カリの部分がエミィの土手をおしひろげ、入り口に接する。
さっきは阻まれた堅固な門も、すでに内奥部から分泌する愛液で濡れそぼり、やわらかく熟している。
おれの男根がエミィを刺し貫いていく。
処女膜。少女時代の宝物。涙色の花びら。その部分は、来るべき時にそなえて、少女の性の器を守りつづけている。固くて太い牡の器官が、その防壁を突破するまで。その壁が破壊されたとき、少女は女になり、その豊かないのちの第一歩を刻むのだ。
「うっ、う……あ……」
おれの幹に血の筋がしたたった。
巨大な扉が燐光をはなった。その合わせ目に強い光がさす。
扉が、ひらく。
「いっ……いたいですう……」
エミィが声をあげ、腰を引いた。
膜の一部は破れた。だが、完全ではない。こいつ、鉄の処女膜もっとんのかい。
扉から光が失せていく。やばい。マジでやばい。
「こらっ、エメロン、腰を引くなっ、扉がしまっちまうだろうが」
おれはエミィの腰をぐわしとつかんで引き寄せようとする。
「でもでも、痛いんですう」
「ばかっ、痛いのはしょうがないだろうが。じきによくなるもんだ」
「じきっていつですかあ」
「じきっていえば……うーん、おまえ何回目からよかった?」
おれは経験者に意見を求めた。
「知りません」
シータは回答拒否。ふん、隠したって知ってるよ。三回目で失神したろうが。
「とにかく最初はガマンしろっ! そうしないと全員ここで干からびて死ぬんだぞ!」
おれの言葉にエミィの泣き顔が凍る。
「ひーん」
エミィの腰を引き寄せ、挿入再開だ。だが、エミィが痛がって体重をあずけないので、うまくいかない。
そうこうするうちに扉の光がどんどん弱まっていく。
「シータっ!」
おれの叫びに、シータが対応する。
「エミィさん、ごめんなさい」
言いつつ、エミィの背中におおいかぶさり、体重をあずける。同時におれも腰をつきあげる。
ぐうっ。
めりりりっ。
ピキッ!
「ひいいいっ」
エミィが悲鳴をあげる。
おれは確かにエミィの体内のぬくみを感じた。トンネル開通だ。
「エミィさん、呪文を!」
シータが後ろからエミィにしがみつきながら、耳元でさけぶ。
「……お、おーぷんんん」
なんとか詠唱をしようとした時だ。
んごががぎぎ、と音がして、扉はあっさりと開いた。
同時に会話しているらしい声が聞こえてくる。
「それにしても老師のお使いとは……。遠くから大変でしたでしょう」
初老の男のしわがれた声。それに応じたのはまだ若い男の声だ。
「いえ、この図書館は大陸の知の要。ここの書庫をまず当たれというのが師の勧めでしたから」
「それにしても、当番のエメランディアはどうしたことか。仕事を放りだして持ち場を離れるとは」
おれは首をめぐらせて、扉の方を見やった。
なんの荘厳さもなく大扉は全開しており、その向こうに一団の人影があった。
先頭にいるのはゆったりとしたローブを着た魔法博士らしい身なりの人物。白い顎髭をのばしている。
その隣には鎧を着こんだ若い男。なんかどっかで見たような。おでこに大きな絆創膏をはっている。
そして、彼らの後ろには図書館の職員らしき男たちが数名、お付きよろしく従っている。
彼らの目は一様に丸くなっていた。なるほど目ん玉とはよくいったもんだ。
「こっ、こっ、これは……なっ、なっ、なんとしたことじゃ」
先頭のじいさんがこわれたレコードのようにどもりまくった。
「かっ、かっ、かっ、館長」
おれの上にいるエミィもどもりにつきあった。館長って、この図書館のか。
鎧男は、おれとシータを交互に見て、顔色をかえた。
「きさまは……!」
なんだ、ここに来る前に遊んでやった自称騎士ではないか。鎧の色がちがうからわからんかった。
「なっ、なにをしておる、破廉恥なあっ!」
じいさんは怒りに顔を真っ赤にして怒鳴りちらした。
エミィは、ハッとしたらしい。自分の姿を再確認して、それから悲鳴をあげておれから離れようとした。むろん、そんなことはさせない。
「はなっ、はなしてくださあい!」
「だめだ。男は最後までいかないと止まらないのだ。それが男の生理というものだ」
「そんなこといったって、みんな見ているのにぃ」
抗議は却下。おれは腰を使いはじめた。かたわらでシータは肩をすくめ、館長は地団駄を踏み、自称騎士は剣をぬいて息巻いた。
でも、そんなの気にしない、気にしない。おれはエミィの初物を堪能した。
「ひぐっ、ひぐっ」
後ろから嗚咽の声がついてきている。
「なんだよ、さっきから、まったくう」
ベルカーンツ市街のはずれ。おれはいやいやながら振りかえった。十歩くらいはなれたところで、相手はぴたりと足をとめる。
申し訳程度の荷物を背中にくくりつけたエミィがうらめしげにおれをにらむ。
「あれはおたがい納得ずくだろ? だいたい、あそこに閉じこめられたのは、エメロン、おまえのせいじゃねーか」
「エミィですう! それに、あんなことしなくったって、館長さまが開けてくだすったじゃないですかあ!」
「そんなの知るか! あんなタイミングで開くなんて予想つかねーだろーがよ、バカタレ」
「それに、みんなが見ている前で、あんなっ……あんな……」
続けられず、びいびい泣き出す。なんだよ、衆人環視のもと中出しされたくらいで。だから近ごろの若いもんは。
「あの状況だったら、どっちでも同じだろ。だったら、気持ちいいほうが得じゃねーか」
「あたしは痛かったですう!」
「ははあん、そうか」
おれはエミィをねめつけた。エミィはわずかにたじろぐ。
「なんですかあ」
「おまえ、おれにまた抱いてほしいんだろ」
ぼわっ、とエミィの顔が赤くなる。
「なっ、なんでそうなるんですう!」
「じゃあ、なんでおれたちのあとをついてくるんだ」
「それは……」
エミィはつまる。
「ほうら、やっぱりそうだ」
勝ち誇っておれは言いつのった。と、エミィは顔を手でおおった。ちっ、その手できたかよ。
「……お仕事、くびになったんですう。寮も追いだされて、行くところがありませぇん」
「なんだ、そんなことなら、おれが館長とやらを半殺しにしてでも復職させてやるぞ」
おれの言葉にエミィは鋭く反応した。涙のしずくがとぶ。
「どんな顔してお仕事をすればいいんですかあっ! あんなところを見られてえっ!」
「じゃあ、目撃したやつを片っぱしから闇討ちしてだなあ……」
「マスター」
おれの肘にシータがふれる。
「わたしはかまいませんよ」
シータはいたずらっぽく笑っている。
「え、マジ?」
おれは思わず訊いていた。
「ええ。わたし、エミィさんのこと好きですし、それに……」
シータはおれの服をひっぱって、耳を貸せ、といってきた。おれがかがむと、こしょこしょと囁く。
――三人でっていうのも、なんだかおもしろそう。
おれはビン、と腰をのばした。エミィにむかって快活に声をかける。
「よっし、エメロン、行くぞ! つれてってやる」
「エミィですってばぁ」
涙目ながら、ほんのわずか表情を明るくしてエミィが言う。そしておれの顔を見て、ええと、と言った。
おれはこたえた。
「俺の名前はジャリン。ただのジャリンさ」
――かくして、おれは二人目の仲間をゲットした。
で、終わればよかったんだが。
「まてえっ! 逃がさんぞっ!」
後方から蹄の音とともに暑っ苦しい声が浴びせかけられる。
例の騎士モドキだ。図書館でもじゃれかかってきたので本棚ごとふっとばして埋葬してやったんだが、復活したらしい。
「この恥ずべき男め! その二人のお嬢さんを解放しろ! さもなくば、このキースリング・クラウゼヴィッツが、正義の名の下に成敗してくれるッ!」
馬上、剣をかまえてわめいている。
どうやら、いらんヤツまで拾ってしまったようである。