なぜなに?! あねっくす!!


 ちゃらら〜。ちゃちゃ〜ん!

 ヘタレ小説講座のネタに詰まったので、新企画です。

 このコーナーでは、なんでも知ってるフリをするうづきはじめが、みなさんの質問にバンバコ、ズルズバ答えてしまいます!

 第一回目のおたより(最後かも)は、最近「とんがり帽子のメモル」にハマっているという館長さん(仮名)からです!

 アニメ好きなのですが、舞台裏や制作現場にまで造詣を深めるほど勉強家ではないので、その辺の事情ってものがさっぱりです。そこで、いい歳をして徹夜でアニメを見ているというオタ……じゃなくて事情通でいらっしゃるうづき先生に教えを請おうかと思ってお便りしました。

 ふむ。どうして、うづきが早朝放送されるアニメを見るために徹夜をしようとしてそのままコタツで爆睡してしまい見逃した上に、このテキストを書いていて再放送も見逃してしまったことを知っているのかな? くそぅ……くやしい……。

 まあ、よいでしょう。うづきも伊達にムダな知識を貯えてはいません。どんな質問でもドンと来なさいっ!


質問1 作画監督とか演出、美術って何する人?

 ふふ、初歩的な質問ですな。

 まずは、作画監督から説明しましょう。

 アニメってゆーのは、絵をたくさん描いて、それをパラパラマンガのよーにコマ撮りして、動いているよーに見せるものですから、当然たくさん、たくさん絵を描かなきゃいけません。テレビアニメ一話分でも数千枚という数になります。(モノによってピンキリですが)

 そのため、たくさんの絵描きさん――アニメーターが関わるわけですが、人間のやることですから、どうしても各人のくせが出てしまいます。同じキャラクターでも、描く人によって絵柄が微妙に変わってきてしまうのですね。

 それだと困るので、絵の調子を統一する作業は一人の人間に集約させる必要があります。その仕事をするのが「作画監督」です。

 具体的には、動きの元になる「原画」を複数の「原画マン」が描き、「作画監督」がその原画に修正を入れます。メカものでは、メカ専門の作画監督がいるケースが多いようです。

 一般的には、キャラクターデザインを担当したアニメーターが作画監督を兼ねることが多く、その人の回が作画的にはいちばん良質であると言えます。

 つぎ。

 「演出」というのは、文字どおりアニメの演出の仕事です。

 とはいえ、実写映画における「演出」がほとんど「監督」と同義になるのと違い、アニメの場合の「演出」は、エフェクト担当の意味合いが強くなります。

 実写映画の演出家は、役者の芝居にリアルタイムに注文をつけることができますが、アニメはすべて「絵」ですので、キャラクターの芝居の演出は「絵コンテ」→「原画」の段階でついてしまいます。アニメでは演出家が作画を担当することは稀なので、その仕事はむしろ画面効果(光をどう使うか、音をどう使うか)に重点が置かれることになります。

 むろん、「演出」には広い意味があるので、実写映画の「演出」に近い仕事をするケースもあると思います。こういう役割の名称は厳密な定義ではなく、それぞれの作品の「作り方」によって、内容も変わってしまうので、ここで述べたのはあくまでも一例にすぎません。

 ほいで、美術についてですね。

 セルアニメーションとは、文字どおり、透明なセルロイドにキャラクターの絵を描いてあるものですが、なんでセルにキャラを描くかというと、背景画を下に敷くためなんですね。背景というのは基本的に一枚絵で、その上に透明セルをおいて、キャラクターの絵を動かすわけです。

 「美術」は、主としてその「背景」の絵を描く作業を指します。

 背景画はその作品の世界観を決定する大事なものです。

 あまりスポットライトが当たることのない職種ですが、優れたアニメ作品はほとんど例外なく、優れた美術スタッフの仕事によって支えられています。

 スタッフの話が出ましたので、ついでに、よくクレジットされる役職名について説明しましょう。

 監督、ディレクター →文字どおりです。基本的には、全工程をチェックしてダメ出しをするのが仕事です。どれだけスタッフに無理をさせられるかが監督の力量だと言えます。上がってきたものをなんでも通していたのでは、ろくな作品にはなりません。

 プロデューサー →お金勘定が仕事です。予算を管理して、それをどう振り分けるか。つまるところ、アニメの制作費というのは人件費のことなので、どこの会社(スタッフ)に、どれくらいの値段でやってもらうか、そういった仕切りをします。基本的には汚れ仕事です。もっとも、「エグゼクティブ・プロデューサー」は違います。「エグゼクティブ」がつくと、基本的には何もしません。偉い人同士で飲みに行ったり、完成披露パーティで乾杯の音頭を取るのが主たる仕事です。

 音響監督 → 音がらみのディレクションをします。BGMや効果音の手配、アフレコの仕切りなどをします。

 制作進行 → スケジュール管理の仕事です。アニメは色々な会社に下請けに出していることがほとんどなので、それらの複数の会社の進行を把握して、必要があれば自らバイク便のように下請け各社を駆け回ってブツを揃えます。状況のヤバさ加減は、制作進行の顔色を見ればだいたいわかります。だいたい土気色をしているはずです。

質問2 同じ作品なのに、どうして脚本や絵の人が毎回違うの?

 うーん。確かに、回ごとにキャラがコロコロ変わったりする作品は今でも少なくないですね。

 テレビシリーズは半年間(2クール)26回や、1年間(4クール)52回といった、大量の本数を作らなくてはなりません。当たり前のことですが、一本一週間で作れるようなものではありませんので、どうしても複数ラインを同時に走らせる必要があります。なので、脚本や作画スタッフも複数チーム存在しています。

 脚本については、脚本家たちが集まってミーティングをして、全体の話の流れを決めた上で、それぞれ担当する回を割り振ります。この擦り合わせをちゃんとしていないと、お話に矛盾が出てしまうので要注意です。

 絵については、表情や体つきなどの詳細な設定資料を作って、それに沿って作業をしているのですが、人間のやることですからどうしても差異は出てきてしまいます。

 スケジュールや予算に余裕があれば、少数の固定スタッフでシリーズを作ることも可能なのかもしれませんが、そういう贅沢な作りができるのは、ごくごく限られたものだけです。OVAのシリーズで、良質なものにはそーゆーのがあったりしますね。

 テレビアニメの制作費は手塚先生の時代から「すげー安い」らしいので、どうしても流れ作業・大量生産になりがちです。その中でも、やっぱり良質な作品っていうのはあって、それはひとえにスタッフの超人的な努力によってなしとげられているということを憶えておくべきです。

質問3 絵コンテって何に使うの?

 いい質問です。絵コンテの占める重要性というのが、実写とアニメの違いを端的に示しているからです。

 「演出」のところでちょっと触れましたが、アニメは実写と違って、撮影現場で役者に演技指導をすることはできません。アニメーターが絵を描くこと=芝居をつけること、です。そのアニメーターへの指示書が絵コンテです。

 なので、実写でいうところの「演出」は、アニメではむしろ「絵コンテ」の段階で行われていると言ってよいでしょう。

 絵コンテには、アニメーターへの動きの指示ばかりでなく、演出(エフェクト・音響)の指示、撮影の指示(カメラの動き)まで含まれています。

 アニメフィルムの設計図そのものであると言ってもよいかもしれません。

 かの有名な国民的アニメーション作家・宮崎駿監督の絵コンテなどは、それ自体が出版物として刊行されるほど精緻に作られています。

質問4 セル画と動画って何が違うの?

 アニメの絵の制作の流れは、おおまかには、原画→動画→セル画という感じです。

 原画というのは、動きのポイントになる絵です。人が走っているシーンだとすると、走る動きの起点と終点です。その間を埋めるのが動画です。動画は、原画をトレス(なぞること)しつつ、ちょっとだけ原画からずらして描くわけです。一から描くのではなく、原画をなぞる作業なので、比較的経験の浅いアニメーターでも携わることができます。

 動画で経験を積んで原画マンになり、さらに作画監督や、キャラクターデザイナーになっていく、というのが、アニメーターの出世パターンであるようです。

 そして、セル画というのは、原画→動画という作業で作られた絵をセルに転写したものを言います。このセルに着色したものをコマ撮りして、アニメーションフィルムが作られるわけです。

 大昔には、このセルにトレスするのも手作業だったそうですが、トレスマシン(コピー機のようなものか)で自動化されるようになり、さらに、最近ではスキャナで取りこんでデジタル化するのが一般的になってきたようです。どうやら、アニメ業界はペーパーレスならぬセルレス時代に突入したようです。

 余談ですが、時代によってアニメの描線が変化しているのは、たぶん、このトレスの方法の変遷によります。

 昭和40年代とかのレトロアニメだと、妙に描線が力強かったりしますが、これはハンドトレス(人の手によるもの)だからです。

 それから時代がさがって、ロボットアニメ全盛の頃になると、描線が鉛筆っぽい擦れた感じになりますが、これはトレスマシンのためだと思います。

 んで、最近のアニメだと、また、ちょっと違った感じの描線になっていると思いますが、これはおそらくトレスマシンの精度が上がったorデジタル処理されているためだと思います。

 このへん、憶測ですけど。

質問5 セル画はどうして保管されずに売り払われてしまうの?

 テレビアニメ一本当たり数千枚のセルが使われるので、とてもではありませんが保管などをするスペースはありません。基本的にセルっていうのは「捨てるもの」だったのです。

 しかし、「宇宙戦艦ヤマト」がブームになったころあたりから(大昔)、マニアの間でセル画に価値が出て、販売されるようになってきたわけです。ゴミが売れるようになったのですから、世の中は不思議なものです。

 最近ではデジタル処理が一般的になってセルレス化が進んでいるために、ショップで売られている最近のセル画は「販売用にわざわざセルに起こしたもの」らしいです。

あと、なんであんなものが1枚何千円もしたりするの?

 価値観は人それぞれなんで、なんとも言えません。

 加護あいのウンコにだって、きっと高値をつける人はいるのです。んなモン売ってるところがあるかどーかは知りませんが。

質問6 最近のアニメって、どうして昔のと比べて色がきつい感じがするの?

 うーん、これはよくわかりませんね。

 でも、もしかしたらデジタル処理のためかもしれません。

 昔のアニメは、人の手で色を塗ったセルを背景画と組みあわせて、撮影台に乗せて、コマ撮りしていたわけです。厳密には違いますが、一枚一枚写真を撮っているのに近いわけです。つまり、彩色・撮影の各工程で、「風合い」というものが加わる可能性がある。

 一方、デジタル彩色というのは、動画をコンピュータに取りこんで電子的に色を乗せ、それをそのまま出力して編集までしてしまうので、「データとしての色情報」なわけです。

 そのあたりが影響しているのかもしれませんね……。

質問7 なぜ、今のアニメは半年とか10話ぐらいで終わるのが多くて、昔みたいに1年間やらないの?

 大人のじじょ〜というやつですかね。

 ちょっとややこしい説明になるかもしれないですが、カンベンしてください。

 テレビ番組の編成は、おおむね3カ月(1クール)を一単位にしています。テレビ局っていうのは「放送枠」を売る商売ですから、1クール(13週)がセット販売できる最小単位ということになります(例外はいくらでもあります。一般論ね)。

 つまり、以前に比べて、4クール(1年間)まとめて放送枠が売れるケースが少なくなっている、ということですね。バラ売りしないと枠が埋まらないわけです。

 まず、考えられることは、アニメ番組にスポンサーがつきにくくなっていることがあると思います。不況ですし、子供の数が減っていますから……。

 昔のアニメ番組は、たいてい大きなおもちゃメーカーがメインスポンサーになっていて、そのメーカーの販売計画と放送タイミングがリンクしていることが多かったわけです。

 おもちゃの商品化というのは、設計に始まり、金型を起こしたりと、けっこう時間がかかるものですから、1クールしか放送しないのでは、商品が店頭に並ぶころには放送が終わっている、なんてことになってしまいます。そのため、3〜4クールといった長期間の放送が多かったのだと思います。それに、おもちゃメーカーにとっては、クリスマスというかき入れ時期に毎年新製品を出すためには、一年単位で番組を持たなくてはならない、なんてこともあったかもしれません。

 しかし、現在のアニメはおもちゃを売るためというより、音楽CDやビデオ、DVD、キャラクターグッズなどの商品と同時展開する、いわゆるメディアミックスの一環として、プロモ的にテレビ放送する、という方法論が主流です。つまり、放送されている時期に商売するのではなく、「放送した後に関連商品で回収する」商売にシフトしているわけです。

 同時に、スポンサーも、一社のみではなく、レコード会社、出版社、ビデオ販売会社、ステーショナリーなどのグッズメーカーなどが共同で当たることが多くなっています。

 当然、リスクは小さくしたいというのが企業論理ですから、まずは1クール、という感じになるのだと思います。それに、一社提供なら、極端にいえばその会社の社長がOKすれば放送期間の延長ができるわけですが、複数の会社が共同でスポンサードしている場合は、たくさんの人が同意しなくてはならないわけですから、どうしても短い期間で放送終了するケースが多くなると思います。

 やっぱり、傾向として、大手のメーカーがスポンサーになっている番組は枠買い(その時間帯を押さえている)されているため、長期間続くものが多いですね。最近でいえば、「おジャ魔女どれみ」シリーズが4年目に入ることが決まったようです。

質問8 版権って? アニメの著作権は、誰(どこ?)が持っているの?


 なんか、おちゃらけが入る余地がなくって、一体どれだけの人がついてきているのかわからないんですが……。

 版権とか著作権っていうのは、専門的にはいろいろあると思うんですが、一般社会人の常識レベルで解説します。てゆーか、うづきにはそれで精一杯ですわ。

 まず、著作権についてですが、これは、原則としては原作者(個人あるいは会社)が持ちます。ただし、アニメにはアニメとしての著作権が発生するので、その権利は製作会社が持つはずです。「製作」というのは、下請けではなく、制作費を出している会社のことです。いわゆるアニメ会社でも大きなところ(発注元)。テレビアニメの場合は、テレビ局が噛んでいることも多いでしょう。広告代理店が主体になるケースも多いはずです。

 たとえば、「ガンダム」でいえば、製作会社(原作)はサンライズで、代理店は創通エージェンシーです。ファーストガンダムの製作テレビ局はテレビ朝日でしょうか? 名古屋テレビかも? ターンAはフジテレビだったと思います。

 「ガンダム」の原作者・矢萩なにがしはサンライズ社内の企画チームのことで個人ではありません。つまり、富野監督は、製作総指揮だけれども、著作者ではないわけです。(ただし、彼が個人で書いたガンダムの小説の著作権は彼のものです)

 アニメの場合、会社・個人がいろいろにからむので、小説やマンガのように個人レベルの著作物よりは著作権の管理は複雑になります。一般的には(C)表記がついているところに著作権があることになるのですが、この表記も契約書で決めるので、厳密には個々の契約書を見ないとわかりません

 いろいろなケースがありえますが、一般認識としては、作品の原作者および作品を主体的に作った(費用面も含めて)会社が持つ、という感じではないでしょうか。

 次に、版権というのは、要するに商品化権のことを言うのだと思います。これは、著作権を持つところから、その作品の絵柄や名称を使った商品を出す権利を「許諾」されているわけですね。

 音楽CDであれば、レコード会社が著作者に対してライセンス料を払って版権を得ている、という形になります。

 番組スポンサーになることを条件に、ある分野の商品についての版権を得るケースも多いと思います。

 

 ――館長さん、いかがですか? 疑問は解けましたでしょうか?

 もしも、他にわからないことがあれば、なんでも聞いてください。ホーキング理論でも、量子論についてでも、ナノテクノロジーについてでも、肉じゃがの起源についてでも、マリー・アントワネットのおっぱいの形についてでも、アニメ版「らんま1/2」の何話と何話であかねが脱いでいるかでも、なんでもお答えしますよ――というのはちょっとうそ。

 知ってることは大威張りで答えますし、よく知らないことはなんとなくそれっぽく答えます。まったく知らないことについては黙殺です。

 質問のあて先はこちらaprilfool@mail.goo.ne.jp

 ご意見、ご感想も歓迎いたします。まあ、テケトーな回答なんで、「それは違う!」というツッコミもあるかと思いますが、そのへんはお手柔らかに。

 てゆうか、お願いですので、ネタください。

 そいでは、(ネタがあれば)またお会いしましょう〜!