人気テキストサイトへの道?


 いまさらという感じですが、テキストサイトって面白いですねえ。

 「侍魂」は「先行者ネタ」が爆発したころ、知り合いから教えてもらって見に行きました。この上なく面白かったので、うづきも知り合いに教えまくったりしてました。

 テキストサイトというのは「読み物」を中心にしたサイトのことです。でも、小説は範疇に入らないんですね。日記やエッセイ、体験談など、「ノンフィクション」っぽいものを指すようです。まあ、日記や体験談といいつつも、「それが事実かどうか」は読者にはわからないわけですが。

 日記なり体験談を読ませる、というのは、考えてみると大変なことです。他人に読ませるに足りる経験って、なまなかなモノじゃないからです。

 世には日記やエッセイを載せているサイトは山ほどありますがありふれた一般人の日常のよもやまごとなんか、わざわざ時間をかけて読もうとは思いません。かといって「ノンフィクション」で、かつ「劇的」な体験なんて、そうそうはありません。

 ある意味、テキストサイトの作者というのは、自分の人生を切り売りしているわけです。それも、一般人とはかけ離れたドラマチックな人生を歩んでいる必要がある。

 たとえば、「かつてつきあっていた彼女の現在の彼氏から『殺す』と脅迫される」とか「つきあった女の子がささいなことでブチギレするやつで、つきあいをやめようとしたら女の取りまきのチンピラに拉致監禁された」とか「塾講師でありながら、教え子の中学生に告白され、楽しくデートを繰り返したまではいいが、しつこくかかってくる電話に出なかったら、涙声で呼び出しをかけられた」とか――最後のはちょっと羨ましいかも――そーゆー濃いーい、胸がかきむしられるよーな体験でなければ、読者がついてこないのです。

 「わが子の成長日記」のサイトなどもけっこうあったりするわけですが、SONYのビデオカメラのCMのよーに「どっかのしらんガキが運動会で走ってる」姿を世界に向けて発信したところで、受け取るのは作った本人とその両親(おじーちゃんおばーちゃん)のみです。そんなもの、これっぽっちも面白くないわけです。ただし、お子様が美少女の場合は別ですが。

 それにしても、人気のあるテキストサイトというのは、ものすごいアクセス数です。侍魂は一日10万アクセス以上――ページビューじゃなくて、訪問者数が10万人以上ということですから、驚異としか言いようがありません。規模が違いすぎて比較にはならないですが、うづきの創作ページでだいたい1,000アクセスくらいです。うづき的にはそれでも充分というか、お腹一杯という感じなんですが(いつもありがとーございますぅ)、その軽く100倍ですからね……凄い。

 日本では古来より自分を晒して笑いを取るのが芸でした。なにしろ神代のころから、アメノウズメノミコトがアソコ丸出しで踊り狂い、アマテラスノミコトを笑わせて世界を救ったりしていたくらいです。いまでいえば、「お笑い」全般がそうです。一方、アメリカンジョークは、自分はすましていて、他人の失敗を面白おかしく語るスタイルです。

 つまり、アメリカのコメディアンが笑わせるのであれば、日本のお笑い芸人は笑われるのです。

 そして、これは、もしかしたら外国人にはなかなか理解されにくいかもしれませんが、日本では「笑われる者」が尊敬の対象にさえなるのです。北野武がビートたけしとしてオムツ姿になって笑いを取ったとしても、彼をバカにする者はいません。間寛平が「かいーの」をやって爆笑を取ったとして、それも「芸」として認知されるわけです。

 テキストサイトの芸風のひとつは、まさにそれです。悲惨で強烈な体験を吐露する。その体験が珍しくて痛ければ痛いほど、ウケが取れる。

 しかし、一方でそれが「芸」として認知されなければ、北野武や間寛平とはちがって、市井の変なおじさんと同一視されるわけです。「当方4*歳、優秀な遺伝子を残すために結婚相手を探しています」みたいな、いわゆる電波系サイトですね。

 つまり、異常な体験というだけではだめで、それを語る技術が伴っていなければならないわけです。

 そのテクニックのひとつが「フォントいじり」だったり「顔文字」だったりするのでしょうが、そんな文字面の技巧よりも大事なのは、文体と、そこからにじみ出る作者の人柄や知性なのです。リアル電波はただ「笑われる」だけですが、電波を操れるテクニシャンは「笑われて」なおかつ「リスペクトされる」のです。余談ですが、リスペクトって、「尊敬」というよりも、「認める」という語感だと思います。「尊敬」って言葉では重すぎるよーな場合でも、「リスペクト」って使えますからね。

 それにしても、日々おもしろいネタを身体を張って提供してくださるテキストサイトの作者さんたちには頭がさがりますねぇしみじみ。

 そーいやここ(ANNEX)も広義のテキストサイトの範疇に入るのかもしれませんが、人気テキストサイトへの道は遠いとゆーか、そういう修羅道に踏み込む度胸はまったくありませんので、ヌルヌルでかまわないです。

 さて。

 こうしたテキストサイトがアクセス数を伸ばす、ひとつのきっかけというのは、やっぱりネット上の口コミであるようです。

 小説などの創作サイトの場合はサーチエンジンに登録するという手があるのですが、新鮮なネタが命の日記系テキストサイトの場合は、サーチエンジンに登録してどーのこーのといったタイムラグが命取りになります。

 ですので、この場合は、毎日更新されるニュース系サイトが、大きな役割を果たしているようです。たとえば、ちゆ12歳といった超有名どころに紹介されると、それまで一日数百だったアクセスが、突然、数千のオーダーにはねあがったりするわけです。

 この、ニュース系サイトというのが、実は現在のインターネットの世界においてキャスティングボードを握っているよーな気もしなくはありません。

 以前はYahooがポータルサイトとしては圧倒的だったりしたわけです。まあ、もちろん今でもインターネット視聴率ではトップだと思いますが。しかし、今はわりとポータルも多様化しつつあるように思います。つまり、ネットの利用者の幅が広がり、あるいは奥が深くなり、自分が欲しているジャンルに強いニュースサイトをポータルにする、という使い方が増えてきたのではないか、とも思います。

 その傾向が、現在のテキストサイト隆盛の、ひとつの土壌を作っているような気がします。

 以前は、おもしろいサイトがあったとしても、じわじわと広がっていくのが普通だったのですが、今では人気ニュースサイトにリンクが貼られるだけで、初速が物凄いですから。

 ある意味、ニュース系サイトを見れば、いまの日本がわかる、とゆーか、少なくとも「ちゆ12歳」とか「TECHSIDE」をチェックすれば、「アニメ」「コミック」「ゲーム」「キワモノ」系のエッジの部分が見えてくる、そんな感じがします。

※この文章は「日記」を更新しようとして書きだしたんですが、長くなりすぎてしまったので、コラムにしました。日記が全然更新できないよ……。


参考サイト(有名なところばっかりなので、みんな知っていると思いますけど……)
 侍魂:超大手テキストサイト。Readme!でトップ爆走中。テキストサイトというジャンルを広く認知させた。
 ちゆ12歳:超大手ニュース&テキストサイト。同スタイルのサイトが激増している旬なサイト。
 TECHSIDE:これまた超大手ニュースサイト。更新は一日数回になることも。情報の幅も広い。
 無情な日常:今、凄いことになってるテキストサイト。ネタの濃さでは侍魂を超えた!?
 堕落誌〜塾愛〜:かわいい女子中学生に慕われてウラヤマシイ。
 ADSL開通までの道のり:ヤフーBBとの熾烈な闘いの記録。堂々完結。内容も面白いが顔文字も。