記念すべき、うづきDreamcast第一弾ソフト。「ペンギンが氷上でレースをくりひろげる」ゲーム。新ハードの機能をとりあえず使ってみました的なグラフィックのヒキのよさと、レースという、わかりやすいゲーム性を持っている。 四画面分割の四人同時プレイが可能。また、当時は未発売だった「ぷるぷるぱっく」(震動ユニット)にもひそかに対応。あと、VGA−BOX(パソコンモニターに映像を出せる)も使えた。実はDreamcastのスペックをかなりのところまで使い込んでいるソフトだ。特に四人対戦の画面でもさほど処理落ちがないのは技術力の高さを感じさせる。 ある程度のセガウォッチャーなら知っているかもしれないが、「ペンペン」はセガサターン時代の名作ソフト「パンツァードラグーン」シリーズを手がけたチームの独立後第一作めだ。 「パンツァードラグーン」といえば、セガサターンを代表する大傑作シューティングだ。いまでもじゅうぶんに3Dシューティング歴代ナンバーワンの資格を有している。グラフィックもサウンドも、これに匹敵する作品はそうはない。うそだと思うならば、中古ゲーム屋さんでセガサターンと「パンツァードラグーン」(一作めを強くすすめる)とできたら連射パッドを買って確かめてみるといい。 その名作をものしたスタッフがセガを大量離脱してゼネラルエンターテイメントに移って「ペンペン」を作ったのだ。しかも、Dreamcastの立ち上げタイトルのひとつとして、だ。 セガウォッチャーならば感慨におそわれずにはいられないはずだ。 むろん、プレイしてみて、違和感がなかったといえばウソになる。かわいい、とはおせじにもいえないキャラクター。シンプルだが、率直に言えばひねりのないゲーム性。むろん、タイムアタックなど、やりこむほどにおもしろくなる要素はあるのだが、このゲームには「華」がない。 おそらく、ハードの発売に間に合わせるために、ずいぶん要素をカットしたのだろう。それでも、やっぱり「足りない」と言わざるをえない。 だれのためのゲームなのか。ハードを買ったけど「セガラリー2」が遅れたから、「ペンペン」でも買うか、と思った人たちにしか、このゲームは届かなかったのではないか。 ペンギンのレースだから買うのだ、という人がどれだけいたのか。 そう。 ペンギンでレースをすることの必然性が薄い。その証拠は、ペンギンといいつつも、いろいろな動物のイメージ(犬やサメやカバなどなど)を融合させているところにも見えている。競馬は、馬だけで勝負している。そのなかに血統や馬場の状況や距離などがからむからこそおもしろい。レースとしてなりたつ。 車のレースでもそうだ。排気量やシャーシのサイズをあわせてある。しかし、エンジンの特徴やタイヤやサスペンション、ボディの空力、ドライバーの能力など、さまざまな要素レースを多様なものにしている。だからこそおもしろい。 純粋なペンギン同士で争わせてもおもしろみがない、というなら、それはレースとしては最初から成り立たなかったのである。 レースとして成立しないレースをゲームにしても、受けるはずがない。 「ペンペン」のシステムはそのままでも、自動車のレースにしていたほうが数倍売れただろう。「セガラリー2」とバッティングしても、なお。 これはゲームの企画をする人は心得ておいてよいことである。 現実におこなってもおもしろくないことは、ゲームにしてもおもしろくないのだ。 |