つづき


「にゃっ、うにゃああああっ」

 アシャンティが身体をくねらせている。もう夢中だ。

 おれは、仔猫の尻の肉をつかんでこねながら、腰のねじり運動を続けてやる。

「いっぱいにゃ、にゃっ、にゃふぅぅっ」

 おれのでかいモノでも、しっかり収まるんだからディー様とやらのローソクもたいしたもんだ。もっとも、ギッチギチだがな。

「ああん、ネコちゃん、エッチですぅ……」

 傍らではエミィが、アシャンティのぺったんこの胸を唇と舌で愛撫している。そのエミィのあそこにはシータの舌が入っている。そのシータの股間はむろんおれがいじっている。

 いかにキースが「こんな外道な治療法、許せん」とかすごんでも、アシャンティを発狂から救うにはこれしか方法がないのだから仕方がない。

 それを認めたからこそ、エミィもシータも協力しているのだ。 あと、この部屋はいいな。エッチの道具だらけだからな。まさに、治療にうってつけだ。

 おれの提案した治療法に反対していたキースは、ムク犬ゾルドとその手下をマジックギルド支部に連行するため、ここを立ち去っていた。犬でもいちおう犯人として連れていかねばならないのだそうだ。まあ、お手とか仕込んでから無罪放免だろうが。 

「ふぁっ、ふぁっ、ふうううううぐるるるるるるるぅ」
 喉を鳴らしながら、アシャンティがふわふわの髪を振り乱した。きゅんきゅん締めつけてくる。

「にゃごるる、るふ、にゃふっ、ふっ、ひにゅぅ」

 全身を紅潮させている。産毛がきれいなパターンを見せて、ブチの存在が鮮明になる。

「はあ、ネコちゃんが、気持ちよさそうですぅ……」

 エミィまで幸せそうに頬を染めて、仔猫の唇を奪う。舌をからめる。

「ざらざらの舌が……気持ちいいですう」

「にゃるるる」

 おれはピストン運動を激しくしていく。

 シータがおれの背中にすがりつく。首筋に舌をはわせ、執拗に舐めてくる。シータもしばらく断食状態だからな、おれの精液が欲しくなっているのだ。だから、いつものクールさも失って、精液と共通の成分を含むおれの汗や唾液をほしがるのだ。

「シータ、ケツだ」

 おれは命じる。シータは無言でおれの身体の下にもぐり、おれの肛門に舌を這わせた。このケツ舐めは、今度エミィにも仕込もう。くくく。

「ほら、おまえは四つん這いだ」

 エミィを促して、アシャンティの上にかぶせ、獣のようにおしりを突き出させる。

 おれの顔の高さにエミィの尻の割れ目が来る。おれは指でエミィのアヌスをえぐりながら、舌を性器のひだに這わせる。

「んんうううっ、ジャ、ジャリンさぁん……す、すごい……ですぅ……」

「いくぞ、まずはニャンコの中に出すからなっ」

 おれは腰の律動のリズムを速めていく。何度か突くと、一度、ゆっくりとアシャンティの中に沈める。それを繰り返す。

「にゃっ、にゃっ、にやあああ、いくにゃ、いく……いく……」

 あとは声にならない。仔猫は初めての絶頂感に、痙攣するしかなくなっている。

「出すぞっ……」

 おれは深く深く挿入する。アシャンティの身体の半ばに達するくらいに。

「かはっ……」

 仔猫がのけぞり、ずりあがる。間違いなく、内臓が上に押されている。と、同時に――

 びしゅっ、びしゅしゅっ!

 媚薬の効能を消すのは、莫大な量の快感だ。絶頂につぐ絶頂だ。そして、圧倒的な満腹感だ。それを与えるのが、おれの精液の噴出なのだ。

「ひ……いいいいいいっ!」

 アシャンティは白目を剥いて、ガクガクと身体を震わせる。初めてのくせに、ふつうのセックスの何十発分かに相当するアクメだ。いい経験したな、ニャンコ。

「マ、マスターっ」

 切迫したシータの声がおれの股間から聞こえた。おれの尻の下に顔を入れて、アナル舐めをしていたシータだ。ごほうびをやるか。

 おれはアシャンティの中からチンポを引き抜いた。まだ射精は続いている。シータが口を開く。シータの顔に精液をぶちまけながら、その唇のなかに亀頭を持っていく。

 シータがまぶたを閉じて、幸福そうにおれのペニスを吸う。ふだんは絶対に見せない表情だ。母親に抱かれた幼女のような、満ち足りた顔――

「はあんっ、ずるいです、ネコちゃんとシータさんばっかりぃ……」

 エミィが身体を入れ替えて、おれの股間に顔をうずめてくる。

「わたしにもぉ……」

「はっはっは、順番だ、順番」

 と、その時だ。

「いーなぁ、ジャリンってば……三人もぉ」

 能天気な――それでいて鬼気をはらんだ声がした。おれの背筋がうすら寒くなる。

 ――忘れていた。

 おれはエクソシストばりに、ぐがぎぎぎと首を真後ろにめぐらせた。

 いた。

 長煙管を持った、すっぱだかの魔神が――傍らにシルヴァイラを従えて――ぱたぱた翼を動かしていた。

「ねえ〜ボクもまぜてよ〜い〜でしょ〜い〜よね〜ハイきまり〜」

「わわっ、なっ、なんですかこの人ぉ、飛んでるですぅ」

 エミィが驚いて腰を抜かす。

 シータは唇のまわりについた精液を舐めとりながら、冷たい視線をおれに向ける。

「お仲間ですか?」

 シルヴァイラは、アシャンティの側に跪いた。

 裸の胸を上下させている娘の髪にそっと触れる。

 匂いを感じたのか、小鼻がひくひく動いた。まぶたがゆっくりと開く。

 アーモンド型の瞳が、その存在を捉える。

「――かーちゃん、にゃ」

 その瞳の表面を涙のヴェールが覆い、そして、堤防が決壊する。

「かーちゃぁんっ!」

 アシャンティは一匹の仔猫にもどって、母猫の胸にすがりついた。

「あ〜だから〜そーゆー愁嘆場はどーでもいーから〜セックスしよ〜、ねー、しよ〜、セックスしよ〜よほほほおおおおん」

エピローグ

「それでは、かーちゃん、行ってくるのにゃ」

 背中に荷物をくくりつけ、ネコ耳を隠す帽子をかぶったアシャンティがシルヴァイラに敬礼した。

「ほんとうにいいの? せっかくお母さんと逢えたのに……」

 エミィがアシャンティの肩を抱きながら言う。

「いいのにゃ。独り立ちなのにゃ。もう、アシャンティは一人前の女なのにゃ」

 胸を張るが、外見は相変わらずチビでガキだ。

「いいのよ。この子には、この街以外の世界を見てほしいの。ゾルドがいなくなっても、深き森が近くにある限り、この街の獣人は人間に利用されるだけだしね……」

「そういえば、ゾルドさんを人間にして操っていた犯人の正体はわからずじまいだったそうですね」

 シータが言った。

 なぜかここに居合わせているキースがしかつめらしくうなずく。

「巧妙にマジックギルドの印章を偽造したり、強力な毒薬を作ったり、念話を使って殺し屋を雇ったりなど、かなり高位の魔導士だと思われますが……ディーという名前に該当する者は正規の魔導士名簿には見つかりませんでした。むろん、偽名ということも考えられますが……」

「てか、おまえは何者だっつーの!」

 おれは、ぐるぐる巻きに封印をほどこした刀を苦労して腰にたばさみながら――この封印には全員がかりで二時間もかかった――お邪魔虫キースに唾のしぶきを飛ばした。

「言っただろう、ウニ頭。わたしはマジックギルド監察官――魔導士がらみの犯罪を取り締まるために諸国をめぐる特命捜査官だと」

 生意気にもおれの唾攻撃をすべてかわして、キースが答えた。

「このバイラルには、ギルドを騙って暗殺者を雇っている者がいるという情報があったので立ち寄ったのだ。証拠固めが遅れたために、ゾルドをすぐに捕縛できなかったのが残念だったがな」

 それだけじゃないだろ、てめ。くそ。だが、キースを問い詰めても、いつものらりくらりと逃げられるし、シータとエミィの視線が険しくなるからな、ちっ。

 しょうがねえ、矛先をかえよう。

 おれは、視線を下に向けた。

「おまえもおまえだ。なんでおれたちについて来る」

 ただでさえ毎回メンバーが増えているのだ。ドラゴンなんとかじゃあるまいし、今に馬車に何人も控えメンバーを詰め込まなくてはならなくなるぞ。

 だが、しかし、金髪のふわふわ仔猫は動じる気配もなく、瞳孔を縦に細めた。

「当然にゃ。ウニ頭がアシャンティの初めてのオスなのにゃ。とりあえず、初めてのオスの子供を生むまでは一緒にいるのにゃ」

「なっ」

「ひえええ」

「ばっ、ばかなっ」

 おれとエミィとキースは三者三様に声を漏らしたが、言った本人とその母親とシータは平気な顔だ。

「だいじょうぶにゃ、にんちしろー、とか、よーいくひよこせー、とか言わないのにゃ。勝手に産んで勝手に育てるので、気にするにゃなのにゃ」

「ふつつかな娘ですが、よろしくね」

 なんちゅう親子じゃ。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

 と、一匹のネコ少女の人生を左右するイベントがあったとは微塵も感じさせないフツーさでシータが促した。

 ぴょんこぴょんこ、アシャンティが飛び跳ねる。

「出発にゃ! ぼーけんの旅にゃ! ウニ頭とユカイな仲間たちなのにゃ!」

「ウニ頭じゃねえ!」

 おれは怒鳴った。

 仔猫がぴたりと動きを止めて、おれを見あげた。

 ややあって、質問する。

「じゃ、なんて呼んだらいいのにゃ?」

 おれはため息をつき、それから答えた。

「おれの名はジャリン。ただのジャリンさ」

 ――どうやら、パーティのメンツが、揃ってしまったらしい……。

「仔猫モノ騙り」おしまい


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