と、何十冊目かの本を覗きこんでいたエミィがするどい声をあげた。するどいといってもエミィだからタカがしれている。『ほよよ〜』とかそんなもんだ。それにしても。

「なんだなんだ」

 おれとシータはいそいそとエミィのほうに駆けよった。

「<封印されし扉の開封と時間経過の相殺について>? おおっ、ぴったりではないか」

「でしょお? いま、方法を読んでいますからあ」

 ほこらしげにエミィは言い、また文面に視線をもどす。

 と、その顔が赤くなり、それから青くなった。たりたりと脂汗が流れはじめたが、気のせいかな。

「――どうなんだ? その魔法はつかえそうなのか?」

 おれはエミィの顔をのぞきこんだ。シータも興味津々のようだ。なにしろ、ここから出ないとはじまらないからな。

 エミィは顔をあげた。おれと目があうと、あわてて目をふせる。

「ごっ、ごめんなさいっ、だめでしたっ」

 いつもよりも早口だ。

「だめ? なにがだめなんだ」

「その、材料が必要でっ、それがなくてっ」

 たたみかけるような口調。

「なんだよ、ちょっと見せてみろ。おれたちが持っているもののなかにあるかもしれん」

 おれが本をとろうと手をのばすと、エミィはひしっ、と抱きかかえた。

「ごめんなさいっ、この方法は全然ダメでしたっ! べつのさがしますからっ!」

「むー」

 おれは目を細めた。なんかあやしいなあ。

「あっ、すごいめずらしい本が」

「えっ、どこどこっ!?」

 エミィはおれが指差した方に首を向けた。そのとき、腕の交差がゆるむ。

「ばかめっ!」

 おれはエミィの腕のなかからその本を奪いとった。

「ああっ!」

 エミィはうろたえまくった。

「いったいどんな方法だったんだ、ああ?」

 書名は<夫婦生活百選>だ。なんかやらしいなあ。

「ええと、ここだな。<封印されし扉の開封と時間経過の相殺について>……必要なものは、と」

 男、ひとり。(魔法の心得不要)

 女、ひとり。(要魔法力。推奨レベル13以上)

 とある。

 シータのレベルは15だ。問題ない。

「なんだよ、ちょうどピッタリじゃねえか」

 説明をざっとななめ読みする。

 ようするに、書かれている手順でエッチをして、女の側が呪文をとなえればよいらしい。

「かんたんじゃねえか。シータ、裸になれ」

「……このさい、しょうがありません」

 シータは恥ずかしそうに、でも、自分から服に手をかけた。

「ちょっ、ちょっと、待ってくださあい」

 エミィが顔をトマトのように熟させながら、あわてて手をふる。

「なんだよ。見たくなかったら、あっちへ行ってろ」

「そのっ、質問があるです、はい」

「なんだ」

「あの……シータさんは……その……処女ですか?」

「んなわけねーだろ、ばか」

 シータにかわって、おれが答えた。

「ヤりまくってるに決まってるだろーがよ。まんこもケツもユルユルになるくらいなっ」

「マスター、言いかた下品すぎです」

 悲しそうにシータがつぶやく。

 けっ、事実じゃねーかよ。

「やっぱし……」

 ガクっとエミィが肩を落とす。

「なんだなんだ、どーしたってんだ」

「マスター、ここの注意書きをみてください」

 シータが書物のページの一点を指差す。

『ただし、女術士は未通女(おぼこ)であること。なぜならば、閉じられた扉を女陰とみなし、それを開くのがこの術の主旨だからである』

「なるほど。なんとなくスジは通っているな」

「残念ですが、わたしではお役にたてませんね」

「だが、もうひとり女はいるんだよなー」

 エミィがビクッとする。

 おれの視線から逃げたそうに、ふるふると震えている。なるほどね。

「エメロン、ぬげ」

「やっ、いやですうっ!」

「ここで干からびて死にたいのか?」

「でもっ、でもっ、こんな形ではやですう!」

「ということは、やっぱり処女なんだな?」

「はぷっ」

 エミィは自分で自分の口をおさえた。だが、もうおそい。

「おまえなあ……おれたちがおかれている状況、わかってんのかあ?」

「それは……」

「だったらわかるだろうが、自分がしなくちゃならないことくらい」

「でも……」

 エミィはすんすん鼻を鳴らしはじめた。

「結婚するまで、きれいな身体でいたいんですう」

「きれいな身体、だと? はン、じゃあ聞くが、セックスした女は汚いのかよ? ばかげてるぜ」

 おれは吐きすてた。

「マスター」

 シータがそっとおれとエミィの間にはいった。

「わたしが話します」

 そして、エミィの肩を抱くようにして、少し離れた場所へ連れていった。

 おれはひじ枕をして床に寝そべった。まあ、果報は寝て待て、というからな。

 しばらくして、シータがエミィをともなって戻ってきた。

 エミィは頭をさげた。

「か……覚悟できました……」

 おれは、ぢろり、とエミィを見あげた。

「いまさら、遅いな」

「そ……そんな……」

「してほしかったら、ちゃんと手をついてお願いしろ」

「マスター、そんな意地悪を……」

 たまりかねてシータが口をはさみかけるのを、おれは睨みつけた。おれの視線に本気を感じたのか、シータは口をつぐむ。おれはエミィに視線をもどした。

「どうしてほしいんだ、ああ?」

 よろよろとエミィは床に膝をついた。

「あの……その……抱いて……ください」

「お願いします、が抜けているぞ。言葉の正確さもまったくたりん。どこになにを入れてほしいか、ちゃんといわんとダメだ」

 エミィの歯がカチカチと鳴っている。声がかすれる。

「……わたしの……あそこに……あなたのを……入れてくだ……さい」

 単語があいまいだが、まあいいだろう。おれは口調をかえた。

「おまえは処女か?」

「しょ、処女です」

「その歳までか。男に迫られたりしなかったのか?」

 十七歳だったら、結婚していてもそう不思議ではない。

「い、田舎だったし……。それに、わたし、美人じゃないし、本ばかり読んでたから……」

「好きな男とかいなかったのか?」

「……いました。けど……わたし、子供で、ぜんぜん相手にされなくて……それで……」

「その男には見る目がないな」

 おれの言葉に、エミィは、え、というような表情をうかべる。

「おまえはかわいいぜ、エミィ」

「そ、そそそそそそ、しょんな」

 どもりまくっている。たわいないもんだぜ。くく。

「おれの言葉を疑うのか? ひと目みたときから、かわいいって思ってたぜ」

 おれはエミィの手をとった。ぽうっ、としているらしいエミィは、抵抗もなく、おれの胸にたおれこむ。まぢかから、エミィの瞳をのぞきこむ。

「おまえはどう思った? おれを最初みて」

「ウニ頭」

「てめっ、犯すっ!」

 おれはエミィにのしかかった。マウントポジションだ。さすがに女の子をどつきはしないが、強引に上着のボタンをひきちぎる。

「いやっ! やですうっ! 乱暴はあっ」

 エミィが泣き叫ぶ。眼鏡に水滴がとびちる。内側からだ。エミィの、涙。

 おれはエミィの唇をむりやり奪った。ファーストキスかもな。記念だから、舌も入れてやろう。ぐりぐり。

「むううううっ」

 目を白黒させ、ジタバタしている。感激しているのかもしれん。

 エミィの萎縮した舌を吸い出しながら、右手で服をはぎとっていく。

 乳房が露出する。思ったより、でかいな。組み敷いているから形がわかりにくいが、つりがねおっぱいかもしれん。けっこうボリュームがある。乳輪はやや大きめで、色は濃いめのピンクだ。

 モミモミしたら、自由な腕をふるって、拳をうちつけてきた。かわいらしい抵抗だ。

 おれは膝をつかってむりやりエミィの股をわり、そして黄金の左手を侵入させた。その部分を守るのは、薄い下着一枚だけだ。

 けけ。もう止まりゃしねーんだよっ!

 などと言いつつ、次回へつづいたりするのだな、これが。

つづく


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