旅行から帰ってきても、まだ冬は続いていた。
まったくもって今年の冬は寒い。地球温暖化はもしかして看板倒れか? いやたぶん、バランスが崩れているからこんなに寒いのかもしれない。
宇多方5姉妹はあいかわらずで、一子ちゃんは天然っぷりに拍車がかかり(日常生活危険レベル)、気恵くんの技のキレとパワーも大幅アップ(受験はどうした)、苑子は匿名で始めたエロ小説ブログも好評(むろんムリヤリ書かせている)、美耶子は無謀にも芸能界デビュー準備をはじめ(主演決定ww)、珠子が歩くと近所の年寄りが手を合わせておがむ始末(賽銭が投げ込まれる日も近い)――
ようするに、平和ってやつだ。
商店街はにぎわっていた。もうすぐ暦の上では春になったってのに、毎日寒い。こんな日の晩ごはんはうどんすきがいいよね、ということで、一子ちゃんと買い物にやってきていたのだ。
買い物を一通りすませると、一子ちゃんの手元には福引券がたまっていた。
まだやってたのか、このキャンペーン!
まあ、まさかもう当たらんよなあ。
カラーンカランカラーン!
「大当たりい! 特等、豪華温泉旅行、6人様ご招待〜!」
「わあ、遊一さん、すごい! 今度は全員でいけますよぉ」
一子ちゃんがうれしそうに(やまほど外れのティッシュを抱えながら)おれを見上げる。
おれは即答した。
「辞退します」