3(承前1)

「シャッ!」

 擦過音がアシャンテイの喉からもれた。爪がおれののどに食いこむ。

 ふつうのネコの爪とはちがう。もっと硬くて鋭い。まるでとぎすまされた刃のようだ。

 激痛が走り、鮮血がしぶく――その寸前に。

 おれは子猫の手首をつかんでいた。

「いぎっ」

 アシャンティが小さく悲鳴をあげた。

「どーゆーつもりだ、コラ」

 おれは手首を極めたまま、アシャンティをねじふせた。

 汲みおいた湯おけが倒れ、子供のハーフキャットの身体を濡らしている。濡れたネコはぶざまでみじめに見えるが、このガキについてはそのかぎりではない。目がらんらんと燃え、白い牙をむいて凄んでいる。

「はなすにゃ!」

 もう一方の腕を振るい、おれの顔を引っかこうとしてくる。その手首もとらえて、床におしつける。

 脚をバタつかせる。ええい、なんちゅー力じゃ。

 両腕をバンザイの格好で固定し、腰の上に座って抵抗を封じる。

「――てめ、アサシンか? だれかに命じられたのか?」

「しらないにゃ!」

 アシャンティはそっぽをむく。もう口をひらくもんか、という意志が見てとれる。

「なぜ、おれを狙った」

 無言。

「ゴロツキと揉めていたのも計算ずくだったのか?」

 無視。

「肉と魚、どっちが好きだ?」

「サカナにゃ」

 そーゆーことには答えるのか。

「見ず知らずのおれを狙ったということは、だれかに頼まれたんだろう。依頼したやつをいえ」

「なんのことかわからないにゃ」

 にやにや笑っている。目のなかにはおびえがあるが、それを意志の力でおさえつけ

ているのだ。それなりに訓練されている。

「そーゆー態度をとるならば、身体に聞くしかないよーだな」

 おれは右手だけでアシャンティの両の手首をつかみとった。細い手首だから、右手

だけで充分なのだ。

 空いた左手は、と。

 くっくっくっ。

 これはちょっとした実験だな。

 おれの左の掌には、どんな女でも感じさせる力がある。邪眼ならぬ邪掌だ。

 これまでの最年少記録は*歳(事情により伏せ字)だが、ハーフキャットということになると、これは記録更新だなあ。

 ちょっと試してみようか。

 さわさわっ。

「はにゃっ」

 わき腹をくすぐられて、アシャンテイはすっとんきょうな声をあげた。

 ***

「さて、と」

 おれはアシャンティをみおろした。

 洗い布を使って両手首を縛ってある。きつく結わえてあるので、鋭い爪も役には立たない。

 むろん、足腰のバネを使って逃げださないよう、腰の上にどっかりと座って押さえつけてある。

 湯に濡れそぼった下着は、安っぽい薄手のものであることもあいまって、ぴったりと身体に貼りついている。

 おれは胸のあたりを凝視した。乳首が透けて見える。

「な、なにするにゃ」

 アシャンティがおれを見あげている。少し不安そうだ。

 おれはにたっと笑った。

「吐くんなら今のうちだぞ」

「うるさいにゃ」

 ネコ少女は眼をそらした。

「ほー、そーゆー態度をとるか」

 おれは下着の上からアシャンティの乳首に触れた。とりあえず親指と人指指でポッチをつまんで、ぷにぷにしてみる。

「ふにっ」

 おっ。けっこう敏感じゃねーか。うりうり。

「にゃっ、にゃっ、にゃにするのにゃ」

「乳首をつまんでこすってるのさ」

「にゃっ、ヘンタイっ! はんざいしゃ!」

「るせーな。人間の法律はケダモンには適用されねーんだよ」

 両方の意味でな。

「ひうっ」

 アシャンティは肩をいからせ、あごを自分の鎖骨に押し当てるようにした。

 刺激に対する当然の反応として、おれの指のあいだにとらえた突起が固くとがってきた。

「けっけっけ。じゃあ、おっぱいを見せてもらおーかな」

 おれはアシャンティの上半身を剥いていった。両腕がまともに動かせないアシャンティはむろん抵抗できない。

 白いシャツをたくしあげて、胸を露出させた。

 ふくらみはほとんどない。もともとハーフキャットは成熟してもナイチチ系なのだ。そのへんがホルスタイン女とのちがいだ。夜の街ではある意味で人気を二分するふたつの勢力だが、豊満かつ授乳サービスがウリのホルスタイン女に対して、ネコ系女はそのしなやかな肢体で男を魅了する。

 幼いとはいえ、アシャンティにもその素質はあるようだ。なにしろ肌がなめらかで手ざわりがいい。和毛がスエードのように掌に吸いついてくる。

 その白い腹から胸にかけてをおれはさわりまくった。ネコのお腹を触るのはなかなか気持ちいーな。その上、姿は人間の女の子そのままなんだから、なおさらだ。

 おれは邪掌のやどる左手をつかい、胸から脇腹にかけてをゆっくりとマッサージした。

 血の流れるほうへ。

 神経がのびてゆくほうへ。

 おれの掌がはなつ波動が全身をめぐるように。

「ん……くう……」

 アシャンティの顔が上気している。

 ちいさな小鼻がひくひくしている。ひげが生えていたら、きっと繊細にウェイブしただろう。

「どうだ? ぜんぶしゃべりたくなったろ? おれをなぜ狙ったのか……」

「い……いわないにゃ……」

 強情だなあ。でも、そっちのほうがこっちも都合がいいけどな。けけっ。

 おれはアシャンティの腹の上でくるんと一回転し、前後を入れ替えた。

「な、なにする気にゃ?」

 心細げな声が背後から聞こえる。

 おれは視線を落とした。細い脚が二本のびている。そのつけねを被っているのは粗末なパンツだ。もとは白だったのだろうが、穿き古していて生地じたいが黄ばんでいる。べつにおしっこのためじゃないぞ、念のため。

 その下着もお湯でべちょべちょでワレメが透けている。

 お湯だけじゃないかもしれないけどな。

「吐くなら今だぞ。これ以上進むと、後もどりできねーぞ」

 おれは後ろに首をまげて、最後通告をする。

 アシャンティはおれと眼があうと、牙をむいた。

「プロは殺されても依頼人のことはしゃべらないのにゃ!」

 プロねえ……。

 おれはちょっぴり楽しい気分でアシャンティのパンツに指をかけた。

「にゃっ! にゃあっ! やめるにゃっ!」

 じたばた、じたばた。元気だなあ。

 おれは暴れまわるアシャンティの太股をつかんだ。両方ともだ。それをぐいっとひきつける。

「うにゃああ」

 両肩は床についたままだ。それでいておしりを思いきり引きあげられている。いわゆるエビ固めっぽい体勢だ。

 じたばたすると自分が苦しいためか、アシャンティの抵抗が弱まる。

 うほほ。

 おれの目の前には、まっちろいおしりがある。

 女っぽさを感じさせないスリムなヒップだ。それでいて艶めかしさがただよってくるのは、股間を被っている布のよじれのせいだろうか。

 その部分は、ぽってりと水気を含んで、微妙なしわを刻んでいる。

「仔猫ちゃんのココはどんなんかなあ」

 そういやどこかの国では、ココのことも仔猫(プッシー)と言ったりもするのだ。

 おれは布地を持ちあげた。

「やめるにゃ、やめ……うにゃああっ」

 アシャンティの声が悲鳴になる。

「おしりが迫ってくるにゃ! こわいにゃあっ!」

 ああ、そういやおれもスッポンポンで、ケツをアシャンティの腹に乗っけているんだった。今は体勢的には、ほとんど顔のあたりに尻が移動しているなあ。

「こっ、こーもんにキスされそうなのにゃ! ひゃっ、ブラブラしたものが当たったのにゃ!」

「わっはっは。おれのケツの穴をよくも見たな。ということはおれにも見る権利があるということだな」

「なっ、なんでそうなるにゃ」

「理由は、おれが見たいからだっ!」

 ぎゅうっ。

 ぴりっ。

 安物のパンツはかんたんに裂けてしまった。うーん、乱暴はするつもりじゃなかったんだけどな。

 んでもって、つづく


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