにした。ばれれば、魔女として火焙りだからな。愛娘をなんとか守ろうとしたのだ。しかし、今後もアムリアがみる夢によって、まわりが迷惑するかもしれん。そこで、娘にある魔法――呪いといった方がいいな――をかけた」
「どんな呪いだ?」
「眠りが訪れなくなる呪いだ。これをかけられた者は眠る必要がなくなる。したがって、夢もみない。しかし、副作用があってな、ほとんど年をとらなくなってしまうのだ。ふつうの人の十年が、アムリアにとっての一年に相当するらしい」
「呪いのせいで、時間の流れが狂ってしまうんだな」
「そうだ。だから、百年経った今でも、アムリアは若々しいままだ。外に出ることもなく、この百年というものずっと館にひきこもり続けていたらしいんだが、それが……」
ロッシュが声をひそめた。
「ひと月ほど前に誘拐された。犯人は、ザシューバという魔導士だ。コリオルの魔法大学出のエリートだが、たぶん、アムリアにかけられた呪いを解いて、夢をみさせるつもりなんだろう」
「なんのために?」
「さあな。だが、世界にとっては脅威のはずだ。何人かの冒険者が、ザシューバを倒して名をあげようとしたが、すべて返り討ちにあっている。かなり強力な配下を持っているらしくてな」
「ドリーマーか……おもしろいな。生きたマジックアイテムというわけだ」
おれはひとりごちた。あとは、そのアムリアというのが、美人で、いい身体をしていれば、言うことはないんだが。
「昔の記録だから事実かどうかは知らんが、八歳当時のアムリアはものすごい美少女だったらしいぞ。それから百年たっているが、実質は十八だから、まあ、食べ頃だろうな」
おれの心を読んだのか、ロッシュがズバリ指摘した。
「やるぜ」
「やれよ、とっとと出発しな、じゃあな」
ロッシュが手を振った。こいつ、とにかくおれを厄介払いしたいらしいな。
いいとも。ここは乗ってやるぜ。
おれはロッシュに礼を言って、店を出た。